離婚でマンションを売却、手順や住宅ローンなどの注意点

カテゴリ:マンション売却のお金
投稿日:2021.05.19

離婚でマンションを売却、手順や住宅ローンなどの注意点

厚生労働省の令和元年(2019年)人口動態統計(確定数)の概況によると、婚姻件数は59万9007件であるのに対し、離婚件数は20万8496件とのことです。

約3組に1組の夫婦が離婚している統計となります。

離婚自体は日常生活では一般的な出来事といえそうですが、周りには知られたくない出来事のため、離婚の際、どのように財産分与をすればよいのか?夫婦で暮らしていたマンション売却はどのように進めればよいのか?分からないという方が多いのではないでしょうか。

今回は、離婚による財産分与と居住していたマンションの売却等の対応について見ていきましょう!

離婚によるマンションの財産分与

婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産は夫婦の共通財産です。

しかし、マンションなどは夫が住宅ローンを組み、夫名義で登記がされていることが多いと思われます。

離婚の際に妻の協力や貢献を考慮し夫婦で築き上げて形成した財産を精算することを財産分与といいます。

財産分与は、離婚した者の一方から他方に対して財産の分与を請求することができます。

夫婦の一方しか働いていなくても、つまり、妻は専業主婦で夫しか働いていなくても基本的には夫婦で築き上げた財産として2分の1ずつ財産分与し精算することになります。

財産分与が請求できるのは、離婚成立時から2年以内のため注意しましょう。

財産分与請求には、次のような性質があると言われております。

【財産分与の性質】

  • 婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産の精算
  • 不倫・暴力等の有責配偶者の相手方に対する慰謝料
  • 離婚後に生活困窮する相手方に対する扶養

そのため、財産分与では夫婦で築き上げた共有財産の精算のみならず慰謝料や扶養料を併せて請求することもできます。

この場合は、法務上のみならず税務上での注意が必要となります。

離婚によりマンションを財産分与した場合の課税関係

離婚でマンションを売却、手順や住宅ローンなどの注意点-離婚によりマンションを財産分与した場合の課税関係

婚姻期間中に夫婦で築き上げた財産は、夫名義であることが多いかと思います。

ここでは、妻の協力・貢献があり夫婦で形成した財産であるが、夫の名義であるマンションを財産分与をする際の課税関係について見ていきましょう。

贈与税

財産分与は、夫婦で協力して形成した財産を妻の協力や貢献割合を考慮して精算されるため、その性質から夫からマンションを財産分与されても、精算の範囲であればマンションを分与することは、贈与による取得とはみなされず、贈与税を課税されることはありません。

もっとも、偽装離婚により贈与税や相続税を免れようと、財産分与に仮託してなされた財産分与は贈与税が課税されます。財産分与の法の趣旨に反するので当然といえます。

不動産取得税

本来、マンションを取得すると不動産を取得したことから妻は、不動産取得税の対象となりますが、財産分与によりマンションを取得した場合は不動産取得税が減免されます。

注意しなければならないのは、不動産取得税の減免は、夫婦で協力して形成した財産の精算であって、慰謝料や扶養料としてマンションを取得した場合は不動産取得税の減免対象となりません。

不動産譲渡取得税

財産分与による分与者側である夫には不動産譲渡所得税が課される可能性があります。

本来なら、金銭を妻に渡し財産分与し精算すべきところ、マンションを渡すことにより金銭債務を消滅させることになることから、通常の不動産の売却と同様に譲渡した利益に対する課税がされます。

もっとも、今まで夫婦で生活していた居住用マンションの譲渡益に対する課税のため、居住用財産を譲渡した場合の特例により、利益に対して3000万円控除が可能です。実際には譲渡所得税はかからない場合が多いと思われます。

ただし、夫が妻と長期間別居生活をし愛人と別宅で同居していたような場合は、夫の居住用不動産とみなされない可能性があるため、3000万円控除はできないことが予想されます。

【おしどり贈与(配偶者控除の特例)】

この点、夫婦間での「おしどり贈与(配偶者控除の特例)」なるものがあります。

おしどり贈与(配偶者控除の特例)は、婚姻期間20年以上の夫婦間での居住用不動産、もしくはそれを取得するための金銭の贈与が行われた場合には、最高2000万円まで控除できる制度です。贈与税の基礎控除110万円とは別途、使用可能なため上限2110万円まで、贈与税なく贈与することができます。

