マンションの任意売却、競売との違いやメリット・デメリット

カテゴリ:マンション売却のお金
投稿日:2021.06.08

マンションの任意売却、競売との違いやメリット・デメリット

住宅金融支援機構など金融機関を活用して住宅ローンを組んでマンションを購入する方が大多数だと思います。

ある月に限って返済口座の残高不足によりうっかり返済を忘れてしまい、金融機関からの連絡により慌ててすぐに支払えば信用情報への影響もなく問題はないでしょう。

他方、住宅ローンを組んだ方の中には、病気、介護等家庭の事情による収入の激減、2020年のコロナの影響等社会情勢による収入の変化によって住宅ローンの支払いが継続的に厳しく、住宅ローンの滞納に追い込まれるご家族もおられると思います。

2~6ケ月ほどローンを滞納してしまうと状況は深刻です。

何ら対策を取らなかった場合には、保証会社や債権回収会社によって競売の手続きが進んでいくこともあります。

競売は、債権者側からしても時間や手間がかかるうえに、ローンの回収額も低くなることが多いため、競売によらずにマンションを処分することにより得た売却代金から債権を回収する任意売却を活用することが実務上はよくあります。

ここでは思いがけない事情により住宅ローンを滞納し、金融機関へ返済の相談へ行ったものの返済が困難な場合に、所有するマンションを強制的に競売にかけられずに自己の意思で売却する任意売却の、競売との違いやメリット・デメリット・注意点のお話をしていきたいと思います。

マンションの任意売却とは何か?競売との違い

マンションの任意売却とは?

住宅ローンを滞納したときの任意売却とは、期限の利益を喪失して住宅ローンの借入銀行から債権回収会社や保証会社に債権が移ったときに、一括返済や競売ではなく、住宅ローンの債務者兼担保提供者の売却意思と保証会社や債権回収会社の承諾を得て売却することを言います。

ここで、期限の利益の喪失とは何なのでしょうか?

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通常、ローンは期限の猶予をもらい割賦払いで返済していきますが、住宅ローンを借入する際に、契約書に署名・捺印をした条項に反する事由が生じると一括返済を迫られることとなります。

この一括返済を請求されることを期限の利益の喪失といいます。

期限の利益が喪失される事由は幾つかありますが、債権者たる金融機関の信用を失う事由といえます。

住宅ローンを借りている者である債務者が、破産・民事再生手続きなど法的債務整理に関する申立てをしたときや住宅ローンの滞納から6ケ月を超えてしまい保証会社や債権回収会社に住宅ローンの債権が移ってしまったり、税金の滞納により滞納処分による差押えがマンションに入ってしまって債権者の信用を損ねる状況になってしまったときやマンションを債権者たる金融機関の了解もなく売却してしまったときなどは、期限の利益を喪失し一括返済を迫られることとなります。

【住宅ローン滞納による期限の利益の喪失の流れ】

任意売却は住宅ローンが、保証会社や債権回収会社に移ってからの話です。

借入銀行では取り扱ってくれません。

借入銀行への住宅ローンの滞納が6ケ月経過すると1~2ケ月の移行期間を経て保証会社や債権回収会社へ住宅ローン債権が移行します。移行後2ケ月程度の奨励期間内に一括返済・競売・任意売却を選択して、保証会社・債権回収会社と手続きを進めていくことになります。

通常、一括返済などできる状況ではないので滞納することとなるため、選択肢は競売か任意売却となります。

債権者の信用を失う行動はできないため、自己が所有するマンションだからといっていつでも好きなときに自由にマンションを売却できるものではありません。

住宅ローンを組んでマンションを購入した場合は、基本的にローンの残債を清算できなければ売却できません。

金融機関はマンションに担保として抵当権を設定して、住宅ローンが返済されない場合の準備対策をしています。住宅ローンを完済しない限りは、原則、マンションに付着した抵当権は抹消されません。この抵当権が抹消されない限りはマンションの買主を探すことは不可能といえます。

マンションの売却代金がローンの残債を下回る場合は、不足部分を手持ち金から充当することになりますが、通常、多額の残債がある場合は現実的ではありません。

そこで、残債があるまま抵当権や差押さえを解除してもらい、売却を保証会社や債権回収会社に認めてもらうのが任意売却です。

競売とは?

