離婚でマンションを売却、財産分与の詳細、住宅ローンや共有名義の注意点

カテゴリ:マンション売却
投稿日:2023.07.22

離婚でマンションを売却、財産分与の詳細、住宅ローンや共有名義の注意点

厚生労働省の令和2年(2020年)人口動態統計(確定数)の概況によると、婚姻件数は52万5,507件であるのに対し、離婚件数は1万3,253件とのことです。

約3組に1組の夫婦が離婚している統計となります。

離婚自体は日常生活では一般的なことといえそうですが、周りには知られたくない事情があるケースも多いため、離婚の際に

「夫婦で暮らしていたマンション売却はどのように進めればよいのか?」

「どのように財産分与をすればよいのか?」

「住宅ローンや共有名義はどうすべき?」

といった疑問を誰にも聞けず、お困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は、離婚時に居住していたマンションの売却方法や財産分与などについて見ていきましょう!

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この記事でわかること
  1. 離婚をしても、住宅ローンの支払い義務は変わらない
  2. 財産分与をする場合は、支払い負担割合に関わらず半分ずつとなる
  3. 住宅ローンの名義人でない配偶者が居住すると契約違反とみなされる
  4. 住宅ローンが残っている場合には借り換えが必要になる場合も
  5. おすすめはマンション買取業者に依頼すること

目次

離婚でマンション売却、共有名義持分割合と財産分与

昨今、共働きのご夫婦が増え、ペアローンなどの利用で夫婦共有名義のマンションが増えています。

まずは、離婚でマンションを売却する前に知っておきたい「共有名義のまま離婚すると返済中の住宅ローンはどうなるのか?」「共有名義のマンションの財産分与はどうなるのか?」などの疑問にお答えしていきます。

離婚時にマンションは共有名義、ペアローン等の住宅ローン返済中

夫婦それぞれが主たる債務者として、それぞれが相手の連帯保証人として住宅ローンを組むことがあります。ペアローンと言われたりしています。この場合、マンションの名義は、夫婦で持分割合を決めて共有(共同)名義となっています(ペアローン型)。

他方、夫婦で連帯債務者となる場合もあります。夫婦のうちの一人が主債務者となって住宅ローンを組み、もう一方が連帯債務者として同じくその住宅ローンの借入れをする方法のことです。同一の住宅ローンを主債務者、連帯債務者として住宅ローンを組むため連帯債務者も主債務者と同じ返済義務を負うことになります。互いに連帯債務者としての住宅ローンの負担割合を決めマンションの持分割合を決めて共有(共同)名義となります(連帯債務型)。

ペアローン型の住宅ローンは、夫婦それぞれが住宅ローンを借り入れるため二本の住宅ローンを組むことになります。
他方、連帯債務型の住宅ローンは、夫婦二人で住宅ローンを借り入れるため夫婦で一本の住宅ローンを組むことになります。

いずれにしても、住宅ローンの支払い義務は夫婦両者にあることになります。

共同名義(共有名義)のまま離婚

離婚をするにあたって、住宅ローンの契約形態がペアローン型・連帯債務型の住宅ローンだった場合、財産分与はどのように対応していけばよいのでしょうか。

ペアローン型・連帯債務型の住宅ローンの場合、夫婦のどちらも住宅ローン全額について支払い義務を負うことになります。

この点、離婚をしたという事実のみで、住宅ローンの債務者たる地位や連帯保証人たる地位からの解放はされません。離婚をして片方の配偶者が住居から出ていくことになったとしても、解放されることはありません。

住宅ローンは、金融機関と契約をした夫婦との関係ですので、離婚という事情を金融機関に対して主張することは意味を成しません。

離婚の財産分与の際に、住居は夫が取得する代わりに住宅ローンも夫が全額を負担して支払い続ける旨の合意をすることがあります。
しかし、これはあくまでも夫婦当事者間の合意に過ぎません。かかる合意に金融機関が拘束されるいわれはないということになります。金融機関に対しては何ら法的拘束力はありません。

そのため、元配偶者が住宅ローンの支払いを滞った場合には、離婚をしてすでに自宅に住んでいないにもかかわらず、金融機関から連帯債務者や連帯保証人たる元配偶者に対して、支払いの催促がなされます。

金融機関との住宅ローンの契約関係から解放されない限り、離婚をしたとしても住宅ローンの完済まで、支払い義務を負うことになります。

夫婦共有マンションの共有持分割合と財産分与

マンションを購入する際にペアローンや連帯債務を組んだ場合、原則ローンの負担割合により共同名義(共有名義)の持分割合が決められます。
マンション購入費用の負担割合が、夫:妻=8:2であるなら、マンションの持分割合は夫:妻=8:2で所有することになります。
財産分与の際、持分割合がそれぞれの精算すべき財産であると思われる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、通常は共有するマンションを売却した際には、共有持分割合でマンションの売却代金を案分することとなります。

しかし、離婚の際による財産分与では、マンションの持分割合とは無関係に、基本的には半分ずつ財産分与手続きをします。

財産分与手続きは、夫婦が協働して形成した財産の精算手続きのため、マンションの持分割合が夫:妻=8:2でも協働してマンションたる財産を形成したものとして夫:妻=1:1で精算することになります。

共有名義のマンションを売却して財産分与

住宅ローンが残っている場合のマンション等の自宅の財産分与の選択肢は、マンション等の自宅を売却するか、または、自宅にどちらかが住み続けるかの選択となります。

自宅を売却する場合は、自宅の売却代金と住宅ローン残額を比較することになります。どちらが上回っているかによって対応が異なります。自宅の売却代金が住宅ローンの残額を上回っている場合(アンダーローン)は、その差額を、原則2分の1ずつ分割すればよいことになります。
他方、自宅を売却しても住宅ローンの完済ができない場合(オーバーローン)は、別途、検討が必要となります。

住宅ローンの完済ができない場合(オーバーローン)の対処、解決方法などについては次項で詳しく解説します。

共有名義のマンションに住み続ける

さらに慎重な検討が必要なのは、配偶者の片方がそのまま住み続ける場合です。夫婦ともに債務者たる地位であったり連帯保証人たる地位のままであるため、何らかの対策が必要といえます。

  • 自宅の所有名義と住宅ローンの名義はどうするか?
  • 誰が自宅に住み続けるのか?
  • 誰が住宅ローンを支払っていくのか?
  • 新たに借り入れを受ける与信はあるのか?

