老人ホームはいくらかかる?月々の費用や入居金などをプロが解説

カテゴリ:マンション売却
投稿日:2023.04.12

老人ホームはいくらかかる?月々の費用や入居金などをプロが解説

有料老人ホーム選びと言うが・・・。実際は・・・。

老人ホームへの入居を検討するにあたり、下記のような疑問をお持ちの方も多いのでは・・・。

  • 月々の費用はいくら?
  • 入居金など入居までにいくら必要?
  • 老人ホームの費用が払えない人はどうなる?

老人ホームの選び・探しのプロが老人ホームの費用について分かりやすく、具体的に解説をしていきます。

この記事が老人ホームを選ぶ際の参考になれば幸いです。

(執筆)
小嶋勝利(こじまかつとし)1965年9月生まれ
㈱ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
主な著書に「親を大切に考える子世代の為の老人ホームのお金と探し方」日経BP社他多数。
老人ホームの種類と特徴、費用相場や選び方をプロが解説執筆者小嶋勝利著書(出所:Google)
執筆者小嶋勝利著書(出所:Google)

老人ホーム費用の相場|お金の話

最初に老人ホームの利用料や毎月の諸費用を含めた最低線の金額相場について解説します。

相場の月額費用を支払えないなら、民間の介護付き有料老人ホームへ入居することは難しいのが現実です。

老人ホーム費用の相場|東京、神奈川、千葉、埼玉

例えば、首都圏においては、毎月15万円、諸経費を入れると毎月約18万円が老人ホーム費用の相場です。

この金額を入居期間中、支払い続けるだけの財力がなければ、「有料老人ホームを選ぶ」という行為は徒労です。

つまり、この相場費用を用意できなければ、老人ホームを選ぶことはできないということを理解してください。

希望エリア内で、自分の予算で入居できるホームを探し、もし見つかれば”ラッキー”という話なのです。これが現実です。

老人ホーム費用の相場|首都圏以外

また、首都圏以外の地域においても、当該地域の”相場”というものがあります。どこの地域においても、概ね諸経費を考えれば月額15万円程度は必要なはずです。

この金額を常に支払うことができなければ、有料老人ホームを”選ぶ”という行為は無理です。予算に合った老人ホームが見つかった場合は、直ちに手を打つことをお勧めします。

どうぞ、地域の予算を把握し、それ以上の支払い能力がある場合に限り、老人ホームを選ぶ為の研究をしてください。そして、残念ですが、この予算がない方は選ぶことはできません。探して、見つかれば、入居する、という行為になるだけです。

老人ホームの費用|部屋と食事と介護保険

老人ホームなどの介護施設の費用は、大きく分けると下記①②の合計金額になります。

①ホテルコスト(居住費、食費)

②介護保険関連費用

ちなみに、この仕組みは、有料老人ホーム(民間施設)も特別養護老人ホーム(公的施設)もグループホームも、基本、同じです。もちろん、料金の安い高いはありますが、これは極めて常識的な次の理由に寄ります。

老人ホームの費用、部屋と食事

ホテルコストが高いケースは、部屋は個室で広さは20㎡以上あり、トイレや洗面所がついています。逆に料金が安いケースは、部屋は4人部屋でトイレや洗面所も部屋内にはありません。

食事代も考え方は同じです。1か月の食事代は、安い施設では40,000円程度、高い施設では70,000円程度が相場です。

この費用以外に管理費や水光熱費などが掛かります。

高級老人ホームの場合、付帯施設や共有部分が広い為、当然管理費は割高になります。

これらの合計費用を「ホテルコスト」と呼びます。そして、このホテルコストは、ホテルや旅館と同じ理屈で料金が設定されています。

老人ホームの費用、4人部屋は安い

したがって、月額のホテルコストが10万円以下の施設を探す場合は、当然、部屋は4人部屋などの共同方式、トイレや洗面所も共同、食事代の安い施設を探すということになります。

なお、特別養護老人ホームなどの方が安いイメージがありますが、これは、単に特別養護老人ホームの場合、4人部屋などの共同方式が多いことによります。

最近は、ユニットケアという高級老人ホームで採用されている方式を導入している特別養護老人ホームも多くなり、このようなケースでは、料金はけして安くはありません。

老人ホーム費用と介護保険

次に介護保険関連の費用についてです。介護保険制度は、要介護度に応じて区分限度額というものが設定されています。

例えば、要介護2の場合は月額20万円、というようなイメージです。そして、この20万円に対し、所得などに応じて介護サービス費用の1割から3割の自己負担が発生します。

