マンション売却時の抵当権抹消登記。申請のタイミングや手続きの流れ
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2023.06.08
この記事では、抵当権の意味や抵当権抹消登記の申請のタイミングや手続きについて紹介していきます。
マンション売却をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- ローン借入先は対象不動産を担保とするために抵当権を設定する
- 抵当権抹消登記には書類とともに登録免許税も必要
- マンション売却では抵当権抹消とともに所有権移転の登記を申請する
- 煩雑な登記申請手続きは司法書士に依頼がベスト
目次
抵当権とは?
マンションを個人で購入するにあたっては、多くの方が住宅ローンを組んで、銀行等の金融機関からお金を借り入れます。
お金を貸し出す金融機関としてはもちろん、そのまま返してもらえないようでは困ります。
そこで、もし返さなかったら建物や土地を取り上げますよ、という形で、不動産を担保として確保するために設定するのが抵当権です。
抵当権抹消登記とは?
抵当権抹消登記とは、抵当権を不動産登記簿抹消するために行う登記です。
登記に関する事務を処理するのは法務局に勤務する登記官で、申請の受理を経て登記を行います。
抵当権抹消登記が必要な理由
売買契約書の契約条項では「売主は、買主に対し、本物件について、所有権等の移転の時期までにその責任と負担において(中略)、抵当権等の担保権、賃借権等の用益権その他名目形式の如何を問わず、買主の完全な所有権等の行使を阻害する一切の負担を除去抹消する」と定めています。
そのため、売主は必ず抵当権を抹消してから、マンションを引き渡します。
(出典:不動産売買契約書(一般社団法人不動産流通経営協会標準書式 一般仲介用・区分所有建物 (敷地権)))
抵当権抹消登記の申請を行うタイミングは?
抵当権抹消登記の申請ができるのは、住宅ローンを完済したタイミングです。
住宅ローンを完済すると、借入先の金融機関から書類(登記原因証明情報、委任状、登記識別情報または登記済権利証)が届きます。それらを含む必要書類を揃え、登記申請を経て抵当権が抹消されます。
マンション売却に関連して抵当権抹消登記の申請を行うタイミングは、多いケースとして以下の2つが挙げられます。
- 住宅ローンを完済したマンションを売却するとき
- マンションの売却代金を充当して住宅ローンを一括返済するとき
一つずつ、詳しく見ていきましょう。
1.住宅ローンを完済したマンションを売却するとき
1つ目は、「既に住宅ローンを完済したマンション」を売却するときです。
マンションを売却しない間は抵当権抹消登記をする必要はありませんでしたが、老人ホームなどに入居できる時期が決まり、マンションを売却して入居費用に充てる、といったケースがあります。
その場合には、住宅ローンを完済したときの借入先金融機関からの書類(登記原因証明情報、委任状、登記識別情報または登記済権利証)を確認します。それらを含む必要書類を揃え、抵当権抹消登記申請を売却決済前に行うこともできます。
また、専門家である司法書士に申請の代行を依頼して、マンション売却の決済時に所有権移転登記申請とともに抵当権抹消登記申請を一緒に行なってもらうこともできます。
2.マンションの売却代金を充当して住宅ローンを一括返済するとき
2つ目は、住み替えなどで「住宅ローンをまだ完済していないマンション」を売却して売却代金を充当し一括返済するときです。
マンション売却にあたってまず借入先の金融機関に「売却代金を充当して住宅ローンを一括返済する」旨を連絡して案内を受け、借入先金融機関から書類(登記原因証明情報、委任状、登記識別情報または登記済権利証)をもらいます。
マンション売却の決済時に、マンションの売却代金を充当して住宅ローンを一括返済し、所有権移転登記申請とともに抵当権抹消登記申請を行います。
下記関連記事に詳細が記されています。ぜひご覧ください。
関連記事:ローン残債があってもマンション売却できる?方法と注意点
ちなみに、住宅ローンの借り換えをするときにも、抵当権抹消登記の申請をおこないます。
抵当権抹消登記の申請手続きの流れ
不動産売却のうちマンションを売却する場合、抵当権抹消登記の申請手続きはどうしたら良いのでしょうか。
申請手続きに必要なものや、手続きの流れを解説いたします。
申請手続きでの必要書類や費用等
必要なものは以下の通りです。
・抵当権抹消登記申請書
・登記原因証明情報(抵当権解除証書・放棄証書)→借入先金融機関から交付される書類
・委任状→借入先金融機関から交付される書類
・借入先金融機関の会社法人等番号(法人番号から一番左の1桁目を除いた番号)
・抵当権者の登記識別情報通知書または登記済権利証→借入先金融機関から交付される書類
・登録免許税(不動産の個数×1,000円)
やり方には自分で行う方法と司法書士に依頼する方法があるので、その内容を確認しておきましょう。
