シニア向け分譲マンションの特徴や費用、老人ホームとの違いを解説

カテゴリ:マンション売却
投稿日:2023.04.13

最近、シニア向け分譲マンションの供給が増えてきました。特に、今までそれほど関心が大きくなかった東京圏においても、供給数が増えているようです。

なぜ、増えてきたのでしょうか?シニア向け分譲マンションには、どのようなメリットがあるのでしょうか?有料老人ホームなど既存の高齢者ホームとは、一体、何が違うのでしょうか、などについて説明をしていきます。

シニア向け分譲マンションを考える前に

はじめに

まずはじめに、シニア向け分譲マンションは、高齢者にとって、本当に必要な存在なのでしょうか?ということを追求していきたいと思います。つまり、シニア向け分譲マンションは、「今住んでいる自宅」と、何がどう違うのか?と言うことについて考えていきます。

確かに、高齢者の場合、大きな一戸建ては、合理的な見地で考えた場合、不要だと思います。しかし、高齢者の場合、郊外の一戸建てに住んでいるというケースは多いのではないでしょうか?

子育て期間中は、多少、交通に不便な立地でも、確かに庭付き一戸建ては有効だったと思います。しかし、子供がそれぞれ所帯を持ち、今の自宅から巣立っていった高齢期における郊外の一戸建ては、デメリットばかりのような気がします。

そもそも、一戸建ては、家の掃除が大変です。庭の手入れが大変です。また、一戸建ての場合、敷地に面している道路の管理も家の所有者がやることが暗黙のルールになっています。

こう言うと、業者を頼んでやればいいではないか!という声が聞こえてきます。確かに、業者を頼めば解決できます。しかし、使いもしない部屋の掃除や庭の手入れにお金を払って維持していくことに、いったいどれだけの価値があるというのでしょうか?

多くの場合、高齢期は収入の道が細ります。というよりも、病気の治療などで予想外の出費がかさみます。したがって、出費を抑えるということは高齢期を生きるポイントの一つだと思います。

もちろん、自分たちが死んだあと、子供たちが引き続き住んでくれるのであれば、まだ、環境整備はやりがいがありますが、今の時代、親の家をありがたがって住もうという子供は少数派です。

そもそも、子世代と親世代では、趣味趣向が違います。したがって、例え自宅を残したとしても、親が死んだ後は、売却し、なんにでも交換可能な「お金」に換えることになるはずです。

あえて、暴論を承知で言わせていただければ、親の自宅を大切に思える子世代に育てる為には、一部の富裕層や寺院、医者、伝統芸能の世界に生きている方々のように、幼少の頃から、「家を継承するのは子供として当然の義務」という教育をしていかなければならないような気がします。

さらに、高齢期には「断捨離」という行為が重要なワークだと思っています。しかし、一戸建てに住んでいると、「断捨離」の必要性を感じません。

理由は、ものを置いておくスペースがたくさんあるからです。だからこそ、郊外の一戸建てを処分して、駅近で医療機関などの多いエリアのマンションに引っ越すことは、重要なことだと思います。単身者の場合は、40平米程度、夫婦の場合では60平米程度で十分だと思います。

次の章では、単なる分譲マンションとシニア向け分譲マンションとを比較し、どちらが良いのか?さらには、このような高齢者には、シニア向け分譲マンションが向いているのでは?という話をしていこうと思います。

シニア向け分譲マンションとは

つまり、シニア向け分譲マンションのメリット、デメリットを考えることで、「高齢期の住まい考」について思いを巡らし、あるべき姿とあるべき行動について読者の皆さんと考えていきたいと思います。

シニア向け分譲マンションとは

シニア向け分譲マンションと駅近の一般分譲マンションとでは、何がどう違うのでしょうか?

当然、シニア向け分譲マンションも利便性を追求して建設しているはずなので、立地の部分では大差はないと思います。あるのは、物件の個別事情に応じた差だけです。

さらに、住居の広さも同じような間取りになっているはずです。したがって、違いは何かといえば、シニア向け分譲マンションの多くは、バリアフリー設計になっている点と入居者に対する個別の便利サービスが建物に付随しているという点になります。

シニア向け分譲マンションは何歳から

さらに言うと、シニア向け分譲マンションの入居者は、全員が65歳以上のシニア層であるという点です。したがって、この部分をどう考えるかで、どちらが自分には良いのかが決まってきます。

