老人ホームの種類と特徴、費用相場や選び方をプロが解説
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2023.04.11
この記事では、老人ホームなどの種類と特徴、施設ごとの費用相場、選び方などについてご説明いたします。
老人ホームは、わかり易く言うと「公立」と「私立」の老人ホームがあります。
公立の老人ホームは、費用が安く、その代わりに家族の負担が多いのが特徴です。
私立の老人ホームは、費用が高く、その代わりにお金さえ払えば、多くのことにホーム側で対応してくれます。いわゆる「サービス業」としての思想です。
しかし、これはあくまでも建前の話です。現状はというと・・・。後ほど詳しく説明をしていきます。
(執筆) 小嶋勝利(こじまかつとし)1965年9月生まれ ㈱ASFON TRUST NETWORK 常務取締役 主な著書に「親を大切に考える子世代の為の老人ホームのお金と探し方」日経BP社他多数。 |
目次
老人ホームの種類
老人ホームなどの種類には、大きく分けて「公立=公的」と「私立=民間」があります。
老人ホームの種類
公立の老人ホームは、特別養護老人ホームや老人保健施設(老健)です。
私立の老人ホームは、有料老人ホームなどです。学校を考えてみるとわかりやすいと思います。
老人ホームなどの運営は民間と公的
民間企業が運営する老人施設だけでも、下記の3つが混在し
- 介護付き有料老人ホーム
- 住宅型有料老人ホーム
- サービス付き高齢者向け賃貸住宅
さらに、昔からあった介護保険3施設である
- 特別養護老人ホーム
- 老人保健施設
- 療養型病床群(老人病院)
さらには、軽費老人ホーム、グループホームという介護系の類似施設も加わり、居住系の介護施設は様々な事業者の都合で大林立して今に至っているのです。
老人ホームの費用
老人ホームなどの費用相場一覧
現在、運用されている主な介護施設、老人ホームとそれぞれの初期費用、月額費用の相場をご紹介します。
老人ホーム名称 | 運営 | 初期 | 月額 |
特別養護老人ホーム | 公立 | 無し | 6~18 |
老人保健施設 | 公立 | 無し | 9~15 |
グループホーム | 公/私 | 50 | 10~20 |
介護付き有料老人ホーム | 私立 | 0~数億 | 10~80 |
住宅型有料老人ホーム | 私立 | 0~数億 | 10~80 |
サービス付き高齢者住宅 | 私立 | 30~100 | 10~30 |
有料老人ホームの費用の平均
私立の有料老人ホームの場合、地域にもよりますが、毎月15万円から20万円程度の負担ができなければ、探すことは難しいと判断するべきです。
ただし、要介護認定が3以上の重度な老人の場合は、ホームとの交渉により利用料金の減額は可能です。
老人ホーム費用を年金で賄う
毎月15万円から20万円程度の負担には、ホーム側に支払う毎月の利用料金と介護保険の自己負担金などが入っています。
平たく言うと、年金受給が年間200万円程度はないと、私立の老人ホームでの生活継続は難しいということになります。
次項からそれぞれの老人ホームなどの特徴、初期費用、月額費用、サービス内容、入居条件などの詳細を解説していきます。
「どうせどこの老人ホームも一緒だ」「時間がないのでポイントだけ知りたい」という方には、これだけ知っていれば十分という視点でわかりやすく介護施設を説明していきます。
関連記事:老人ホームはいくらかかる?月々の費用や入居金などをプロが解説
特別養護老人ホーム
特別養護老人ホームとは
特別養護老人ホームは、 重症な介護状態にある高齢者の介護施設です。通称:特養と呼ばれています。介護付き有料老人ホームとおおむね同じ介護方式です。
経営母体は、地方公共団体や社会福祉法人など公益性が高い組織が運営しています。
なお、本来は、低所得者など高齢者社会保障のセーフティーネットであるはずですが、最近では、どういうわけかユニットケア方式の導入など、高級老人ホーム路線に変更され、低所得高齢者は、入居を拒絶されるケースも出てきています。
ちなみに、待機者が多いと言われている特養は、料金の安い多床室(相部屋)の特養に限った話であり、ユニットケア方式の特養は、かなりの空室があるのが現状です。