つまり、要介護2の方で介護サービス費の自己負担額が1割のケースでは、費用負担2万円ということになります。

なお、この介護保険で設定されている区分限度額は、全施設が同じではありません。

有料老人ホームや特別養護老人ホームなど、施設ごとに微妙に設定された金額が違います。

さらに、施設の能力に応じて加算という割増金額も必要になります。つまり、同じ要介護2であっても、入居している施設によって、負担額は違うという理解をしてください。

関連記事:老人ホームの種類と特徴、費用相場や選び方をプロが解説

老人ホームの平均的な費用

ここからは平均的な有料老人ホームに関する具体的なお金の話です。

老人ホームの入居金と月額利用料金

有料老人ホームに入居することになった場合、一体、何にどのくらいの初期費用がかかるのか?という話です。

もし、あなたやあなたの親が有料老人ホームに入居することになった場合に必要となるお金をご説明していきます。

ちなみに、有料老人ホームの大きな特徴の一つとして、入居一時金(入居金)があります。

これは、入居時に一定の金額を先払いすることで、毎月の利用料金を低く抑えるための仕組みです。したがって、下記のように入居金が0円の場合、月額利用料金は割増しになります。

【月額利用料金】

  1. 入居金プラン:230,000円
  2.  入居金0円プラン:380,000円

【入居金と入居期間・償却条件】

  • 所在地:首都圏
  • 入居金:1000万円/ただし、36か月間で死亡退去すると仮定
  • 償却期間:60か月/ただし、初期償却30%

それでは、当該老人ホームに入居した場合、入居から退去までにかかる具体的な費用について詳しくみていきましょう。

老人ホーム費用|入居まで

老人ホームの入居までにかかるお金の目安は下記の通りです。

  1. 入居金10,000,000円
  2. 健康診断書20,000円
  3. 診療情報提供書750円
  4. 生活用品150,000円
  5. 介護用品50,000円
  6. 引越費用30,000円
  7. 身元引受人費用

入居まで(契約時)にかかる費用合計と詳細は、下記の通りです。子供が身元保証人に就任したため、身元保証会社は利用しません。

【入居までの費用合計】

  1. 入居金プラン:10,250,750円(1から7までの合計)
  2. 入居金0円プラン:250,750円(2から7までの合計)

【費用の詳細】

1.入居金プランを利用して入居する場合は、入居金として1000万円。

家賃の前払い金の意味合いである入居金は、0円~数億円かかる老人ホームもあります。

入居金についての詳しくは、小嶋勝利編著「親を大切に考える子世代の為の老人ホームのお金と探し方」日経BP社をご確認ください。

2.健康診断書作成費用20,000円前後(ただし、レントゲン等の必要な検査項目により変動あり)。

3.診療情報提供書作成費用750円程度(ただし、医療保険により1~3割の自己負担)

*かかりつけ医、主治医から有料老人ホームの協力医療機関の医師や看護師に対する入居者の今の診療に関する情報を提供する書類です。

4.衣服、寝具一部、洗面用具、その他生活用品(衣類、カーテン、室内履き)、家具(テレビとチェストなど)。多くの老人ホームでは入居者側にて用意します。合計150,000円程度。

入居する老人ホームによっては、有料(月極契約)にてレンタルできるケースもあります。また、多くの有料老人ホームは、ホーム内は土足厳禁で上履きに履き替えるホームが多いです。

老人ホームの場合、たくさんの衣類を収納するスペースはありません。(高級ホームは除く)。常識的な洋服ダンス1竿に1年間の衣類を収納するイメージです。入居者の中には、季節ごとに、自宅とホームとで衣類を入れ替えている人もいます。

入浴時の石鹸やシャンプーなどは、ホーム側で用意していますが、自分の好みがある方は自己購入で対応することも可能です。

家電製品は、テレビなどの他に「加湿器」「空気清浄機」などを購入する入居者が多くなっています。カーテンは、防炎用をホームにて販売しているケースもあります。もちろん、レンタルもあります。