マンションの購入にあたり住宅ローンを借り入れる際には、マンションへ抵当権を設定します。

かかる抵当権は住宅ローンを回収できないときの金融機関の保険のようなものです。

競売とは、住宅ローンを滞納し返済が困難と判断する債権者たる金融機関が抵当権者として裁判所に競売の申立てをすることにより、裁判所の権限によって強制的に差し押さえられたマンションを売却により換価し、その売却代金を残債務の返済として配当する国による手続きのことを言います。

競売手続きは手間暇・費用は掛かりますが、一度申請すると裁判所により手続きが自然と進んでいきますので、競売にかけて入札があれば法に従い配当が実施され、債権者は債権の回収ができます。

しかし、競売は裁判所が介入するため、強制的かつ杓子定規にことが進んでいきます。

競売にかけられると市場価格よりも安く落札されることは、周知がされているところです。

他方、任意売却は、債務者であるマンション所有者の自らの意思でマンションの売却手続きに関与し進めていけます。

マンションの売却に自己の意思を反映できるという競売との大きな違いがあります。

任意売却は、裁判所を介さずに通常の市場で売却するため、売却価格にも自分の意思を反映させて市場価格での売却も可能です。これにより強制競売より住宅ローンの残債を少なくすることが期待できます。

任意売却のメリットや注意点

任意売却のメリット

【競売に比べてスピーディー】

裁判所を介する競売では、競売の申立てから落札まで早くとも6ケ月ほどかかります。

マンションによっては1年・2年・3年を要する場合もあります。その間にマンションの価値が目減りすることも予想されます。

他方、任意売却では、確かに、保証会社や債権回収会社、連帯保証人など利害関係人との調整が必要となりますが、リミットを決めて任意売却手続きをするため比較的短期間で手続きが終了します。

【競売に比べて残債が残らない】

競売の売却基準価格は、時価の60%~70%と一般的に言われています。

売却基準価格とは、競売の際、裁判所が設定する競売対象不動産の入札基準となる価格です。

入札者は裁判所が設定した売却基準価格の80%以上の価格で競売への入札をしなくてはいけません。

しかも、一回目で落札がなければ売却基準価格からさらに70%の価格で価格設定して競売にかけます。それでも競落されなければ、さらに70%の価格で競売にかけ、それでも競落されなければ俗にいうスリーアウトで競売の申立てを取り下げることとなります。

【市場価値3000万円のマンションの場合の売却基準価格】

1回目 2100万円(市場価格3000万円×70%)

2回目 1470万円(2100万円×70%)

3回目 1029万円(1470万円×70%)

1回目の競売手続きで競落されない場合は、住宅ローンは、かなり多く残ることが予想されます。

他方、任意売却は、通常のマンションの売買と同様に市場で売買取引をするため、市場価値での売却も期待できます。

【住宅ローンの滞納を非公開にできる】

競売の申立てがされ競売開始決定がされると、裁判所の執行官がマンションに来て外観や室内の写真を撮影に来ます。

裁判所の競売情報のWEBサイト内に対象のマンション、その所在地、マンションの外観・室内写真をUPするためです。このように裁判所関係者が来てインターネット等でマンションが競売対象であることが公にされるため、近隣の住民や職場の同僚に知られる可能性はそれなりにあるといえます。また、WEBサイトを見た不動産会社からの勧誘が増えることも予想されます。

他方、任意売却は通常のマンションの売却と同様に不動産会社を介して販売活動をするために、住宅ローンを滞納したがゆえに売却することについて近隣住民や職場の同僚に知られるリスクは、競売に比べて低いといえます。

【引越日の融通】

競売の場合は、競落後にマンションに居座ることは不法占拠となるため、裁判所により強制的に立退きを迫られます。

他方、任意売却は、任意売却期間内であれば買主との交渉により自由に引越日を決めることができます。子供の学校などを考慮し自由に退去日を決めることが可能です。

【売却諸費用・引越し費用の軽減】

競売では、市場価格の60%~70%での価格で競落されることが予想されるため、市場で取引をする任意売却と比べると、住宅ローンの残債務が多く残ってしまいます。

通常は、残債務の一括返済を迫られ給与を差し押さえられることが予想されます。

落札によって得た代金はすべて債権者への返済に充当されるため、当然に引越し代は自分で工面しなければなりません。

他方、任意売却は、予め保証会社や債権回収会社と交渉し残債務の返済方法についても交渉するため一括返済を迫られることは少ないといえます。また、任意売却には通常のマンション売買と同様に諸費用が発生しますが、売却代金をもって諸費用に充当することが認められます。