シニア向け分譲マンションのサービス

シニア向け分譲マンションを一言で表現すると、分譲マンションの形態をとっているホテルだと考えてください。

つまり、フロントサービス(コンシェルジュ)があり、食事サービス(レストラン)があり、さらには、入居者に対する生活支援サービス(宿泊係)があります。

さらに、温泉や大浴場をはじめ、テニスコートやプールなどの付帯設備も充実しています。当然ですが、これらのサービスはすべて有償なので、管理費やサービス利用料などといった名目で、ちょっとしたマンションの家賃並みの費用負担があるのが普通です。考えれば当たり前ですね。*本コラム内では、上記3サービスをひとまず「ホテル並みサービス」と呼びます。

シニア向け分譲マンションの特徴

さて、いよいよ本題に入ります。皆さんにとって、駅近のマンションと駅近のシニア向け分譲マンション、どちらが自分には向いているでしょうか?ポイントを整理していきます。

  • 立地、間取り、販売価格は、どちらも同じだとします。

シニア向け分譲マンションのメリット・デメリットなど

  • シニア向け分譲マンションは、バリアフリー仕様です。一般マンションはバリアフリーではありません。ただし、専有部分(居室内)は管理組合への申請は必要ですが、リフォームをすることは可能です。
  • 管理費、修繕積立金など毎月の費用負担は、シニア向け分譲マンションは、月額15万円、一般のマンションは月額4万円です。
  • シニア向け分譲マンションは、24時間有人常駐管理です。フロントに24時間スタッフを配置し、入居者の困りごとについて常時対応してくれます。例えば、深夜の体調不良時などは、24時間常駐スタッフが救急車を手配してくれたり、主治医がいる場合、主治医への連絡もスタッフが代行してくれる場合もあります。中には、24時間看護師資格を有するスタッフを配置している物件もあります。一般的なマンションの場合、管理人は昼間帯のみです。深夜などは、自分ですべて対応しなければなりません。
  • シニア向け分譲マンションの場合、レストラン、大浴場、カラオケルーム、ミニシアターなど高級ホテル、リゾートホテル並みのサービスが付帯しています。したがって、わざわざ外出しなくても、マンション内でこれらのサービスを受けることが可能です。これに引き換え一般的な分譲マンションの場合は、マンション内にこのような付帯設備はありません。しかし、外に出れば、サービスは無限大です。レストランも温泉もカラオケも映画館も何でもあります。特に、大都市圏であれば生活圏に概ねすべてあります。ホテルの例で評価するとわかりやすいと思います。自分はどちらのタイプが快適でしょうか?ホテル内で過ごす時間を大切にし、食事も娯楽も何でもホテル内で済ましたい方もいると思います。特に食事に至ってはルールサービスもありますね。半面、ホテルは寝る場所と割り切り、食事も娯楽もすべて外のサービスを利用する方がよいという方もいるはずです。また、この部分では、次のことも考えておく必要があります。マンション内のサービスを利用するということは、言い換えれば「会員制」のようなものです。同じような年代で同じような経済力の方々との“会員制の組織”の場合、人によっては、「面倒だ」「息苦しい」と感じるケースも多々あるはずです。
  • 入居中、加齢により要介護状態になった場合、シニア向け分譲マンションの場合は、付随するホテル並みサービスで、各種相談をすることが可能です。例えば、ケアマネジャーの紹介を受けたり、訪問介護事業所や訪問医療に対応している医療機関の紹介なども受けることが可能です。もちろん、高い管理料を支払っている為、もし、紹介された各事業者に不満があれば、スタッフに対しクレームを言うことも可能です。相談者がいることで、少し気が楽なのではないでしょうか?それでは、単なる分譲マンションの場合はどうでしょうか?もちろん、このようなサービスは付帯していません。しかしながら、既存の福祉サービスを利用することで、前記したほとんどのことをカバーすることができます。例えば、行政の介護保険窓口に行けば、最寄りのケアマネジャーの連絡先を教えてくれます。地域の地域包括支援センター(通称:包括)に行けば、ケアマネジャー、看護師、保健師などの専門職が配置されている為、各種相談をすることが可能です。さらに、地域の社会福祉協議会(通称:社協)では、経済的な相談から権利擁護の相談までかなり幅広いテーマで、相談することができます。ちなみに、これらのサービスは、原則無償です。つまり、一番重要なことは行政などが提供している福祉サービスの内容をどれだけ知っているかなのです。知っている方にとっては、シニア向け分譲マンションに付帯している相談機能は、それほど重要なサービスではないということになると思います。なるほど!と、うなずかれる方も多いと思いますが、世の中にある便利サービスの多くは、既存に存在しているサービスばかりです。多くのパターンでは、既存のサービスに多くの方が関心を寄せず、ある意味、無視をしているので、そこに目を付けた民間業者が、上手く整理をし直し、使いやすいサービスに仕立て直しているにすぎません。もちろん、この仕立て直しによる利便性を評価し、お金で時間や利便を解決したいという層は一定数いると思います。そのような方々には、シニア向け分譲マンションの方が向いているように思います。
  • 本人が亡くなった場合、相続財産として相続人が相続します。これは双方とも同じです。がしかし、シニア向け分譲マンションは年齢制限がある為、例えば、入居年齢が65歳以上となっている場合、60歳の子世代は、たとえ相続したとしても自分が引き続き入居することはできません。この場合は、第三者に売却をするか、賃貸物件として家賃収入を得るかになります。引き換え一般的な分譲マンションは、当然、相続したのち、売る、貸す、自分が住むなど自由自在です。

いかがでしょうか。一般の分譲マンションとシニア向け分譲マンションとでは、自分にはどちらが向いていると思いますか?