ちなみに、これらのことをわかりにくくしている点は、同一建物内にユニットケア方式と多床室方式とが混在しているケースがある為、見る部分を変えると真逆の実態になってしまうところです。
特別養護老人ホームの費用
・初期費用は無し
・月額費用は60,000円から180,000円程度
特別養護老人ホームの特徴
・社会福祉法人が運営
・多床室ホーム(低価格)では待機者多し
・所得状況によって料金の免減あり
・有料老人ホームよりも料金は安い施設介護
特別養護老人ホームの入居条件
・65歳以上で要介護3以上(ただし、例外規定あり)
老人保健施設(老健)
介護老人保健施設とは
介護老人保健施設は、要介護状態にある老人の為の介護施設で、通称:老健と呼ばれています。
また、医療法人が運営している介護施設として有名です。施設長は医師で、常時施設内に医師が常駐しています。
また、他の介護施設と違い、看護師も多く配置されています。こう言うと、医療対応に強く、医療処置の多い要介護高齢者が向いているように思われますが、多くの老健では、医療ニーズの高い高齢者の受け入れには消極的です。
また、老健は数か月間で退所するイメージですが、これは、病院と自宅との間にある中間施設として、在宅復帰を目指すことを使命にしていることによりますが、諸事情により、多くの例外があるのも事実です。
老人保健施設の費用
・初期費用は無し
・月額費用は90,000円から150,000円程度
老人保健施設の特徴
・医療法人が運営
・病院から自宅に戻る為のリハビリに注力した中間施設
老人保健施設の入居条件
・65歳以上で要介護1以上
グループホーム
グループホームとは
グループホームは、認知症高齢者に特化した居住系介護施設です。
介護職員の支援の下、複数の入居者と共に、食事、掃除、洗濯などの日常生活について、自分たちを主語にして生活をする施設を指します。
ただし、近年においては、国の方針も変わり、看取り加算などが新設され、共同生活に寄与できない寝たきりの高齢者も多くなり、“ミニ特養”などと揶揄されています。
グループホームの費用
・初期費用は、500,000円程度の保証金
・月額費用は100,000円から200,000円程度
グループホームの特徴
・社会福祉法人、株式会社などが運営
・共同生活が可能な認知症高齢者の為の小規模な介護施設
グループホームの入居条件
・65歳以上で認知症、一定地域内に居住している高齢者
・共同生活が可能な認知症高齢者
・65歳以下の若年性認知症認定患者
介護付き有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームとは
本来の介護付き有料老人ホームの役割は、要介護高齢者の為の入居施設ですが、現状、自立の高齢者から要介護高齢者まで様々な高齢者が入居しています。
介護形態は、特別養護老人ホームと概ね同じです。つまり、要介護認定の高齢者が入居すると、自動的に介護サービスが付いてきます。
特別養護老人ホームとの違いは、入居者の資産状況や収入状況による月額利用料の減額制度が介護付き有料老人ホームにはありません。また、経営は、民間の営利企業が運営しています。
介護付き有料老人ホームの費用
・初期費用は、入居金として0円から数億円程度まで
・月額費用は100,000円から800,000円程度まで
介護付き有料老人ホームの特徴
・株式会社など民間企業が運営
・全室個室
・介護保険は、特定施設入居者生活介護にて対応
介護付き有料老人ホームの入居条件
・60歳以上の自立または要介護高齢者。ただし、例外もあり
介護付き有料老人ホームの詳細を解説してきました。有料老人ホームの月々の費用や入居金などを更に詳しくは下記関連記事をご覧ください。
関連記事:老人ホームはいくらかかる?月々の費用や入居金などをプロが解説
住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは
本来の住宅型有料老人ホームは、自立から身も周りのことは自分で何とかできる軽度な介護状態にある高齢者向けの老人ホームです。しかし、現状は、自立から重症者まで様々です。