抵当権抹消手続きを自分で行う場合の流れ
抵当権抹消手続きを自分で行う場合には必要な書類を整え、抵当権抹消登記申請書を作成して法務局へ申請をすることになります。
大別して敷地権化されているかいないかで、手続きが異なります。敷地権につきましては、下記をご参照ください。
(出典:法務局|「区分所有建物」、「敷地権」とは、どのようなものですか?」)
敷地権化されていると、下図(登記簿謄本の見本)の赤枠部分の通り【表題部(敷地権の目的である土地の表示)】、【表題部(専有部分の建物の表示)】に専有部分と一体化している土地及びその土地の権利が記載されています。
(出典:法務省|登記簿謄本(様式例:3建物(区分))[PDF])
抵当権抹消登記申請書のフォーマットは法務局の窓口で入手できますが、下記からダウンロードすることもできます。
住宅ローンを一括返済するスケジュールが決まったら、借入先の金融機関に連絡をしましょう。金利の日割り計算などをしてもらい最終的な返済金額が確定します。
あわせて借入先の金融機関から抵当権抹消登記の申請手続きに必要な書類が送られてきます。
書類の内容は、(抵当権解除証書や抵当権放棄証書などの名目で)金融機関が発行する登記原因証明情報と、金融機関からの委任状及び登記識別情報または登記済権利証です。
登記識別情報通知書または登記済権利証とは、所有権移転、所有権保存、抵当権設定等をした時、申請人が名義人となる場合に新たな名義人に対し法務局から通知される、情報の記された書類のことです。紛失しても再発行されず、代わりの方法で申請手続きを行わなくてはならなくなります。失くさないよう大切に保管してください。
以前は、借入先の金融機関の「代表者事項証明書」が抵当権抹消登記申請に必要でしたが、2015年11月に法令が改正され、「代表者事項証明書」の代わりに、会社法人等番号を抵当権抹消登記申請書に記載することで、申請手続きができるようになりました。
会社法人等番号は、インターネットで法人番号を調べることで確認できます。会社等法人番号は12桁の番号で、法人番号13桁の一番左の1桁を除いた番号です。
(出典:国税庁|「法人番号はどのように指定されますか(桁数)。」)
弊社東京テアトル株式会社の法人番号と会社等法人番号を例示致します。
法人番号 | 301000103500 |
会社等法人番号 | 01000103500 |
法人番号は下記サイトでご確認頂けます。
提出する必要があるのは以上の書類ですが、抵当権抹消登記申請書に記入するためにはマンションや土地についての情報が必要になります。
マンション購入時の登記事項証明書(登記簿謄本)がもし手元に無いなら法務局で取得して、家屋番号や地番などがわかるようにしておくと記入に困ることがありません。
そして、登録免許税が費用としてかかるので用意しておきましょう。
抵当権抹消登記の申請に必要な登録免許税は不動産1個について1,000円なので、土地1筆と建物1棟のマンションの場合には合計2,000円となります。収入印紙を購入して登記申請書に貼付することで手続きを進めてもらうことができます。
手続きを司法書士に依頼する場合の流れ
抵当権抹消登記の申請手続きは、専門家である司法書士に依頼して代行してもらうことも可能です。
登記申請を自分で行う際は、登記申請書に間違いがないように記入しなければなりません。
また、記入すべき内容のなかには登記事項証明書(登記簿謄本)などで確認するところもありますが、もし手元にない場合には取り寄せる必要が出てきて、慣れないことが多く大変になりがちです。
書類に何を記入すべきかわからなくても、また不足している書類があっても、責任を持って対応してくれるのが、司法書士に依頼する大きな魅力のひとつです。
依頼するには、まず司法書士事務所に相談に行って抵当権抹消登記の申請手続きをして欲しい旨を伝えましょう。お持ちの書類でこれが必要ですと教えてもらい、持っている書類を渡します。不足している書類の手配は全て司法書士が行ってくれます。
登記申請手続きの代行を依頼するには司法書士報酬と呼ばれる代金の支払いが発生します。
マンションの売却に必要なのは抵当権抹消登記だけではなく、所有権移転登記についても同時に申請手続きを行わなくてはならないことから、労力と費用を天秤にかけると、マンション売却の登記申請手続きを代行してもらう売主は非常に多いです。
司法書士報酬の相場は、抵当権抹消の場合(土地1筆及び建物1棟の抵当権抹消登記手続の代理業務を受任し、登記原因証明情報(解除証書等)の作成及び登記申請の代理をした場合)、平均で約20,000円から50,000円程度で、申し込むときに登録免許税と合わせて司法書士に渡すことになります。
手続きが終わると、司法書士から登記が完了したことを伝える書類が送られてきます。
抵当権抹消に関するよくある疑問
ここからは、マンション売却における抵当権抹消に関するよくある疑問にお答えします。
- 自分で抵当権抹消登記の申請をすることは可能?