良く認められるものとしては、次のようなものがあります。

□不動産仲介手数料

□抵当権抹消の登録免許税

□司法書士への報酬

□固定資産税の清算金

□マンション管理費滞納分

□マンション修繕積立金滞納分

ケースにもよりますが、引越し代金も20万円~30万円程度認めてくれる場合もあります。

任意売却の注意点とデメリット

【はやく売却活動を始める】

住宅ローンを滞納した段階で任意売却を申し出るタイミングは、はやいに越したことはないといえます。

確かに、期限の利益の喪失をして住宅ローンが保証会社や債権回収会社に移ってから一括返済か強制競売か任意売却かを保証会社・債権回収会社の担当者と具体的に交渉していくことになりますが、住宅ローンの滞納により今後の返済が困難であると判断できる段階で任意売却の話を持ち掛けるべきです。

返済に行き詰った際には、まず借入銀行に返済計画の見直し等を相談してみます。

それでも返済が難しいようであれば、滞納後6カ月以内であれば借入銀行の担当者に任意売却をしたい旨、さらにマンションの売却を担当する不動産会社も決めていることを伝えることが望ましいといえます。

あくまでも任意売却は保証会社や債権回収会社の担当者と進めていくもののため、任意売却の話をしても受領してくれませんが、住宅ローンを借り入れている債務者が今後どのように残債務を返済するつもりであるかの記録を残してくれます。ローンを滞納している債務者としては残債が残らないように販売活動をしていた記録を作ることが大切です。

この記録により保証会社や債権回収会社の担当者との任意売却の相談もスムーズにいくことが期待できます。

借入銀行への住宅ローンの滞納が6ケ月経過すると1~2ケ月の移行期間を経て保証会社や債権回収会社へ住宅ローン債権が移行した旨の通知が来ます。

移行後2ケ月程度の奨励期間内に一括返済・競売・任意売却をするかの連絡が担当者から来ます。

この連絡が来てから任意売却の相談をすることはとてもリスクのある行為といえます。

担当者は期限の利益を失った債務者の記録をチェックする中で、いきなり任意売却したいと言われても、何故今まで任意売却活動をしてなかったのかと疑問を持たれ信用を得ることが難しくなる場合があります。

ましてや、奨励期間の2ケ月の間、担当者からの連絡を無視していると、担当者からすると一括返済も任意売却もする意思がないものとして強制競売へとなります。裁判所から競売の通知が来てから任意売却したい旨を担当者へ連絡を入れても、印象は相当悪いといえます。

【任意売却のリミット】

任意売却には、期間制限が付されます。

保証会社や債権回収会社としても、いつまでも債務者にマンションに居座られて債権を回収できない事態を回避するために、当然に期間制限を設け、期間内にマンションの売却ができなければ競売へ移行することになります。

そのため、可能な限り早く不動産会社に相談し売却手続きに着手するべきといえます。

【信用できる任意売却をサポートしてくれるマンション専門業者を選ぶ】

マンションの任意売却では、戸建てと異なり注意しなければならないことがあります。

マンションには、戸建てと異なり管理費や修繕積立金があります。

住宅ローンの返済に窮しているマンションの所有者は、管理費や修繕積立金を滞納していることが予想されます。

区分所有法8条によるとマンションの前所有者が管理費や修繕積立金を滞納し精算しないまま新所有者へマンションの所有権が移転すると、新所有者が未払いの滞納金を弁済しなければなりません。

このように滞納の管理費等があるかどうかの調査は、マンションの任意売却においてとても重要となります。

また、前所有者にマンションの駐車場の使用権限があったとしても、任意売却により新たな所有者となった買主が引き続き駐車場を使用できるかどうかは規約によります。

かかる事由を調査することも任意売却では重要となります。

宅建業者は、これらを調査することができるためこれらの手続きに慣れた業者に依頼することが適切といえます。

任意売却が完了するまでの期間と流れ

これまでは、任意売却と競売の違いであったり、任意売却のメリットやデメリット・注意点についてお話ししてきました。

ここでは任意売却が完了するまでの大まかな流れを見ていこうと思います。

債務者の延滞と金融機関からの督促

住宅ローンを滞納すると借入銀行から電話連絡又は督促通知状が郵送されてきます。

この時点で住宅ローンの返済が厳しいようであれば、前述したとおり受付はしてくれませんが銀行担当者に任意売却をしたい旨を伝えましょう!