ここからは、住宅ローンを抱えたマンションなどの住居の財産分与の方法について、ケースごとに見ていきましょう!

離婚でマンションを売却、現金化して財産分与

離婚届 イメージ

離婚が原因でマンションを売却して財産分与する場合、避けて通れないのは住宅ローンの完済です。住宅ローンとマンションの売却で注意すべきポイントを解説していきます。

離婚時に住宅ローンを返済中のマンションを売却するメリット

住宅ローンを抱えたマンションなどの自宅の財産分与の手段としては、自宅の売却が非常に簡便といえます。

確かに、離婚する際に片方の配偶者が、そのまま住み続けたいと願うことはあるかもしれません。
しかし、居住を続ける人の収入や精神上の状態が原因で住宅ローンの借り換えが出来ないような場合には、自宅の売却を検討する必要があります。

自宅の売却には、大きなメリットもあります。
離婚の際の自宅の売却により住宅ローンの完済ができて、元配偶者との離婚後の関係も解消できます。
また、売却代金の残金を財産分与として、現金を取得できます。
さらに、夫婦ともども住宅ローン関係から解放されているため、再婚後に住宅ローンを組むこともできます。元配偶者との住宅ローンからの解放がない場合は、新たな住宅ローンを組むことは原則できないといえます。

この点、住宅ローンが残っている不動産を売却するときは、「不動産の売却価格」と「住宅ローンの残債」で売却方法も変わってくるので注意しましょう。

住宅ローンが残っている不動産を売却するときは、「不動産の売却価格」と「住宅ローンの残債」の関係で売却方法も変わってきます。ケースごとに詳しく解説していきます。

売却するマンションの売却価格(市場価値)と住宅ローンの残債

財産分与に伴う自宅の売却のポイントは、「不動産の売却額」と「住宅ローンの残債」、さらに「スピード」です。
そこでまず、住宅ローンの残債以上の市場価値が自宅にあるのかを確認することが必要となります。
そのためには、マンション等の不動産の売却を前提として、不動産会社へ不動産査定依頼をします。

悩ましいのが、どこに査定依頼をすればよいのかということです。
ネット上には一括査定サイトがありますので簡単に机上査定をしてもらうことはできますが、離婚に伴う財産分与を前提とした不動産売却であることを考えると、信用のできる不動産会社にすることをお勧め致します。
不動産査定は、データに基づいた算出であるため、査定価格については、大きな差異は生じません。マンションの査定であれば、マンション専門の不動産会社に査定依頼してみるのもよいかもしれません。

また、離婚による不動産の売却は、タイミングが重要といえます。

原則として、売却は離婚後に行うことが多いといえます。離婚前に売却を行って財産を分与してしまうと、贈与となり、財産の分配を受ける配偶者に贈与税が課されるおそれがあります。離婚後であれば、財産分与となるため、原則、贈与税は発生しません。
もっとも、共有名義の不動産の売却は、共有名義全員の売却意思がないと成立しないため、売却は離婚後のなるべく早い段階で行うことが良いといえます。

「買取」という売却方法を使えば、スピーディーに売却することができます。
マンションなどの自宅を売却する場合の売却方法は、仲介と買取の2種類です。
仲介は、一般的には、不動産会社に仲介してもらい、家を売却します。
メリットとしては、市場価格で売れることです。
ただし、買い手が見つかり、売却手続きが完了するまでは、物件の立地、価格帯にもよりますが、6ヶ月程度、それ以上を要することも予想されます。

一方、買取は、不動産会社にマンションなど自宅を買い取ってもらう方法です。
早ければ、1週間程度で家を現金化できるため、婚姻関係を早く解消したい人には買取がおすすめです。
「買取」は仲介に比べると売却価格が8割~8割5分程度になるのがデメリットといえますが、売却を周りの人に知られることなく確実に短期間で不動産売却できるというメリットがあるといえます。

関連記事:マンション買取価格の相場、買取価格は市場価格の何%?

住宅ローンの残債がマンション価格を下回るアンダーローン

住宅ローンの残債がマンションの市場価格(時価)よりも低い場合は、財産分与は非常に容易です。

例えば、住宅ローンの残債が2,000万円もありますが、マンションが3,200万円で売却できる場合は、住宅ローンを売却代金で完済できます。売却手数料等諸費用を控除した金額を夫婦で均等に分与することができます。

住宅ローンを組む際、主たる債務者は夫ではあるけれども、妻の収入を合算して住宅ローンを組むことがあります。

この場合、収入合算した妻は連帯保証人になっているため、保証人から解放されるためにも、売却することをお勧め致します。

前述してきたように住宅ローンがペアローン型・連帯債務型でも同じことが言えます。

離婚する時オーバーローン状態のマンションの売却

住宅ローンの残債が、マンションの売却価格を上回る場合もあります。オーバーローンの状態です。

この場合はマンションを売却しても住宅ローンが残るため、不足額を填補することができなければ、原則、売却できません。

担保を設定している銀行が、無担保状態を許容することは原則ないからです。

この場合は、不足額を夫婦で貯金から補填するか、住み替え(買い替え)ローンを組んで補填することになります。

住み替え(買い替え)ローンは、マンションの住宅ローンの残債の補填部分と新居購入費を合わせて借入することです。

このような借り入れは金利が高く、与信の審査も厳しくなります。

離婚でオーバーローンのマンションを任意売却

また、不足額を填補できないが、どうしても自宅を売却せざる得ない場合もあります。

夫婦で共同生活をしていた際は、経済的にローンの支払いが何とか可能であったとしても、離婚を契機にそれぞれに生活をするようになるとローンの支払いが重く圧し掛かってくることがあります。
このような場合は、金融機関の承諾を得て、任意売却手続きを検討することになります。