5.介護用品50,000円程度(車いすなどの購入の場合)。

住宅型有料老人ホームは、車椅子などの福祉用具は介護保険を利用して1割から3割の自己負担で貸与が可能です。

が、介護付き有料老人ホームの場合は、ホーム側による無償提供(主に退去入居者が置いていったもの)、または、全額自費による購入になります。理由は、介護付き有料老人ホームの場合、介護サービスを包括的にホーム側が実施するため、入居者の介護保険区分限度額は、すべてホームによって消化されてしまうからです。なお、介護用ベッドは、多くの介護付き有料老人ホームでは、居室に標準装備されているのが普通です。

6.引越費用30,000円程度

単身者パックなど、軽微な荷物移動のみ。当該ホームは、居室の広さは15平米です。畳で言うと約9畳〜10畳程度です。したがって、多くの荷物を収納することはできません。原則、居室に収納しきれない荷物をホーム側が預かることはありません。ただし、不用品の処分代はみていません。

7.身元引受人費用0円

ホーム入居には、「身元(引受人)保証人」が必要です。多くのケースでは、家族、特に子供が引受人に就任します。

何らかの事情で身元引受人を選任できないケース(例えば、家族がいない、又はいても高齢、あるいは家族には頼みたくないなど)の場合、身元保証会社に委託することで入居が可能となります。なお、身元保証会社を利用した場合の料金とサービスについては、次回、機会があればご紹介します。

身元保証など高齢者サポートをめぐる契約トラブルの事例については、朝日新聞デジタルの下記記事をご覧ください。 

参考記事:高齢者の「身元保証」代行業でトラブル増加 監督省庁なく実態不透明|朝日新聞デジタル

「身元保証」や 「お亡くなりになられた後」を 支援するサービスの 契約をお考えのみなさまへ
出所:消費者庁

老人ホーム費用|月額

老人ホームに入居中、毎月かかる費用の概要です。

【月々の費用合計】

  1. 入居金プラン:290,000~300,000円/月
  2. 入居金0円プラン:440,000~450,000円/月

入居中、 前述した老人ホームの月額利用料以外に月々かかる費用は、64,000円です。(①~⑪ 、ただし、⑤と⑩は除く)

おおむね老人ホームの月額利用料金プラス60,000円〜70,000円程度と理解ください。

【月額利用料以外に月々かかる費用詳細】

① レクリエーション費用→月額1,000円。多くのホームで0円から2,000円程度の実費負担あり。なお、低額ホームの場合は、参加の有無に関わらず定額徴収のところも。

②居室電気代3,000円程度(個別電気メーターによる)

③居室水道1,000円(定額制)

*低額ホームは、水光熱費が別料金、比較的高額ホームは、月額利用料金の中に含まれている(水光熱費込み)になっているケースが多い。

④介護保険自己負担金22,000円(要介護③ 1割負担の場合)。

⑤生活サポート費30,000円(入居後の区分変更で要支援、自立となった場合のみ対象。(買物代行、入浴介助、服薬管理、リネン交換、居室清掃、洗濯などの代行料)

*生活サポート費の名称は、ホームによって様々ですが、介護保険報酬を受け取ることができない自立高齢者や要支援高齢者が、ホーム内に混在している場合、介護看護職員らは、これらの高齢者に対し、「介護保険報酬を貰っていないのであなたの世話はしない」と言うわけにはいきません。つまり、生活サポート費は、看護介護職員の配置を維持するための負担分という理解で良いと思います。

⑥協力医療機関以外への通院および外出付き添い料金6,000円(1,500円/30分)。

*高級ホームの場合、これらの送迎は、すべて無料(月額利用料金に含む)になっているケースもあります。また、病院受診は無料でも、買い物や歌劇、スポーツ観戦などは有料になっているケースもあります。

⑦医療費8,000円程度(訪問診療2回/月、薬代など)。医師、薬剤師による入居者の診療に対する総合管理料。

*医療機関に入院した場合、別途医療保険の自己負担分が発生します。なお、有料老人ホームの場合、特養や老健などとは違い、家賃相当額を支払っていれば、原則、ホーム側から退去を言い渡されることはありません。ただし、介護保険報酬に過度に依存している低額ホームの場合は、この限りではありません。