シニア向け分譲マンションと有料老人ホームの違い

次に別の視点でも考えてみましょう。有料老人ホームとシニア向け分譲マンションとでは、どちらが自分には向いているでしょうか?ここでは、同じような価格帯の商品でポイントを整理していきます。

有料老人ホームとシニア向け分譲マンションとの違いを以下に整理していきましょう。皆さんは有料老人ホーム派、それともシニア向け分譲マンション派ですか。

  • 有料老人ホームは入居金が4000万円のホーム、シニア向け分譲マンションは販売価格を4000万円の物件とします。どちらも同じ予算とします。
  • 部屋の専有面積は、有料老人ホームは30㎡、シニア向け分譲マンションは40㎡とします。どちらも1DK、浴室・トイレ・洗面室があります。
  • 両者ともバリアフリー仕様です。

シニア向け分譲マンションの費用

  • 有料老人ホームの月額利用料金は20万円、シニア向け分譲マンションの管理費、修繕積立金、生活サポート費などの合計は月額20万円で同じです。なお、シニア向け分譲マンションは、別途、固定資産税が掛かります。有料老人ホームの場合、月額利用料金には朝昼晩の食事が含まれます。一方、シニア向け分譲マンションには、食事サービスはついていない為、基本は自炊になります。ただし、1階のレストランにて別料金にはなりますが、いつでも喫食が可能です。

シニア向け分譲マンションと老人ホームの違い

  • 有料老人ホームは当然、24時間365日、介護職員、介護職員、生活相談員など介護保険法、老人福祉法に基づき入居者3人に付き1名の人員配置になっています。これにより、いざという時は万全の介護看護体制です。シニア向け分譲マンションも、24時間有人常駐管理です。フロントに24時間スタッフを配置し、昼間帯は看護師も配置しています。
  • 有料老人ホームには、ラウンジ、大食堂、大浴場やカラオケルーム、シアタールームなどがあります。シニア向け分譲マンションにも、当然、これらの設備はありますが、シニア向け分譲マンションの方が、どれも高級ホテル、リゾートホテル並みの本格的な仕様になっています。
  • 有料老人ホームの場合、職員主導によるレクリエーション活動が盛んです。ホーム内には、職員による「レクリエーション委員会」が組織されています。もちろん、外部の講師をホームに招へいする本格的なレクリエーションも実施しています。シニア向け分譲マンションにおいても、レクリエーション活動は活発ですが、マンションに紐づく職員が積極的にかかわるというよりは、外部の専門家(書道。華道などの師範)に依頼をして実施するケースが大半です。ある意味、本格派のレクリエーションと言えます。
  • 要介護状態になった場合、有料老人ホームの場合は、ホームに配置されているケアマネジャーが介護保険の申請をはじめ、ケアプランの作成を行い、そのまま、ホームに配置されている介護看護職員により、24時間365日、切れ目のない包括的な介護サービスを受けることができます。シニア向け分譲マンションは、配置されているコンシェルジュに相談し、ケアマネジャーの紹介を受けることができます。必要があればケアプランに通所介護や訪問介護など必要なサービスを入れることで、地域の介護保険事業者のサービスを受けることが可能です。なお、24時間365日にわたりコンシェルジュらの支援を受けることも可能ですが、彼らが直接的に介護サービスに携わるわけではありません。直接的な介護支援は、外部の介護看護事業者から受けることになります。
  • 医療体制についてです。有料老人ホームの場合、協力医療機関が必ず選定されています。別途医療機関と契約をすることにより、24時間365日にわたり医師の管理下に置かれます。シニア向け分譲マンションは、コンシェルジュから訪問医療に対応している医療機関の紹介を受け、有料老人ホームと同じような手続きで24時間365日の管理下に入ることは可能です。
  • 有料老人ホームの入居金は、概ね5年間から10年間で全額償却されるため、仮に11年後に死亡解約になった場合、4000万円の入居金は当然0円になります。つまり、有料老人ホームにおける4000万円の入居金とは、仮に10年償却だった場合、毎月4000万円÷120か月=33万3333円となる為、実際の毎月の費用は、15万円ではなく48万3333円となっています。ただし、初期償却がなかった場合。シニア向け分譲マンションの場合、仮に11年後に入居者が死亡した場合、当然、遺族が相続をすることになります。もちろん、分譲マンションなので、時の相場で売却することも可能です。もし、時の相場が、4000万円を上回っていた場合は、4000万円以上で売ることも可能です。さらに、時の相場にて賃貸物件として貸し出すことも可能です。この場合は、賃料を受け取ることになります。さらにさらに、制限年齢に達している相続人は、そのまま、当該シニア向け分譲マンションに入居者として居住することも可能です。