この場合、贈与を受けた妻は贈与税はかかりませんが、不動産取得税は課税される場合があります。他方、夫には譲渡所得税は発生しません。

かかる制度の活用により婚姻期間中に、問題を整理できる場合もあります。

離婚によるマンションの名義変更

財産分与としてマンションを夫から譲り受ける場合は、夫の名義から妻名義に変更することが必要です。

夫婦で築き上げたマンションに住宅ローンの担保権がついていない場合は、容易にマンションの名義変更をすることができます。

住宅ローンの処理について銀行との交渉が不要だからです。

ここでは、住宅ローンも完済されたマンションの妻名義への変更登記について見ていきます。

通常は、マンションなど不動産登記の専門家である司法書士に依頼することが多いかと思いますが、どのような書類が必要なのかを確認しましょう。

必要書類

財産分与によるマンションの夫名義から妻名義に変更するために必要な書類は以下のとおりです。

【法務局へ添付する書類】

□不動産の権利証・登記識別情報

□登記原因証明情報

 ・財産分与によりマンションの所有権を
  夫から妻へ移転することを証する報告書

 ・協議離婚書や財産分与契約書

□離婚の記載のある戸籍謄本

□夫の印鑑証明書

□妻の住民票

□マンションの固定資産評価証明書

費用

【離婚給付契約公正証書作成費用】

夫婦が離婚する際には、未成年の子の養育費や面会、財産分与や慰謝料・扶養料、年金分割などについて協議して取り決めます。

この協議は、離婚協議書など当事者間で合意内容を記載して作成する私文書で構いません。

しかし、協議して合意した内容を公証役場にて公正証書(離婚給付等契約公正証書)にすることをお勧めします。

強制執行の認諾文言を記載し、取り決めたことを実行しないような場合に強制執行できるよう備えることができます。

公証役場の費用は、養育費・財産分与・年金分割について作成する場合は、対象財産額によっても異なりますが35000円程度かと思われます。

【登記費用】

ご自分で登記をする場合でも登録免許税なる国税は納付しなければなりません。

登録免許税はマンションの固定資産税評価額×2%です。

例えば、マンションの専有部分と敷地権である土地の固定資産税評価額が3000万円の場合の登録免許税を計算してみましょう!

登録免許税は、3000万円×2%=60万円 となります。

さらに司法書士にマンションの移転登記を依頼した場合は、8万円~15万円程度の費用が発生するかと思われます。

専門家に依頼するメリットは、離婚に対する法務・税務・ファイナンシャルプラン・マンションの有効活用や売却等多角的なアドバイスをもらえることにあります。

離婚時のマンションに住宅ローンが残っている場合

離婚時のマンションに住宅ローンが残っていることは、財産分与の大きな障壁となります。

住宅ローンの債務者は誰か?夫婦で連帯債務者なのか?妻が連帯保証人になっているのか?マンションの時価は?ローン残高は?マンションを売却してローンは完済できるのか?夫婦のどちらかがマンションに住み続けるのか?など婚姻中の夫婦が協力して形成した財産はプラス財産だけではなく住宅ローンなど生活維持のための債務も財産分与の対象となるので対応すべきことがたくさんあります。

ここではいくつかのケースに分けて見ていきたいと思います。

夫名義の住宅ローン付きのマンションを妻が財産分与を受ける場合

例えば、妻が、夫名義の居住用のマンション(時価:3200万円)を財産分与により取得しますが、マンションには残債3000万円の住宅ローンがある場合に、どのようにすれば妻名義にできるのでしょうか?現実的な視点で検討したいと思います。

住宅ローンも夫婦共通の財産であるため、財産分与の対象です。精算割合が2分の1であるなら、妻が住宅ローン付きでマンションを承継すると妻は夫に100万円を支払うことになります(妻の精算金はマンション3200万円×1/2、住宅ローン3000万円×1/2、妻はマンションもローンも引き継いでいるため100万円多くもらっていることになります)。

数字上はこのように考えられますが、住宅ローンが残り、担保権が付着したマンションの名義を夫から妻に変更することは容易ではありません。

担保権者である銀行の承諾が必要となります。実際には妻が新たに住宅ローンを組み、夫のローンを完済し妻の名義となったマンションに改めて銀行の担保を設定することになります。