任意売却手続きは、売却益をすべて住宅ローンの返済に充当して、支払いきれなかった残債については、生活に応じて売却後に分割返済していくことになります。

確かに、任意売却は、市場価格で不動産を売却でき、近所の方にも、離婚や経済的に厳しい状態であることを知られずに売却でき、ローンの負担も軽減できるというメリットはあります。
他方、信用情報に傷がつくデメリットがあります。再婚後、しばらくは新たに住宅ローンを組むことや新たなクレジットカードの作成はできません。

リースバックという方法での売却

自宅を売却すると住宅ローンの契約関係からは解放されますが、他方、住み慣れた環境を手放すことになります。
離婚による子供の学校の転校や生活環境の変化を極力避けたいような場合には、リースバックという方法があります。
リースバック契約は、自宅のリースバックを取り扱う専門事業者に売却をします。
そのため、マンション等自宅の所有者は事業者になりますが、そのまま住み続けたい配偶者は、事業者に家賃(リース料)を支払うことで、自宅に住み続けることができるという契約です。
リースバックのメリットは、住宅の所有者である夫婦は、一方の配偶者や子供たちが自宅に住んだまま、一時的にまとまった現金を手にすることができます。かかる現金を財産分与の対象財産とすることが可能となります。

リースバックは、住宅ローンの残債がマンション価格を下回るアンダーローンの場合のみならず、任意売却と組み合わせて行うことができる事業者もあるため、オーバーローンの状態でも可能な場合があります。

離婚時マンションを売却せずに住み続ける財産分与

マンションを相手に譲り名義変更、現金を受け取る

「小さい子供がいて、子供の転校や精神面を考慮すると生活環境を変えられない」

「自身の職場環境を変えられない」

「配偶者がこれまで専業主婦(夫)で生活資金力が乏しく住居の提供が必要」

「両親の介護のため同居している」

場合などは、マンションなどのマイホームを売却しないで、一方がそのまま住み、他方は出ていくという方法の選択を検討する方も多いといえます。

このようにマンション等のマイホームを売却しないという選択肢の検討の際には、まず、マイホームの査定が必要となります。マンションなどのマイホームがいくらで売却できるかを調べなければなりません。

そして、調査した市場価格(市場の取引価格)の半分を片方が現金で受け取り、もう片方は住まいを引き取るということになります。

例えば、妻が、夫名義の居住用のマンション(市場価格:3,200万円)を財産分与により取得しますが、マンションには残債3,000万円の住宅ローンがある場合に、どのようにすれば妻名義にできるのでしょうか?現実的な視点で検討したいと思います。

住宅ローンも夫婦共通の財産であるため、財産分与の対象です。精算割合が2分の1であるなら、妻が住宅ローン付きでマンションを承継すると妻は夫に100万円を支払うことになります(妻の精算金はマンション3,200万円×1/2、住宅ローン3,000万円×1/2、妻はマンションもローンも引き継いでいるため100万円多くもらっていることになります)。

ここで大きな問題があります。住宅ローンがそのまま残るということです。

そこで、この残った住宅ローンをどうするのかについて見ていきましょう。

離婚、住宅ローンはどうするか?名義変更は?

離婚時のマンションに住宅ローンが残っていることは、財産分与の大きな障壁となります。

住宅ローンが残り、担保権が付着したマンションの名義や住宅ローンの名義を夫から妻に変更することは容易ではありません。

住宅ローンを組んでいる銀行の承諾が必要となります。

実際には妻が新たに住宅ローンを組み、夫のローンを完済し妻の名義となったマンションに改めて銀行の担保を設定することになります。

このような手続きの根本として、妻の与信、住宅ローンの返済能力があることが必要です。

この点、残った住宅ローンは夫が支払いマンション等の名義も夫のままにして妻が住み続けるということもできます。しかし、住宅ローンの名義人が実際に居住していないことは、住宅ローンを組んだ際の契約違反とみなされる可能性があります。その場合、契約違反により、住宅ローンの一括返済を要請されることもあるので、住宅ローンの融資先との相談が必要となります。

夫婦のどちらかが住み続ける場合のローンの処理については、「ローン債務者はどちらか」「住まいに残るのはどちらか」といったシチュエーションによって、対処方法が変わってきます。

ここからは、マンション等のマイホームを売却せずに財産分与する一般的に予想されるパターンと方法をご紹介していきます。

離婚後マンションに住み続ける場合のリスクや問題点

ここでは以下の2つのケースに分けて見ていきたいと思います。

  • 債務者が夫で、夫が住み続ける場合
  • 債務者が夫で、妻が住み続ける場合

売却をせずどちらかがマンションなどの不動産に住み続ける場合のローンの処理については、住宅ローンの債務者は誰か?夫婦で連帯債務者なのか?妻が連帯保証人になっているのか?など、ケースによって変わります。

婚姻中の夫婦が協力して形成した財産はプラス財産だけではなく、住宅ローンなど生活維持のための債務も財産分与の対象となるので、対応すべきことがたくさんあります。

債務者が夫、夫が住み続ける場合

離婚時にローンの名義人となっている夫が、持ち家に住みながらそのまま支払いを続けるという、最もシンプルなパターンです。
マンション等のマイホームの時価が住宅ローンの残額より大きい場合は、残額部分は財産分与の対象となります。そのため離婚の際の財産分与として、夫は残額の半分を妻に分与することになります。
この点、住宅ローンの主たる債務者が夫のみで妻はマイホーム購入の際に銀行と一切の契約をしていなく保証協会を活用している場合は大きな問題はないと考えられます。