- ローン残債が残っていても売却できる?
- 抵当権抹消書類を紛失した場合、再発行はできる?
それぞれの回答を見ていきましょう。
自分で抵当権抹消登記の申請をすることは可能?
金融機関からの抵当権抹消書類を含む必要書類を揃えて、自分で抵当権抹消登記の申請手続きを行うこともできます。
しかしながら、マンション売却の際は所有権移転登記の申請手続き等も同時に行なわなくてはならず、非常に煩雑な手続きとなりますので、司法書士にまとめて依頼して代行してもらうことをおすすめします。
ローン残債が残っていても売却できる?
マンションを売却するときにまだ住宅ローンが残っているとどうなるのかとお悩みの方もいらっしゃるかと思います。
基本的には残債があると抵当権が残っているままなのでマンションを引渡しすることはできませんから、残債を一括返済して、抵当権の抹消書類を金融機関から取得する必要があります。
この抹消書類の取得が見込めれば抵当権の抹消登記が可能なので、売却の相談や査定依頼をする段階や販売活動をしている段階で残債があり、抵当権が設定されている状態でも問題はありません。
また、売却価格から売却にかかる諸経費を引いた手取り金額で残債を完済できれば、金融機関から抵当権の抹消書類を取得できます。
手取り金額が残債を下回ってしまっても、不足額を自己資金で賄うことができれば問題ありませんし、不足額を次のローンに上乗せして借入れすることで完済する方法もあります。
残債がいくらかなのかは、手元にある償還表(返済予定表)で確認できます。手元に償還表が見当たらなければ、金融機関に住宅ローンの残高証明書を発行してもらいます。
下記関連記事に詳細が記されていますので、是非ご参照ください。
関連記事:ローン残債があってもマンション売却できる?方法と注意点
抵当権抹消書類を紛失した場合、再発行はできる?
金融機関から抵当権抹消書類としてまとめて送付されてきた書類には、再発行できる書類とできない書類があります。
抵当権解除証書や委任状については、再発行の申請書を提出することで用意してもらえます。
しかし、登記識別情報通知書(登記済権利証)については再発行してもらうことはできません。この場合にも手続きを進められないわけではなく、事前通知制度等を利用して抵当権抹消登記の申請手続きを行うことになります。
(出典:法務省|「新不動産登記法Q&A Q22 登記識別情報を亡失した場合など登記識別情報を提供することができない場合は,どうしたらいいのですか。)
この記事のまとめ
住宅ローンを利用してマンションを購入した場合、完済するまでは抵当権が設定されていますので、マンション売却の際は抵当権を抹消して買主に引き渡します。
住宅ローンを一括返済するスケジュールが決まったら、借入先の金融機関に連絡をしましょう。
下記関連記事「専門家のご紹介」では、不動産の登記に関して安心してお任せできる司法書士の先生をご紹介しております。ぜひご覧ください。
お問い合わせ先:マンション売却相談センター ☎️0120−900−881
この記事のおさらい
最後に、この記事でご紹介したマンション売却における抵当権抹消について、内容をまとめていきます。
抵当権とは?
抵当権とは、住宅ローンで不動産を購入するときに、借入先の金融機関がその不動産を担保として設定する権利です。詳細はこちら
抵当権抹消登記とは?
抵当権抹消登記とは、抵当権を不動産登記簿抹消するために行う登記のことです。詳細はこちら
マンション売却で抵当権抹消登記の申請をするのはいつ?
マンション売却に関連した2つのケースがあります。
1つ目は、「既に住宅ローンを完済したマンション」を売却するときです。2つ目は、「住み替えなどで住宅ローンをまだ完済していないマンションを売却して売却代金を充当し、一括返済するときです。詳細はこちら
抵当権抹消登記の申請は自分でできる?
必要書類を揃えて自分で申請手続きを行うこともできますが、マンション売却の際は所有権移転登記の申請手続き等も同時に行う必要もあり非常に煩雑な作業のため、司法書士にまとめて代行依頼することをおすすめします。詳細はこちら
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