このような手続きの根本として、妻の与信、住宅ローンの返済能力があることが必要です。

そこで、ここからは、住宅ローンを返済中のマンションの売却について見ていきたいと思います。

住宅ローンの残債がマンション価格を下回るアンダーローン

住宅ローンの残債がマンションの時価よりも低い場合は、財産分与は非常に容易です。

例えば、住宅ローンの残債が2000万円もありますが、マンションが3200万円で売却できる場合は、住宅ローンを売却代金で完済できます。売却手数料等諸費用を控除した金額を夫婦で分与することができます。

住宅ローンを組む際、主たる債務者は夫ではあるけれども、妻の収入を合算して住宅ローンを組むことがあります。

この場合、収入合算した妻は連帯保証人になっているため、保証人から解放されるためにも、売却することをお勧め致します。

住宅ローンの残債がマンション価格を上回るオーバーローン

住宅ローンの残債が、マンションの売却価格を上回る場合もあります。オーバーローンの状態です。

この場合はマンションを売却しても住宅ローンが残るため、不足額を填補することができなければ、売却できません。

担保を設定している銀行が、無担保状態を許容することは原則ないからです。

この場合は、不足額を夫婦で貯金から補填するか、住み替えローンを組んで補填することになります。

住み替え(買い替え)ローンは、マンションの住宅ローンの残債の補填部分と新居購入費を合わせて借入することです。

このような借り入れは金利が高く、与信の審査も厳しくなります。

共有名義のマンションの財産分与

夫婦それぞれが主たる債務者として、それぞれが相手の保証人として住宅ローンを組むことがあります。ペアーローンと言われたりしています。

この場合、マンションの名義は夫婦で持分割合を決めて共有名義となっています。

夫婦共有マンションの財産分与

マンションを購入する際にペアーローンを組んでローンの負担割合により共有名義の持分割合が決められます。

マンション購入費用の負担割合が、夫:妻=8:2であるならマンションの持分割合は夫:妻=8:2で所有することになります。

財産分与の際、持分割合がそれぞれの精算すべき財産であると思われる方もいらっしゃるかもしれません。

確かに、通常は共有するマンションを売却した際には、共有持分割合でマンションの売却代金を案分することとなります。

しかし、離婚の際による財産分与では、マンションの持分割合とは無関係に、基本的には半分ずつ財産分与手続きをします。

財産分与手続きは、夫婦が協働して形成した財産の精算手続きのため、マンションの持分割合が夫:妻=8:2でも協働してマンションたる財産を形成したものとして夫:妻=1:1で精算することになります。

財産分与を共有名義のまま終了させるリスク

共有のマンションは、共有者全員の意見が一致しなければ売却できません。

離婚後、元夫婦間で意見が一致しない限りマンションを売却し現金化することはできません。

また、何らかの事情により共有者の他方が亡くなると子がいないような場合は、元姻族であった親族とマンションを共有することにもなります。

例えば、元夫の死後は元夫の兄弟姉妹やその子とマンションを共有することもあり得ます。

親しくない者とマンションを共有することの不安定さは想像できるかと思います。

共有マンションを単独名義にする方法

【住宅ローンを完済している場合】

住宅ローンが完済されていると夫婦どちらかの名義にする財産分与は、財産分与の枠内にとどめて贈与とならないように気を付けている限り容易です。

マンションを売却して現金化し財産分与することも、マンションの築年数にもよりますがさらに容易です。

築古のマンションの売却は、マンション買取専門業者に相談することをお勧めします。離婚に伴う財産分与がスムーズに進みます。

ここで気を付けなくてはいけないのは、マンションを共有している場合は、持分所有者は自己の持分のみを第三者に売却することができるので、財産分与がスムーズにできるように離婚給付契約公正証書や財産分与につき私文書にまとめておくことをお勧めします。

夫婦と関係ない全くの第三者とマンションを共有することは、リスクしかありません。マンションの処分には共有者との意見の一致が必要だからです。

自己の持分の利益さえ脅かされる可能性があります。

【住宅ローンがある場合】

住宅ローンが残っている場合は、夫婦の他方に名義を寄せて単有名義にすることは、前述した夫から妻名義にマンションの名義を変更することの困難さ同様に簡単なことではありません。

借入をしている銀行の承諾を得ずにマンションの名義を単有にすると借入銀行から契約違反により期限の利益を喪失し住宅ローンの一括返済を求められる可能性があります。

住宅ローンが残っている場合は、夫婦の預貯金や親族から金銭を借り入れて住宅ローンの完済をするか、マンションの単有名義人となる者が住宅ローンの借り換えをして、既存の住宅ローンを完済して住宅ローンの名義をマンションの単有名義人にすることとなります。

マンションの単有名義人となる者の金融機関に対する与信が必要となります。

離婚時に居住していたマンションに住み続けるリスク

離婚でマンションを売却、手順や住宅ローンなどの注意点-離婚時に居住していたマンションに住み続けるリスク

離婚にあたり、子供の転校や精神面、妻の職場環境を考慮してこれまで住んできたマンションは妻子が住み続けるという選択をすることもあります。

住宅ローンがある場合は、別れた夫がローンを払い続けることを約束することもあるでしょう。

では、このような選択にどのようなリスクがあるのでしょうか?