しかし、妻が住宅ローンの連帯保証人になっている場合が少なくありません。双方の話し合いにより離婚後は、夫が住宅ローンの残額を支払うことで合意したとしても、金融機関に対して妻が連帯保証人であることには変わりはありません。
夫が住宅ローンの返済を滞ると、連帯保証人である妻に支払の請求が来ます。


このような事態を避けるには、離婚時に、妻は連帯保証人から外れる手続きを金融機関とすることになります。
妻の代わりとなる連帯保証人、例えば夫の両親や兄弟姉妹を用立てたり、他に所有する不動産を担保として提供することが考えられますが、連帯保証人から外れることを承諾するのは金融機関です。代わりの連帯保証人や追加の不動産担保を提供できても、必ずしも金融機関が承諾してくれるとは限りません。

このように住宅ローンに係る妻の連帯保証人からの解放ができないときは、「住宅ローンの借り換え」を検討することになります。新たな金融機関での与信の審査が下りると、前の金融機関との住宅ローンからは解放されることになり、結果として妻は連帯保証人から解放されることになります。
しかし、住宅ローンの借り換えは、金融機関の手数料、登記費用、登録免許税などの諸費用と手間暇がかかり、妻を除く与信審査の通過が必要となるため、ある程度、夫の自己資金力が必要となります。

債務者が夫、妻が住み続ける場合

離婚後も妻が住まいに残り、夫が住宅ローンを支払い続けるというパターンです。離婚後に妻が住まいを確保することが難しかったり、妻が子どもを引き取るなどの場合に、この方法が取られることがあります。

妻にとっては有利に見える方法ですが、夫のローン返済が滞ると金融機関が差し押さえの申立てをすることになります。すると、住まいが競売にかけられ、立ち退きを迫られる恐れがあるので注意が必要です。

返済が滞った場合に備えるには、財産分与に係る取り決めを公正証書にしておくとよいでしょう。公正証書は、全国にある公証役場で作成することができます。

もっとも、かかる方法には大きな問題があります。
しかし、住宅ローンの名義人である夫が実際に居住していないことは、住宅ローンを組んだ際の契約違反とみなされる可能性があります。
その場合、契約違反により住宅ローンの一括返済を要請されることもあるので、住宅ローンの融資先である金融機関との相談が必要となります。
また、住宅ローンの主たる債務者が夫であるため、離婚成立後も元夫と関係性を保つことになります。
さらに、居住する住宅ローンの完済までは、元夫の住宅ローンの滞納による生活基盤の差押えリスクがあります。

かかるリスクの回避のためには、夫から妻名義への住宅ローンの債務名義の変更もしくは住宅ローンの借り換えが必要となります。
ただし、妻の金融機関への与信が必要となります。妻の職業がパートやアルバイト、自営業者である場合や、住宅ローン残高が多い場合は難しい場合も考えられます。

離婚、住宅ローンが残るマンションに妻が住み続ける

離婚、住宅ローンが残るマンションに妻が住み続ける

離婚にあたり、子供の転校や精神面、妻の職場環境を考慮してこれまで住んできたマンションは妻子が住み続けるという選択をすることもあります。

住宅ローンがある場合は、別れた夫がローンを払い続けることを約束することもあるでしょう。

では、このような選択にどのようなリスクがあるのでしょうか?

離婚時に残る住宅ローンの契約違反による一括返済リスク

離婚による財産分与の結果、元妻がマンションなど自宅に住み続けるが、自宅と住宅ローンは元夫名義のまま、支払いも元夫が続けるというケースは少なくありません。

例えば、マンションを譲り受ける元妻へマンションや債務の名義を変更したいが、元妻に対する金融機関からの与信がないと債務名義の変更や借り換えもできません。
そのため、自宅と住宅ローンは元夫名義のままにしておいて、支払いも元夫が続けるという選択をすることになります。

確かに、子供の転校や精神面、元妻の職場環境など大きく生活環境を変えずにすむという元妻側のメリットがあるとともに、慰謝料や養育費代わりに無償で住まわせることにより元妻等に金銭の給付をしないで済むという元夫側のメリットがあり、お互いにメリットがあるといえます。

しかし、住宅ローンは、契約者が住むことを条件としているものが多いので、金融機関と契約している元夫が住居を出て元妻と子どもだけが住み続ける場合、契約違反として金融機関からローンの残額を一括請求されるリスクがあります。

この方法を選択せざる得ない場合は、事前に金融機関と相談しておくべきといえます。

離婚、名義変更しないマンションの売却リスク

住宅ローンがなく、マンションの名義が妻名義に変更されている場合は、問題はありません。妻は売りたいときにマンションを売ることができます。

再婚を機に売却をすることもできます。

問題は住宅ローンが残っており母・子が住んでいるにも関わらず、名義が元夫である場合です。

住宅ローンの借入契約の中で「マンションの名義変更をする際には事前に銀行に連絡を入れて承諾を得ること」の一文があったと思われます。この文言がある為、住宅ローンが残っている手前、妻名義に変更せず、慰謝料代わりにローンは夫が返済することにしているご家族もおります。

この場合は、夫名義である以上、妻は再婚を機にマンションを売却することはできません。
さらに、マンションの名義が元夫であることを利用して、元夫が所有者として売却してしまうリスクもあります。