任意売却を決める前提として現状を把握することが大切です。

滞納する時点で借入銀行の担当者に今後の返済につき相談する中で住宅ローンの滞納状況や残債の状況などを把握していきます。

そのうえで、今後の返済が困難な場合は、早めに任意売却に関する知識と経験を持つ不動産会社などに相談しましょう。

不動産会社の選択と価格の査定

ここでは、任意売却を想定した不動産価格の査定を行います。

不動産価格の査定は複数の業者に依頼することができます。

ここで選択した不動産業者の担当者が、保証会社や債権回収会社の担当者と任意売却について交渉していくことになります。

あなたにとって信頼のできる不動産業者と担当者を選択しましょう!

この点、査定金額が不適切で買主が見つからず売却できない場合や担当者が不適切で保証会社や債権回収会社の担当者に理解を得られず、最悪競売となってしまう事態は避けましょう。

マンション売却へ向けての媒介契約

通常のマンションの売却と同じように、不動産会社と媒介契約などを締結してから売却活動が行われます。任意売却には期限を設けるため売買代金の売却金額を下方修正するなど1か月~数カ月でマンションが売却できるように進めていきます。

任意売却には半年程度を要する場合もありますが、築古マンションで売却先を探すのに時間を要するようなときはマンションの仕入れ専門の業者に相談することも検討事項です。

保証会社や債権回収会社の担当者への継続的な連絡・確認

任意売却を行う大前提は、保証会社や債権回収会社の担当者の同意を得ることです。

不動産会社・売却価格・返済時期・売却後の残債務の有無、残債務がある場合はその返済方法・売却に要する諸費用の売却代金からの充当など、保証会社や債権回収会社の担当者と相談し了承を得て進めていくことが必要です。

任意売却の売却活動中も引き続き保証会社や債権回収会社の担当者に確認をしながら進めていきます。売却代金の見直しをすべき時もあります。

売買契約の締結

マンションを購入する買主が現れたら買付証明書を作成して保証会社や債権回収会社の担当者に提出し売却価格の了承を得ます。

ここで、保証会社や債権回収会社の担当者等から各債権者の残高・仲介手数料・司法書士費用・管理費滞納分・修繕積立金滞納分・引越し費用などを売却代金から控除した金額の配分表を提出して同意を取り付けます。

この点、直接にマンションの仕入れ業者が買主となる場合は通常仲介業者に支払う仲介手数料が発生しない場合もあります。不動産会社を探す際には確認しましょう。

これらを確認したうえで、マンションの買主と引渡しを含めて売買契約を締結します。

不動産の決済・引渡し

マンションの売買契約で定めた引渡日に残代金の決済を行い、売却代金より諸費用を控除した残額を残債務の弁済に充当し、抵当権の抹消手続きも済ませます。

この決済日にマンションの所有権は、買主に移ります。

売主は、その前にマンションからの引越しを完了しておくことが必要です。

残債務の返済

売買代金の決済後になお残債務がある場合は、保証会社や債権回収会社の担当者と取り決めた方法で残債務を返済していきます。

まとめ

以上の手続きの完了により住宅ローンの苦しみから解放されることになり、新たな生活がスタートできます。

住宅ローンを滞納していると、遅延している限りは14%程度の遅延損害金が発生します。

また金融機関からの連絡を無視することにより強制競売され、残債務の一括返済を求められることのないように、任意売却をできるだけ速やかにスタートし、できるだけ早く終了させることが大切です。

信用できる不動産会社を見つけるためにも安易に不動産会社を決定することは避けましょう。


司法書士 岡山 司(執筆
司法書士 岡山 司

人生設計や人生の節目をサポートする会員制の「ひだまり俱楽部」を運営。

相続・税務・保険・不動産・FPと「暮らしの安心・安全」を提案し解決するアドバイザー。

近年は、お部屋の整理収納や妊婦さん・高齢者・離婚のカウンセリングなど暮らしにおけるカスタマーサービスの充実を図っております。

認知症対策として注目される「民事信託」をはじめ、多数の「相続・遺言」セミナーの講師として活躍中!