マンションの売却リスク

住宅ローンがなく、マンションの名義が妻名義に変更されている場合は、問題はありません。妻は売りたいときにマンションを売ることができます。

再婚を機に売却をすることもできます。

問題は住宅ローンが残っており母・子が住んでいるにも関わらず、名義が元夫である場合です。

住宅ローンの借入契約の中で「マンションの名義変更をする際には事前に銀行に連絡を入れて承諾を得ること」の一文があったと思われます。この文言がある為、住宅ローンが残っている手前、妻名義に変更せず、慰謝料代わりにローンは夫が返済することにしているご家族もおります。

この場合は、夫名義である以上、妻は再婚を機にマンションを売却することはできません。

住宅ローンの支払いリスク

夫婦の居住用のマンションを住宅ローンを組んで購入した際に、妻は連帯債務者か連帯保証人になっている場合が多いです。

この場合、夫が主たる債務者として弁済をしていても、夫が弁済を滞れば、妻が連帯債務者又は連帯保証人として住宅ローンを完済する義務があります。

差押えリスク

前述しましたが、住宅ローンの借入契約の中で「マンションの名義変更をする際には事前に銀行に連絡を入れ承諾を得ること」の文言があるため、マンションの名義は妻名義に変更せず、慰謝料代わりにローンは夫が返済することにしているご家族もおります。

夫が住宅ローンの支払いを怠り、マンションが差押えされ競売にかけられた際には妻子は家を失うことになります。

このようなリスクを冒さないためにも、妻の経済的与信は必要となりますが住宅ローンの借り換えで妻単独名義にするか、離婚時にマンションの売却を検討するべきです。

離婚時に居住していたマンションの売却のすすめ

これまで見てきたように住宅ローンが残っているような場合は、マンションを売却する方がスムーズに財産分与ができるかと思われます。

離婚による不動産のタイミングは早いに越したことはありません。

しかし、離婚成立前に売却代金を他方配偶者に渡すと、贈与となり贈与税が発生するので気を付けましょう。

財産分与の請求は、離婚成立後にできるからです。

離婚成立後にマンションを売却し精算される方も多くいらっしゃいますが、その際、夫婦の共有名義の場合、買主への所有権の移転登記の前提として、妻の旧姓への名義変更が必要となることがあります。これにより、買主に前所有者が離婚してマンションを売却したのかもという推測が働きます。

このようなことを考えると、離婚に伴うマンションの売却はマンション専門の仕入れ業者に依頼することも一つかもしれません。また、マンション専門の仕入れ業者が買主となるためマンションの売却もスピーディーに進みます。

仕入業者を活用する大きなメリットはスピードのみならず、宣伝広告をしないので、ご近所に知られずにマンションを売却できる点です。

まとめ

これまで暮らしてきたマンションを手放し生活環境を変えることには抵抗があるかもしれません。ましてや未成年のお子さんがいる場合はなおさらかもしれません。

しかし、離婚によるトラブルは珍しいことではありません。

離婚後も住み慣れているとはいえ住宅ローン付きのマンションに住むことで起こるリスクもご紹介させて頂きました。

離婚に伴う財産分与でのマンションの売却、ローンの完済等お困りごとがありましたら是非専門家に相談してみてください。


司法書士 岡山 司(執筆
司法書士 岡山 司

人生設計や人生の節目をサポートする会員制の「ひだまり俱楽部」を運営。

相続・税務・保険・不動産・FPと「暮らしの安心・安全」を提案し解決するアドバイザー。

近年は、お部屋の整理収納や妊婦さん・高齢者・離婚のカウンセリングなど暮らしにおけるカスタマーサービスの充実を図っております。

認知症対策として注目される「民事信託」をはじめ、多数の「相続・遺言」セミナーの講師として活躍中!