以下にシニア向け分譲マンションの特徴を改めて整理しておきます。

  • 24時間常駐スタッフによる「見守り」がある為、適度な安心感があります。老人ホームの場合、十分過ぎる安心感がある為、人によっては「煩わしい」と感じることがあります。
  • 娯楽設備が充実しています。レストランやカラオケ、フィットネスジム、プール、温泉施設など、娯楽設備が充実しています。
  • シニア向け分譲マンションは、キッチンや浴室などがある一般的な分譲マンションなので、原則、生活は各自の自由です。もちろん、外出や外泊も自由です。つまり、ホテル並みのサービス以外は、一般的な分譲マンションと同じです。
  • 退去を迫られません。シニア向け分譲マンションは、区分所有権(賃貸契約)で入居している為、身体状態の異変などを理由に、原則、退去を迫られにくいスキームになっています。管理費などの滞納などがなければ、基本的にマンション側から退去を迫られることはありません。
  • 資産が子供などに残ります。シニア向け分譲マンションは、子供などに資産として残すことができます。入居条件など管理規約による制限はありますが、売却や賃貸に出すことも自由です。
  • 改修も自由にできるシニア向け分譲マンションは、一般的な分譲マンションと同様に、専有部分を自分の好みに合わせて自由にリノベーションすることができます。ただし、床材の素材や遮音性能など管理規約による制限が設けられていることがあり、リノベーションの前に管理組合への届出などが必要なケースが多いため、事前に確認しておく必要はあります。

シニア向け分譲マンションの特徴や費用、老人ホームとの違いを解説まとめ

最後にまとめです。

シニア向け分譲マンションの検討は、以下の点を重点的に考えて選ぶことが重要です。

分譲マンションの資産性

まず、一般的な分譲マンションとの比較においては、資産価値(市場流動性)です。言い換えれば、換金性が、どちらが有利かということです。一般的な分譲マンションの方が、この点は有利になります。

分譲マンションと介護

次に、身体状況の変化に対する変化対応性です。この点は、シニア向け分譲マンションの方が当然有利です。しかし、前記した通り、行政サービスをはじめ、外部の介護医療サービスを理解し、活用することで、さらには、デジタル化した支援サービスを利用することで、多くのケースはカバーすることはできます。

つまり、これらのサービスを自ら学習することが面倒な方は、シニア向け分譲マンションを選択し、そうでない方は、一般的な分譲マンションでも問題ないと思います。

分譲マンションのコミュニティー

最後は、コミュニティーです。一般的な分譲マンションと比べると、シニア向け分譲マンションの方が、入居者コミュニティーが濃厚です。言い方を変えると、困った場合は、手を差し伸べてくれる方がたくさんいる反面、プライバシーに必要以上に踏む込まれるケースも多いと考えます。安心安全を取るか自由を取るかということになります。

次に介護付き有料老人ホームとのまとめです。

有料老人ホームの資産性

資産価値は、明らかにシニア向け分譲マンションに軍配が上がります。介護支援は、明らかに介護付き有料老人ホームに軍配が上がります。

有料老人ホームのコミュニティ-

入居者同士のコミュニティーの濃厚さは、どちらの同じように濃厚ですが、介護付き有料老人ホームの方が、介護看護などの職員配置数が多い為、入居者間に職員が身体を入れることで、煩わしさを回避することが可能です。

シニア向け分譲マンションまとめ

つまり、多くのケースでは、この2つに「住まい方」に対する大差はありません。つまり、4000万円を資産価値として考え、重度な認知症などになった場合、改めて当該物件を売却して介護付き有料老人ホームに移るか、それとも、4000万円で死ぬまでホームを利用できる権利を買うのか、という選択だと思います。

どちらが良い、ということは、一概には言えません。自分の思想や考え方、家族などの置かれている立場などを総合的に考えて決めるべきだと思います。

(執筆)
小嶋勝利(こじまかつとし)1965年9月生まれ
㈱ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
主な著書に「親を大切に考える子世代の為の老人ホームのお金と探し方」日経BP社他多数。