住宅型有料老人ホームが介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホームと圧倒的に違う点は介護方式です。
入居者の生活管理は、老人ホームの運営会社が直接担当しますが、介護サービスは、外部(その地域)の介護事業者と入居者とが、個別に契約をするのが一般的です。
つまり、入居しても自動的に介護サービスはついていません。ただし、多くのケースでは、老人ホーム運営会社が、別途介護事業所を保有し、入居者に必要な介護事業サービスを提供している為、実態は、何ら介護付き有料老人ホームと変わらないケースも散見されています。
住宅型有料老人ホームの費用
・初期費用は、入居金として0円から数億円程度まで
・月額費用は100,000円から800,000円程度まで
住宅型有料老人ホームの特徴
・株式会社など民間企業が運営
・全室個室
・介護保険は、訪問介護、通所介護など在宅介護サービスで対応
住宅型有料老人ホームの入居条件
・60歳以上の自立または要介護高齢者。ただし、例外もあり
サービス付き高齢者向け住宅
サービス付き高齢者向け住宅とは
サービス付き高齢者向け住宅は、 基本、元気な高齢者の為の賃貸住宅です。
介護方式は、住宅型有料老人ホームとおおむね同じです。しかしながら、実際の運用は、自立から看取り期の重症な高齢者まで様々な高齢者が暮らしています。
ちなみに、サービス付き高齢者向け賃貸住宅が多く供給された理由は、高齢者側の都合ではなく、国の方針でサービス付き高齢者向け賃貸住宅を建設すると、建設主に対し建設費の10%程度の補助金が支給されたからです。この金額は、建設費の消費税分に相当します。つまり、他の賃貸物件を建設するよりも有利な商品という理由で、建設戸数が増えただけです。
サービス付き高齢者向け住宅の費用
・初期費用は、敷金として家賃の2ヶ月から3ヶ月分程度
・月額費用は100,000円から300,000円程度
サービス付き高齢者向け住宅の特徴
・株式会社など民間企業が運営
・全室個室
・介護保険は、訪問介護、通所介護など在宅介護サービスで対応
サービス付き高齢者向け住宅の入居条件
・60歳以上の高齢者
・基準を満たせば、家族の同居も可能
現在、運用されている主な介護施設、老人ホームをご紹介してきました。引き続きその他の介護施設などをご紹介します。
健康型有料老人ホーム
健康型有料老人ホームは、 元気な高齢者向けの老人ホームです。
コンシェルジュサービスや天然温泉、レストランなど高級ホテルと同じようなサービスが付いています。多くは、有名リゾート地に立地し、介護サービスが必要になった場合、原則、契約を解除し退去することが前提の老人ホームです。
介護医療院(介護療養型医療施設)
介護医療院は、重症な要介護高齢者の介護施設です。
多くは、完治する見込みがなく、しかし、常時、医療的処置や管理が必要な高齢者の為の医療処置(医療ケア)が付いた介護施設です。
ケアハウス
ケアハウスは、低所得で元気な自立の高齢者の住宅です。
多くの場合、特別養護老人ホームなど介護保険施設に併設されています。介護サービスは付帯していないため、介護が必要な状態になった場合は、基本、他の介護施設などに転居しなければなりません。
シニア向け分譲マンション
シニア向け分譲マンションは、元気な高齢者の為の分譲住宅です。
前出の健康型有料老人ホームとスキームは似ていますが、借りたり、利用したりする権利ではなく、所有権なので不要になった場合、売却して換金することが可能です。
多くは、高級ホテルのようなサービスが付随しています。関西圏では、昔から一定数の供給がありましたが、関東圏では、ここ数年、ひそかなブームになっています。
ざっくり言うと、一定の年齢にならなければ入居ができない分譲マンションという理解でよいと思います。介護方式は、住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け賃貸住宅とおおむね同じです。
老人ホームなどの種類や費用などについて解説をしてきました。
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老人ホームの実態・現状をプロが解説
老人ホームのことを理解する前に考えなくてはならない大切なこととは何か?