離婚時に残る住宅ローンの支払いリスク

夫婦の居住用のマンションを住宅ローンを組んで購入した際に、妻は連帯債務者か連帯保証人になっている場合が多いです。

この場合、夫が主たる債務者として弁済をしていても、夫が弁済を滞れば、妻が連帯債務者又は連帯保証人として住宅ローンを完済する義務があります。

離婚時に残る住宅ローンの差押え・競売リスク

前述しましたが、住宅ローンの借入契約の中で「マンションの名義変更をする際には事前に銀行に連絡を入れ承諾を得ること」の文言があるため、マンションの名義は妻名義に変更せず、慰謝料代わりにローンは夫が返済することにしているご家族もおります。

夫が住宅ローンの支払いを怠り、マンションが差押えされ競売にかけられた際には妻子は家を失うことになります。

このようなリスクを冒さないためにも、妻の経済的与信は必要となりますが住宅ローンの借り換えで妻単独名義にするか、離婚時にマンションの売却を検討するべきです。

次項では財産分与の対象、期限、種類など財産分与の詳細について解説していきます。

離婚による財産分与の割合や時効、家やローンの詳細

離婚による財産分与とは

協議上の離婚をした者の一方は、相手方に対して財産の分与を請求することができます(民法第768条第1項)。
財産分与とは、離婚の際に妻(又は夫)の協力や貢献を考慮し夫婦で築き上げて形成した財産を精算する手続きです。
原則、夫婦で築き上げた財産を2分の1の割合で分割することになります。
もっとも、財産分与につき当事者間の協議が整わないとき又は協議自体をすることができないようなときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分の請求をすることになります(民法第768条第2項・3項)。

財産分与の対象となるもの

財産分与の対象となる財産は、結婚生活を送る過程で夫婦がともに築き上げたと言える共有財産です。
収入の源が誰なのか、居住しているマンションなどの不動産の名義が誰なのかは関係がありません。
夫婦が協力して、ともに築き上げた財産と言えれば共有財産とみなされます。

次のような財産は、婚姻後に夫婦で築き上げたという要件を満たすと共有財産として財産分与の対象となると考えられます。

  • 婚姻後に得た現金や預貯金
  • マンション・戸建てなどの居住用不動産
  • 有価証券などの金融資産
  • 解約返戻金がある生命保険や学資保険
  • 自動車
  • 宝飾品や家財道具
  • 退職金 ※婚姻期間が長いような場合は給料の後払い的な要素があるため

離婚による財産分与、住宅ローンも対象

では、夫婦が生活をするためにした借金、例えばマンションなどマイホームを購入するために組んだ住宅ローンは、財産分与の対象となるのでしょうか?

夫婦が生活するために、ともに協力し築き上げた財産が夫婦の共有財産とみなすため、夫婦の共同生活の中から生じた住宅ローンも財産分与の対象として考える必要があります。

もっとも、離婚時に残っている住宅ローンを夫婦で分担して返済しなければならないということはありません。あくまでも銀行に返済義務があるのは、住宅ローンを組んだ債務者やその保証人です。残っている住宅ローンが財産分与の対象となるにすぎません。

離婚による財産分与、親の遺産や親からの贈与

この財産分与の対象財産について考えるときに、財産分与の対象とならない「特有財産」というものがあります。
「特有財産」に該当しないものを財産分与の対象財産と考えると分かりやすいかもしれません。

では、特有財産とは何でしょうか?

特有財産とは、他方の配偶者とは何の関係もなく形成された財産であり、夫婦のどちらか一方に帰属している財産です。
特有財産は、その取得や管理において他方の配偶者が関与することがないため、夫婦で築き上げた財産とは言えず財産分与の対象から除外することとなります。

離婚という偶然の事情により他方の配偶者が何の労もなく、財産を得ることが無いように公平性を保つためです。

その代表的なものとしては次のようなものがあります。

  • 親からの相続したマンションや預貯金などの相続財産
  • 贈与を受けたことで取得した財産
  • 独身時代に蓄えた預貯金や築き上げた財産(投資用不動産等)
  • 別居後に取得した財産 ※事情により共有財産になり得ます

ここで、夫婦のマンションなどの住宅購入の際に、妻の親から頭金を援助してもらい、残りは夫が住宅ローンを組んだ場合、援助された金額について、財産分与の際にはどのように考えるべきなのでしょうか?
妻の親からの頭金の援助は、親から子への住宅取得資金のための「贈与」となります。
そのため、財産分与の対象にはなりません。
親から贈与を受けた頭金を差し引いた金額を共有財産として夫婦で財産分与をすることになります。
なお、差し引く特有財産としての頭金の金額は、マンションなどの住宅の購入代金のうち、特有財産の含まれる割合を算出します。
そして、離婚する時点におけるマンションなど住宅の予想される売却価格にその割合を掛けることで、頭金たる特有財産の価格を割り戻します。
マンション等の不動産の場合は、このような方法で特有財産を控除し、具体的な財産分与を検討することになります。

財産分与の割合

財産分与の分割割合に関しては、プラス財産のみならずマイナス財産も含めて、夫婦の共有財産を洗い出し、協議によって決めるのが一般的です。

財産分与の際は、夫婦の一方しか働いていなくても、つまり、妻は専業主婦で夫しか働いていなくても、基本的には夫婦で築き上げた財産として原則2分の1ずつ財産分与し精算することになります。

これは、一方が収入の源でも、他方が家庭を支える「内助の功」と認めているためです。

もっとも、妻が家事・育児全般をすべてこなしながらも会社員として夫と同等に働いていたケースであれば、妻の貢献度がより多く認められるべきであり、均等に精算することが不公平といえる場合もあります。
財産分与の割合を原則、2分の1とすることは、法律上に規定があるわけではありません。分割割合を自由に決めることができます。

財産分与の期限

財産分与に関しては、一般的には離婚の際に協議し合意しますが、離婚の際に財産分与に関して協議していないような場合には、離婚後でも財産分与の請求を行うことができます。

ただし、財産分与が請求できるのは、離婚成立時から2年以内のため注意しましょう。

財産分与は離婚の際の大きな争点の一つです。
離婚成立後2年以内は財産分与請求ができますが、離婚が成立した後、相手方が職場や居住先も変わって、連絡が全く取れなくなり、行方不明となるケースは少なくありません。
また、財産分与の手続きを開始するまでの期間が長ければ長いほど、相手に財産を整理したり処分したりする猶予を与えることにもなります。共有財産が減ってしまうリスクもあります。
一日でも早く離婚をしたい場合もあると思いますが、可能な限り離婚前にきちんと財産分与につき協議しておくべきです。
もっとも、離婚成立から2年を経過しても財産分与請求に相手が応じてくれる場合は、財産分与は可能です。
この場合は、法務上のみならず税務上での注意が必要となります。

財産分与の性質・種類

財産分与請求には、次のような性質・種類があると言われております。

【清算的財産分与】

清算的財産分与とは、夫婦での共同生活の中で築き上げた共有財産の清算を目的とする財産分与のことです。
清算的財産分与が財産分与の一般的な性質といえます。

【慰謝料的財産分与】

慰謝料的財産分与とは、相手方の不倫・暴力等の有責配偶者に対して、その精神的苦痛に対する慰謝料としての性質の財産分与のことをいいます。
慰謝料は、財産分与とは別途に請求することもできますが、財産分与の中に慰謝料的性質も含めて請求することができます。

【扶養的財産分与】

扶養的財産分与とは、離婚をした際に夫婦の他方が生活に困窮する事情がある場合に、その生計を維持するため扶養目的での財産分与を言います。
夫婦で築き上げた共有財産が少ない場合や住宅ローンなどの影響でマイナスの場合には、財産分与の対象となる財産がありません。
そのような場合に離婚すると、経済力の乏しい配偶者は、離婚後、生活が困窮するリスクがあります。
そのため、離婚成立からある程度の収入を確保できるようになるまでの一定の期間、扶養目的で定期的に金銭を分与することがあります。

次項ではペアローンを返済中に離婚など住宅ローンについての注意点を解説していきます。

ペアローンを返済中に離婚など住宅ローンの注意点

ペアローンで離婚後住み続ける、相手の債務を引き受け

住宅ローンには、住宅ローンの名義人が実際に居住することという条件があるため、離婚してどちらかが家を出て行ってしまうと、住宅ローンの条件を満たさなくなってしまいます。
そのため、金利が高いローンへの変更や、金融機関に相談をしていないと一括返済を求められる場合もあります。

そこで、ペアローンの場合、住居に住み続ける配偶者が、住宅ローンの残債を引き受けて一本化することを検討する必要があります。

最近では、高収入の共働き夫婦を「パワーカップル」などと呼びますが、このようなパワーカップルの場合には、預貯金など現金で相手側の住宅ローンの残債を一括返済することにより、住宅ローンの残債を一本化することができます。
一括返済は、本来の返済予定を繰り上げて支払うため、住宅ローンを組んでから間がないときは、手数料がかかる場合があります。
もっとも、ペアローンの場合には、互いに他方の債務の連帯保証人になっている場合がほとんどのため、連帯保証契約の解除等の検討が必要となります。

預貯金や現金で相手側の残債を一括返済できず、連帯保証人たる地位の処分もできない場合は、住居に住み続ける配偶者が、他行との住宅ローンの借り換えを検討することになります。
住宅ローンの借り換えにより従前の住宅ローンの契約関係から解放され、新たな単独名義の住宅ローンを組むことができます。
もっとも、ペアローン名義は、夫婦の与信を以って成立しております。ペアローン名義を単独名義にするのは、2人の与信から1人の与信への切り替えのため、容易ではありません。

住居に住み続ける配偶者が与信の審査を受け、単独の収入では住宅ローンの返済が難しいと判断されるとペアローン名義からの一本化はできないということになります。

離婚時の住宅ローンが連帯債務の場合、連帯債務者の変更

連帯債務の場合は、連帯債務者を変更することで、住居に居住しない配偶者を住宅ローンの契約関係から解放することができるかもしれません。

この場合、住居から出ていく元配偶者の代わりとして、新たな連帯債務者を見つける必要があります。

新たな連帯債務者を立てる際は、両親や兄弟姉妹などの親族にお願いすることとなると思います。

この点、新たな連帯債務者は、住宅ローンの融資の与信審査を通過する必要があるため、新たな連帯債務者は、元配偶者と同等・もしくはそれ以上の与信が必要となります。

連帯債務で住宅ローンを組んだ場合は、夫婦の収入合算により与信を得ているため、連帯債務者の名義変更は、大変困難と考えられます。

この点、他の金融機関との住宅ローンの借り換えを検討することもひとつです。
住宅ローンの借り換えにより従前の住宅ローンの契約関係から解放され、新たな単独名義の住宅ローンを組むことができます。
しかし、これもまた2人の与信から1人の与信への切り替えのため、住居に住み続ける配偶者が与信の審査を受け、単独の収入では住宅ローンの返済が難しいと判断されると、連帯債務名義からの一本化はできないということになります。

離婚時の住宅ローンがペアローン・連帯債務、互いに返済を継続

住居に居住を続ける配偶者の収入などによっては、債務者の変更や住宅ローンの借り換えの審査に通らず、債務の一本化ができないこともあります。
そのような場合は、これまで通り夫婦2人で返済を続けていく方法もあります。
しかし、前述のとおり、夫婦のどちらか片方が居住していないことが金融機関に判明すると、住宅ローンの債務者が居住するという契約に違反しているとみなされて一括返済を求められる可能性はあります。