老人ホームの実態や現状についてご説明します。ここでは、老人ホームの全容をつかんでください。
老人ホームと本人の同意
現状、多くの老人ホームの実態は、”姥捨山”です。状況を冷静に考えた場合、これは揺るぎない真実です。
理由の一つは、多くの老人ホームは、入居者本人(老人)が探しているのではなく、子世代など家族が探しています。老人ホームと言いながら、老人本人は蚊帳の外なのです。
その昔は、行政措置でボケ老人(認知症老人)が施設に入所させられました。
そして、介護保険法が施行された今は、老人は家族の措置で老人ホームに入居させられています。
私は、ある識者の次の発言が、いつまでも頭を離れません。「今の時代、本人の同意・承諾なく、強制的に身柄を拘束できるのは、精神病院と老人ホームだけだ」と。私も次のような現実をたくさん見てきました。
老人ホームへ入居、本人の同意なし
私が老人ホームで介護職員をしていた時の話です。入居日が決まったので、私が自動車で本人を自宅に迎えに行くと、本人は私に向かって次のように言いました。「なぜ、自分で買った家を追い出されなければならないのか!」と。
当時の私は、この質問を何とも思いませんでした。理由は、私にとって嫌がる老人をホームに入居させることは、まさに、日常の景色だったからです。
つまり、自力で生活をすることができない(周囲に迷惑をかける)要介護高齢者は、在宅にいることは悪いこと。だから老人ホームに入居することが正しい在り方だと。これが当時の私たちの考え方でした。
したがって、何らかの理由で自力生活がままならなくなった場合は、病院か老人ホームを含む介護施設に移るのは当たり前という感じでした。
もちろん、今も基本的にはこの考え方は変わりませんが、当時と比べると、今ははるかに在宅介護サービスが充実している為、在宅生活の可能性は広がっていると思います。
老人ホームの選び方
また、誰でもわかるよい老人ホームの見分け方について、そのさわりだけ記しておきます。詳細は、後述しますのでご確認ください。
よい老人ホームとは、”空室がない”ホームを言います。空室が多いホームは、悪いホーム、よくないホーム、という理解でおおむねよいと思います。
もし、皆さんが老人ホームを検討しているのであれば、満室運営をしている老人ホームを探してください。
老人ホームと介護保険
介護保険制度が始まる前の老人ホームの歴史と始まった2000年以降の老人ホームの実態や推移などについて解説していきます。
介護保険制度前の老人ホームの歴史
まず初めに、老人ホームの歴史について触れておきたいと思います。2000年に介護保険制度が始まる前までは、主に2つの老人ホームがありました。
一つは、様々な事情で在宅生活の継続が困難な高齢者が行政措置で入所する公的な老人ホーム。多くは「特別養護老人ホーム」と言われている施設です。
もう一つは、富裕層高齢者が仕事の第一線を退いた後、悠々自適な生活をするための場所として、民間企業が運営する有料老人ホームです。
前者は、入所する高齢者の意思は無視され、半ば強制的に入所させられます。かつては社会的入所などと言われていました。平たく言うと、自宅にいると周りが迷惑するので、山奥の老人ホームに収容されるイメージです。
後者は、水戸黄門のようなご隠居生活の高齢者用の別荘のようなものでした。
老人ホームへ強制入所
昭和の時代は、近所でこんな会話をよく耳にしました。私も大人がこのような会話をしていたことを記憶しています。
「最近、田中さんのおばあちゃんを見かけないけど、どうしたんだろうね?」
「あなた知らないの?先週、山奥にある養老院に入ったってお嫁さんが言っていたよ。やっと自由になったって、お嫁さん喜んでいたよ」。
「そうよね。あのお嫁さん、10年以上、ボケたおばあちゃんの面倒をよく見ていたから」。
また、こんな話もありました。
高級老人ホーム
「A屋さんの会長さん、老人ホームに入居したんだって。何でも熱海にある温泉付きのホームで、奥さんと2人で入居するのに何千万もかかったんですって」。