これまで通り名義を変更せず夫婦2人で返済を続ける場合でも、離婚により他方配偶者が居住しないことについては銀行には相談しておくべきと思われます。

次項ではマンションが共有名義のまま離婚するリスクについて解説をしていきます。

マンションが共有名義のまま離婚のリスク

共同名義・共有名義のリスク

マンションなど不動産が共同(共有)名義の場合は、共有者全員の意見が一致しなければ売却できません。

離婚後、元夫婦間で意見が一致しない限りマンションを売却し現金化することはできないということになります。

財産分与を共同(共有)名義のまま終了させるリスク

また、何らかの事情により共有者の他方が亡くなり、子がいないような場合は、元姻族であった親族とマンションを共有することにもなります。

例えば、元夫の死後は元夫の兄弟姉妹やその子と自分が住んでいるマンションを共有することもあり得ます。

親しくない者とマンションを共有することのリスクはイメージできるかと思います。

共有マンションを単独名義にする方法

【住宅ローンを完済している場合】

住宅ローンが完済されていると夫婦どちらかの名義にする財産分与は、財産分与の枠内にとどめて贈与とならないように気を付けている限り容易です。

マンションを売却して現金化し財産分与することも、マンションの築年数にもよりますがさらに容易です。

築古のマンションの売却は、マンション買取専門業者に相談することをお勧めします。離婚に伴う財産分与がスムーズに進みます。

ここで気を付けなくてはいけないのは、マンションを共有している場合は、持分所有者は自己の持分のみを第三者に売却することができるので、財産分与がスムーズにできるように離婚給付契約公正証書や財産分与につき私文書にまとめておくことをお勧めします。

夫婦と関係ない全くの第三者とマンションを共有することは、リスクしかありません。マンションの処分には共有者との意見の一致が必要だからです。

自己の持分の利益さえ脅かされる可能性があります。

【住宅ローンがある場合】

住宅ローンが残っている場合は、夫婦の他方に名義を寄せて単有名義にすることは、金融機関との調整が必要なため簡単なことではありません。

借入をしている銀行の承諾を得ずにマンションの名義を単有にすると、借入銀行から契約違反により期限の利益を喪失し住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。

住宅ローンが残っている場合は、夫婦の預貯金や親族から金銭を借り入れて住宅ローンの完済をするか、マンションの単有名義人となる者が住宅ローンの借り換えをして、既存の住宅ローンを完済してマンションを単有名義人にすることとなります。

この場合、マンションの単有名義人となる者の金融機関に対する与信が必要となります。

離婚によりマンションを財産分与した場合の税金

離婚によりマンションを財産分与した場合の税金

婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産は、夫名義であることが多いかと思います。

ここでは、妻の協力・貢献があり夫婦で形成した財産であるが、夫の名義であるマンションを財産分与をする際の課税関係について見ていきましょう。

贈与税

財産分与は、夫婦で協力して形成した財産を妻の協力や貢献割合を考慮して精算されるため、その性質から夫からマンションを財産分与されても、精算の範囲であればマンションを分与することは、贈与による取得とはみなされず、贈与税を課税されることはありません。

もっとも、偽装離婚により贈与税や相続税を免れようと、財産分与に仮託してなされた財産分与は贈与税が課税されます。財産分与の法の趣旨に反するので当然といえます。

不動産取得税

本来、マンションを取得すると不動産を取得したことから妻は、不動産取得税の対象となりますが、財産分与によりマンションを取得した場合は不動産取得税が減免されます。

注意しなければならないのは、不動産取得税の減免は、夫婦で協力して形成した財産の精算であって、慰謝料や扶養料としてマンションを取得した場合は不動産取得税の減免対象となりません。

不動産譲渡取得税

財産分与による分与者側である夫には不動産譲渡所得税が課される可能性があります。

本来なら、金銭を妻に渡し財産分与し精算すべきところ、マンションを渡すことにより金銭債務を消滅させることになることから、通常の不動産の売却と同様に譲渡した利益に対する課税がされます。

もっとも、今まで夫婦で生活していた居住用マンションの譲渡益に対する課税のため、居住用財産を譲渡した場合の特例により、利益に対して3,000万円控除が可能です。実際には譲渡所得税はかからない場合が多いと思われます。

ただし、夫が妻と長期間別居生活をして、愛人と別宅で同居していたような場合は、夫の居住用不動産とみなされない可能性があるため、3,000万円控除はできないことが予想されます。

【おしどり贈与(配偶者控除の特例)】

この点、夫婦間での「おしどり贈与(配偶者控除の特例)」なるものがあります。

おしどり贈与(配偶者控除の特例)は、婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産、もしくはそれを取得するための金銭の贈与が行われた場合には、最高2,000万円まで控除できる制度です。贈与税の基礎控除110万円とは別途、使用可能なため上限2,110万円まで、贈与税なく贈与することができます。