「すごいね。でもあそこは、跡取りがしっかりしているから、会長さんも安心でいいわね」。
という会話です。
これが2000年前までのいわゆる老人ホームに対する象徴的な会話です。
介護保険制度開始、介護付き有料老人ホームが主流に
そして、2000年に介護保険制度が始まりました。介護保険制度が始まると、介護保険制度を活用した要介護老人をメインターゲットにした老人ホーム、いわゆる介護付き有料老人ホームが発達していきます。
介護付き有料老人ホームは、要介護認定を受けている高齢者さえ入居していれば、国から介護保険報酬を受け取れる仕組み(特別養護老人ホームと同じ仕組み)であるため、多くの民間企業が介護付き有料老人ホームに参入し、要介護高齢者の獲得に精をだします。
まさに、要介護高齢者は、”お金”です。その結果、介護付き有料老人ホームは、あっという間に日本社会に大量供給されたのです。
困ったのは国です。このままでは、介護保険報酬が青天井で増えていきます。そこで、国は総量規制を開始します。今まで無条件で建設を認めてきた介護付き有料老人ホームに対し、地域の事情に合わせ、開設の有無を国や地方自治体の都合を考えた定員の調整を開始したのです。
これにより、事実上、介護付き有料老人ホームの新規開設は不可能になりました。私の記憶だと、都内で最後の最後まで開設が可能だった地域は、世田谷区だったと記憶しています。
現状は老人ホームといえば住宅型有料老人ホーム
介護付き有料老人ホームを新規に開設できなくなった事業者は、しかたなく、総量規制の対象外である”住宅型有料老人ホーム”の開設に舵を切りました。
多くの介護付き有料老人ホームの事業者は、住宅型有料老人ホームの開設にシフトし、介護付き有料老人ホームの代替品として発展を続けていきます。
その結果、今では後発だった住宅型有料老人ホームの方が介護付き有料老人ホームよりも多く供給されています。つまり、勢力的に言えば、老人ホームと言えば”住宅型有料老人ホーム”ということになるのです。
サービス付き高齢者向け住宅が誕生
さらに、サービス付き高齢者向け賃貸住宅という新しいカテゴリーが誕生します。
それまでの老人ホームは厚労省の管轄でしたが、これは国交省の管轄の老人ホームです。
建前は、施設ではなく住宅、という説明でしたが、実際には、住宅型有料老人ホームと何ら変わることはなく、入居者や事業者が混乱しただけでした。
この高齢者向け賃貸住宅の大きなトピックスは、建設費の一部を補助金として建て主に支給することなので、建設会社は土地の有効利用を考えている地主などに盛んに提案をしました。もちろん、そこには、入居者のことなど誰も考えていなかったと思います。
老人ホームと介護施設の違いをプロが解説
分かりにくい老人ホームと介護施設の違いや役割などについて解説をしていきます。
老人ホームは種類や違いが分かりにくい
バターとマーガリン、牛乳と豆乳のイメージです。
次の2つに着目して理解をしていきます。一つは、老人ホームは、その進化の過程で、常に代替え品の追加と言う形で発展しました。
バターの代用品として登場したマーガリンと同じですね。例えば、特養ホームは国の負担が重いから民間を誘導して、有料老人ホームを増やそうと言うことにした結果、特別養護老人ホームの代替品として介護付き有料老人ホームが登場しました。
もう一つは、多くの人が介護保険制度とサービス産業の2つ理解が不十分な中で、建前だけのホスピタリティを無責任に拡散したことで、過剰な支援を求める利用者とこの求めに他社との差別化のために応えようとする事業者とが増えたことで、結果、どこも似たような運営になってしまいました。
つまり、老人ホーム側が売上や利益を追求するということは、利用者のニーズを研究するということであり、その利用者ニーズの多くは、何度も言っていますが”困った親(問題行動や身体不自由な親)を預かって欲しい、しかも、なるべく安価で”ということなので、そのニーズを追求した結果、当然、どこのホームも同じようになってしまったのです。
とはいえ、現状を嘆いていても仕方ありません。この2つの点を念頭に置きながら説明していきます。
老人ホームと介護施設の役割の違い
一口に「老人ホーム」「介護施設」と言っても、多くの形態が存在します。
各老人ホームの個別詳細については、前述してきましたが 、ここでは、なるべくわかりやすく「老人ホーム」「介護施設」の説明をしていきたいと思います。
まず、役割を持っているにもかかわらず、その役割を全うしていない点について説明をしてきます。わかりやすい代表例が老健ではないでしょうか。
「介護老人保健施設(通称:老健)」と言われる形態があります。「老健」の一般的な役割は、在宅復帰を目指すための一時的な介護施設です。
したがって、本来老健に求められている「役割」は、病院を退院する要介護状態の老人が、今の状態で自宅に帰ることには多少無理がある為、まずは老健でリハビリを行った上で自宅に帰るべき、という評価を受けたケースで入所する施設だということです。
老人ホームと介護施設の実態と分かりにくさ
しかし、実際はどうかというと、こんな話が巷にはたくさんあふれています。「私の母親は、もう何年も老健に入所している」とか「死ぬまで老健にいることができる」とかという話です。この時点で、この老健は、老健の本来の役割を無視しています。
本来、これらのケースは、特別養護老人ホームや有料老人ホームに入居することになるはずだからです。
それではなぜ、このような運用になるのでしょうか?その理由は、前にも記しましたが、制度がそれを許しているのと、地域住民のニーズと老健の役割が、必ずしも一致していないからです。
老健によっては、本来の役割を全うしていると入所者は集まらず、経営が成り立たなくなります。
例えば、地域住民から、認知症で徘徊をする親の介護に困って預かってくれるところを探していると、特別養護老人ホームは要介護3以上でなければ原則入居は不可、近所の有料老人ホームは、利用料金が高くて手が出せないということで、地域の老健に相談をしたとします。はたして、地域の老健は、この相談を断ることはできるのでしょうか?多くの老健では、このような相談は受けることになります。
理由は、地域住民が困っているからです。さらに言うと、本来の役割に徹して入居者を選んでいて、果たして100床の定員数を稼働させることができるのでしょうか?現実は無理です。それなら、空いているベッドを地域住民のリクエストで利用することは老健としては正義ですね。
このようなやり取りの日常の中で、当初、担っていた役割は、徐々に薄れていくことになります。地域の実態と事務方の机上の空論との大差が、老人ホームや介護事業のわかりにくさを助長しているのです。
老人ホームの分かりやすい選び方
老人ホームのプロが、 自分にあった老人ホームのわかりやすい選び方、探し方を解説していきます。
公立・私立老人ホームのそれぞれ違いを理解する
冒頭で申し上げた「公立」「私立」の学校の話を例に説明をしていきます。多少乱暴な解釈にはなりますが、一つの見識だと考えます。
老人ホーム選びは、子供や孫の高校や大学選びと似ています。なお、高校進学の場合は、選択肢を広げる為には偏差値がものをいいますが、老人ホームの選びの場合は、選択肢を広げる為には経済力がものをいいます。
東京都以外の場合、多くの人は公立高校に進学を希望するはずです。理由は、魅力的な私立高校が地域に少ないこともありますが、何より学費が安く、名門と呼ばれる公立高校が多いからです。
つまり、地方の場合、私立高校は何らか理由で公立高校に入学出来なかった学生の代替えになっているケースが多いはずです。老人ホーム選びも同じです。まずは、比較的料金が安いとされる特別養護老人ホームなど公立的な老人ホームへの入居を考えるのが普通だと思います。そして、公立的な老人ホームに入居できない場合は、私立の老人ホームにも範囲を広げて探すことになります。
ここで注意事項があります。それは、どうしても、公立的な老人ホームに向かない高齢者が存在しているという点です。