この場合、贈与を受けた妻は贈与税はかかりませんが、不動産取得税は課税される場合があります。

他方、夫には譲渡所得税は発生しません。

かかる制度の活用により婚姻期間中に、問題を整理できる場合もあります。

離婚によるマンションの名義変更

財産分与としてマンションを夫から譲り受ける場合は、夫の名義から妻名義に変更することが必要です。

夫婦で築き上げたマンションに住宅ローンの担保権がついていない場合は、容易にマンションの名義変更をすることができます。

住宅ローンの処理について銀行との交渉が不要だからです。

ここでは、住宅ローンも完済されたマンションの妻名義への変更登記について見ていきます。

通常は、マンションなど不動産登記の専門家である司法書士に依頼することが多いかと思いますが、どのような書類が必要なのかを確認しましょう。

必要書類

財産分与によるマンションの夫名義から妻名義に変更するために必要な書類は以下のとおりです。

【法務局へ添付する書類】

□不動産の権利証・登記識別情報

□登記原因証明情報

 ・財産分与によりマンションの所有権を
  夫から妻へ移転することを証する報告書

 ・協議離婚書や財産分与契約書

□離婚の記載のある戸籍謄本

□夫の印鑑証明書

□妻の住民票

□マンションの固定資産評価証明書

費用

【離婚給付契約公正証書作成費用】

夫婦が離婚する際には、未成年の子の養育費や面会、財産分与や慰謝料・扶養料、年金分割などについて協議して取り決めます。

この協議は、離婚協議書など当事者間で合意内容を記載して作成する私文書で構いません。

しかし、協議して合意した内容を公証役場にて公正証書(離婚給付等契約公正証書)にすることをお勧めします。

強制執行の認諾文言を記載し、取り決めたことを実行しないような場合に強制執行できるよう備えることができます。

公証役場の費用は、養育費・財産分与・年金分割について作成する場合は、対象財産額によっても異なりますが35,000円程度かと思われます。

【登記費用】

ご自分で登記をする場合でも登録免許税なる国税は納付しなければなりません。

登録免許税はマンションの固定資産税評価額×2%です。

例えば、マンションの専有部分と敷地権である土地の固定資産税評価額が3,000万円の場合の登録免許税を計算してみましょう。

登録免許税は、3,000万円×2%=60万円 となります。

さらに司法書士にマンションの移転登記を依頼した場合は、8万円~15万円程度の費用が発生するかと思われます。

専門家に依頼するメリットは、離婚に対する法務・税務・ファイナンシャルプラン・マンションの有効活用や売却等多角的なアドバイスをもらえることにあります。

離婚時に居住していたマンションの売却のすすめ

これまで見てきたように住宅ローンが残っているような場合は、マンションを売却する方がスムーズに財産分与ができるかと思われます。

離婚による不動産のタイミングは早いに越したことはありません。

しかし、離婚成立前に売却代金を他方配偶者に渡すと、贈与となり贈与税が発生するので気を付けましょう。

財産分与の請求は、離婚成立後にできるからです。

離婚成立後にマンションを売却し精算される方も多くいらっしゃいますが、その際、夫婦の共有名義の場合、買主への所有権の移転登記の前提として、妻の旧姓への名義変更が必要となることがあります。これにより、買主に前所有者が離婚してマンションを売却したのかもという推測が働きます。

このようなことを考えると、離婚に伴うマンションの売却はマンション専門の買取業者に依頼することも一つかもしれません。また、マンション専門の買取業者が買主となるためマンションの売却もスピーディーに進みます。

マンション買取業者を活用する大きなメリットはスピードのみならず、宣伝広告、売却活動をしないので、ご近所に知られずにマンションを売却できる点です。

関連記事:マンション買取業者のおすすめはどこ?種類や選び方

離婚でマンションを売却、財産分与の詳細、住宅ローンや共有名義の注意点まとめ

これまで暮らしてきたマンションを手放し生活環境を変えることには抵抗があるかもしれません。ましてや未成年のお子さんがいる場合はなおさらかもしれません。

しかし、離婚によるトラブルは珍しいことではありません。

離婚後も住み慣れているとはいえ住宅ローン付きのマンションに住むことで起こるリスクもご紹介させて頂きました。

離婚に伴う財産分与でのマンションの売却、ローンの完済等お困りごとがありましたら是非専門家に相談してみてください。

離婚によるマンションなどの不動産の財産分与とは?

離婚による財産分与とは、離婚の際に妻(又は夫)の協力や貢献を考慮し夫婦で築き上げて形成した財産を精算する手続きです。財産分与の対象となるもの、対象とならないもの、割合、期限などについて詳しくはこちらをご覧ください。

離婚でマンション売却、共有名義持分割合と財産分与の注意点は?

ペアローン、連帯債務の住宅ローンを組んでマンションの名義が夫婦の共有名義(共同名義)となっている場合、夫婦のどちらも住宅ローン全額について支払い義務を負うことになります。

住宅ローンが残っている自宅を共有名義(共同名義)のまま離婚する注意点、共有名義の自宅マンションの財産分与の注意点などのについて詳しくはこちらをご覧ください。

離婚、マンションを売却して財産分与する場合の注意点は?

売却するマンションのローン残債額と売却価格(市場価格)がポイントになります。住宅ローンの残債がマンション価格を下回るアンダーローンなのか、住宅ローン残債がマンション価格を上回るオーバーローンなのかによって売却の難易度は大きく異なります。離婚で財産分与、マンションを売却して現金化をすることについて詳しくはこちらをご覧ください。

離婚後マンションに住み続ける場合の注意点は?

マンションを売却せずどちらかがマンションなどの不動産に住み続ける場合のローンの処理については、債務者が誰で、誰が住み続けるかによって対応が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。

マンションが共有名義のまま離婚のリスクは?

マンションなど不動産が共同(共有)名義の場合、共有者全員の意見が一致しなければ売却ができません。離婚後元夫婦間で意見が一致しない限りマンションを売却し現金化することはできないということになります。

その他のリスク、解決方法など、詳しくはこちらをご覧ください。

離婚、住宅ローンが残るマンションに妻が住み続けるリスクは?

離婚にあたり、これまで住んできたマンションは妻子が住み続けるという選択をすることもあります。住宅ローンがある場合は、別れた夫がローンを払い続けることを約束することもあるでしょう。

このような選択で下記のようなリスクが考えられます。

  • 住宅ローン契約違反による一括返済リスク
  • マンションの売却リスク
  • 住宅ローンの支払いリスク
  • 差押え・競売リスク

それぞれのリスクについて詳しくはこちらをご覧ください。

(執筆)
司法書士 岡山 司

人生設計や人生の節目をサポートする会員制の「ひだまり俱楽部」を運営。

相続・税務・保険・不動産・FPと「暮らしの安心・安全」を提案し解決するアドバイザー。

近年は、お部屋の整理収納や妊婦さん・高齢者・離婚のカウンセリングなど暮らしにおけるカスタマーサービスの充実を図っております。

認知症対策として注目される「民事信託」をはじめ、多数の「相続・遺言」セミナーの講師として活躍中!

 

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