特別養護老人ホームの生活に向かない高齢者
公立の老人ホームに向かない高齢者とは
例えば、こだわりや主義主張が強く、集団生活に向いていない高齢者、決まりやルールを守ることが得意ではない高齢者などがそれです。
このような高齢者は、特別養護老人ホームなどの公立的な老人ホームには向きません。理由は、公立的な老人ホームは、決められた人員と予算の中で、決められたことを決められ分だけの介護支援をしていく必要があるからです。
高校進学と同じです。進路指導においても、個性的な学生や一風変わった学生には、多くの教師が私立高校への進学を進めるのではないでしょうか。
かく言う私も、担任の先生から「公立は向いていないので、私立のA高校が良いのではないか」と勧められた記憶があります。
ちなみに、東京都や東京圏は、個性豊かな多くの私立高校があります。したがって、多くの学生が、公立ではなく私立高校に進んでいるようです。
これまた、老人ホームも同じです。東京都や東京圏では、たくさんの私立の老人ホームがあります。したがって、最初から特別養護老人ホームではなく、民間の有料老人ホームを探す方も少なくありません。
プロが伝授、老人ホームの探し方・選び方
老人ホームの探し方・ 選び方の極意とは?わかりにくい老人ホームをわかりやすくする方法です。
老人ホーム探し・選びの極意は次の3つです。
- 3ホームから5ホームまでで比較表を自分で作成すること。
- 必ず、自分の目で現地に見学に行くこと。
- 入居して良かったと思っている入居者から話を聞くこと。
この3つを実践すれば失敗を防ぐことができます。
1.比較表を作成する。
気になるホームを3ホーム程度の抽出し、検討するために比較整理表を作成します。比較する項目は、各自により、様々だと思います。
例えば、経済性がなにより重要な方は、入居金、利用料金、初期償却、償却期間、などのお金にスポットを当てて比較表を作成するのも良いと思います。お金の注意事項は、あるサービスが有償のホームと月額利用料金に含まれているホームとがある場合、どちらが得なのか?ということがわかりにくい点です。その場合は、ホーム側に理解できるまで確認することが重要です。このやり取りを通して、ホームの実態鵜を理解することができるのです。
2.見学に必ず行く。
「見ずてん」という言葉があります。これは、現場を見ないで決めてしまう愚かな行動を言います。必ず、複数のホームに見学に行くようにしましょう。
なお、見学方法ですが、突然、朝、昼、夕などの食事時に見学すると、当該ホームの実態がわかります。
がしかし、多くの老人ホームでは、アポなしの訪問はNGです。特に、昨今は、コロナウイルス感染リスクがある為、間違いなくNGだと思います。ダメもとで試してもいいかもしれません。
ちなみに、なぜ、食事時かというと、ホームにとって食事時間が、一番忙しいからです。一番忙しい時にこそ、当該ホームの本当の姿を見ることができます。
ついでに言っておくと、突然訪問をしたとき、玄関のカギが常時施錠されているホームと解放されているホームとがあります。当然、解放されているホームの方が、介護の質は高いホームということになります。見学時に、確認してみてはいかがでしょうか?
3.入居して良かったと考えている入居者の話を聞く。
一番重要な部分です。高校進学と違い、老人ホームの場合、多くの人は、老人ホーム入居の未経験者です。つまり、老人ホームの検討をしている人の多くは、老人ホームのことなど何も知らない人たちばかり、ということになります。
入居したこともない人たちから話を聞いたところで、一体何がわかるというのでしょうか?素朴な疑問が湧きあがります。
例えば、皆さんは子供の頃、こんなことを言われたことはありませんか?将来、歌手になりたいというと、親や学校の先生からは、そんな夢みたいなことを言っている暇があるなら勉強しなさいと。
考えてください。親や学校の先生は、歌手になったことがありますか?ないはずです。なったことがない人に、一体何がわかるというのでしょうか?
正しい行動は、歌手になって成功した人に、直接話を聞いて自分も歌手になれるかどうかを考えることですね。だから、老人ホームに入居をしていない人や、入居をしても失敗している人の話を聞いても意味はないのです。必ず、実際に老人ホームに入居して、満足している入居者の話を聞くべきなのです。
以下のような老人ホーム探し・選びの手助けをしてくれる便利なサービスもあります。
老人ホーム・介護施設の検索は施設入居特化のクチコミ | スマートシニア
「スマートシニア」は、あなたの“想い”に寄り添うコンシェルジュサービス。想いと希望のライフスタイルを選ぶと、自分に合った「施設選びのポイント」を、かんたん3分で診断できます。
「みんかい」は、有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅・シニア住宅など民間介護施設探しを無料で相談できます。
良い老人ホーム、おすすめは満室の施設
良い老人ホーム、おすすめの老人ホームの見分け方をご紹介します。
良い老人ホーム
良いホーム、悪いホームとは。
先に結論です。良いホームの簡単な見分け方は、満室かどうかです。
つまり、空室が多いホームは、悪いホームという評価でよいと思います。理由は、空室が多いホームは、介護力が弱いと判断することができるからです。
老人ホームに入れない理由
少し、説明を加えていきます。老人ホームの場合、単に入居を希望するだけでは入居には至りません。
多くのホームでは、入居判定会などを実施し、入居希望者の入居を認めるかどうかを現場職員の合議で決めます。そして、これまた多くホームでは、対応が難しい(面倒な)入居希望者は「断る」ということをよくやります。したがって、介護力が弱いホームは、断る可能性も多くなるため、自動的に空室も増えます。
例えば、認知症で徘徊など問題行動がある要介護高齢者が入居を希望した場合、空室の多いAホームは、現場職員の能力が低い為、対応ができないという結論になり、今回の入居は見送ろう、という回答になります。
満室の老人ホームがおすすめの理由
逆に、常時、満室運営をしているBホームは、丁度、空室が1室発生した。問題行動はあると言うが、うちの職員はレベルが高い為、「喜んで」「望むところだ」と言って受け入れます。だから、空室が発生することはありません。
ちなみに、老人ホームの場合、空室が多ければ多いほど、経営へのダメージは大きく、逆に、介護現場は仕事が楽になります。つまり、現場職員の立場に立って考えた場合、空室は大歓迎な現象ということになるのです。
もうお分かりですね。この理屈が。空室が多くなればなるほど介護職員のスキルは下がります。逆に、難しい入居者を積極的に受け入れているホームは、おのずと、介護対応スキルが上がり、介護職員のレベルも高くなるようになっているのです。常時満室のホームを見つけることが、良いホーム選びの近道です。
老人ホームの種類と特徴、費用相場や選び方をプロが解説まとめ
最後に、この記事で紹介した老人ホームの種類や特徴、施設ごとの費用の目安、良い老人ホームの探し方・選び方をまとめていいきます。
老人ホームなどの種類は?
老人ホームには、大きく分けて公的施設と民間の施設があります。様々な事業者の都合で居住系の介護施設は、公立・私立入り乱れ、林立しています。
老人ホームなどの種類の詳しくはこちらをご覧ください。
老人ホームなどの費用は?
地域にもよりますが、有料老人ホームの平均的な費用は、毎月15万円から20万円程度(施設利用料金と介護費用)です。
平たく言うと200万円程度の年金受給がないと民間施設での生活は難しいということになります。
老人ホームの費用の詳しくはこちらをご覧ください。
老人ホームの探し方・選び方を教えて?
老人ホーム探し方・選び方の極意は下記の3つです。
- 3ホームから5ホームまでで比較表を自分で作成すること。
- 必ず、自分の目で現地に見学に行くこと。
- 入居して良かったと思っている入居者から話を聞くこと。
老人ホーム探し方・選び方の極意の詳細はこちらをご覧ください。
良い老人ホーム、おすすめ施設の見分け方は?
結論、良い老人ホームの簡単な見分け方は、満室かどうかです。
何故、満室の老人ホームがおすすめの施設なのか、詳しくはこちらをご覧ください。
老人ホームの実態、現状は?
老人ホームのことを理解する前に考えなくてはならない大切なこととは何か?
現状、多くの老人ホームの実態は、”姥捨山”です。状況を冷静に考えた場合、これは揺るぎない真実です。
介護度にもよりますが、昔と比べ在宅介護サービス、デイサービスなどが充実している為、在宅生活の可能性は広がっています。
介護付有料老人ホームの実態や現状を理解して老人ホームか在宅かなど選択をして欲しいと思います。
老人ホームの実態や現状の詳しくはこちらをご覧ください。
(執筆) 小嶋勝利(こじまかつとし)。1965年9月生まれ。 株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役 主な著書に「親を大切に考える子世代の為の老人ホームのお金と探し方」日経BP社他多数。 |