⑧おむつ費用10,000円程度(市区町村によって助成あり。〈例〉要介護③以上に限り毎月7,000円を支給、または相当する現物を支給。※杉並区の場合など)

*各地域の行政(保険者)に要確認。在宅では支給していても、ホーム入居の場合は、支給の対象外としている行政もあります。

⑨訪問理美容費用3,000円程度(カットのみの場合)

*多くのホームで採用されているサービスです。

⑩健康診断 年間20,000円程度(約10,000円/回、年2回)原則、ホームに医療機関が訪問して健康診断実施。

⑪遊興費用10,000円程度。酒、タバコ、菓子、ジュースなどの購入費用。

⑫自宅の固定資産税等→各行政における固定資産税、都市計画税による。

*自宅が空き家になっている場合、維持するためには、税金はもとより、修繕費などもかかります。とくに、昨今の異常気象の場合、想定外の雨、風、により、植木が倒れたり、屋根が壊れたりと、様々なメンテナンス費用がかかります。

老人ホーム費用|退去費用

老人ホームの退去後にかかる費用の概要です。

退去後にかかる費用は、530,000円です。

また入居金プランの場合、次項で詳細を説明しますが、返還金が2,800,024円になるため、退去後にかかる費用は、差し引き2,270,024円のプラスになります。

【退去後にかかる費用詳細】

①居室原状回復費用(通常の使用による損耗を超えた破損等があった場合)

30,000円(簡単な居室のクリーニング費用などの小修繕費)

②葬儀および埋葬費用→家族葬・埋葬費用500,000円(規模、流儀により数十万円から数百万円)。

有料老人ホームにおける現在の運用状況を考えた場合、老人ホームを退去するということは、イコール死です。

老人ホームの費用|入居金の返還

当該老人ホームの入居金の返金、その計算例をご紹介します。

当該老人ホームの入居金の返還

入居金未償却分の返金2,800,024円の入居金が返還されます。(償却期間中の退去に限る)

老人ホームの入居金の初期償却、償却の計算例

計算例:入居金1,000万円、3年(36か月)で退去した場合

  1,000万円×30%=3,000,000円(初期償却分)

  7,000,000円÷60ヶ月=116,666円(1ヶ月分の償却分)

  116,666円×36ヶ月=4,199,976円

  7,000,000円−4,199,976円=2,800,024円

返還金の返還期日はホームによって違います。

老人ホームの入居金のいろいろ

75歳未満の入居者に対する入居金が“割増し”になる有料老人ホームがあります。

さらに、85歳以上の入居者が“割安”になる有料老人ホームもあります。

また、入居金を自主的に上乗せすることで、月額利用料金を下げることができる有料老人ホームもあります。

また、「ミドル契約プラン」や「年齢別プラン」など個別の事情に即した柔軟性のあるプランを用意しているホームもあります。

入居金0円の有料老人ホームはお得か?

入居金方式と入居金0円方式の契約では、一体どちらが「お得」なの?

本来、介護保険サービスに「得」も「損」もありませんが、あえてこの課題に回答を出してみます。

■入居金プランの場合は以下の通りです。

入居金:1,000万円

月額利用料:230,000円

その他の月額費用:64,000円

■入居金0円プランの場合は以下の通りです。

入居金:0円

月額利用料:380,000円

その他の月額費用:64,000円

入居期間60ヶ月で死亡退去した場合の総額比較

■入居金方式の場合

入居金償却分1,000万円、月額費用17,640,000円、退去後費用530,000円。

費用総額:28,170,000円

■入居金0円方式の場合

月額費用26,640,000円、退去後費用530,000円。

費用総額27,170,000円

つまり、5年間の入居では、入居金0円プラン方が安い(得)ということになりました。

それでは、入居期間が6年間だった場合はどうでしょうか?上記の金額に、各々3,528,000円、5,328,000円が加わります。結果、入居金ありのプランでは、31,698,000円、入居金0円プランは32,498,000となり、0円プランの方が逆に高くなります。

入居金プランと入居金0円プラン、どちらが得なのか?という問い掛け対する回答は、短期決戦であれば、0円プランの方が得、長期戦であれば入居金プランの方が得だ、ということになります。

しかし、多くのケースでは、人の人生の終わりを正確に把握することなどできません。かといって、この部分を無頓着にしてよいはずもありません。

相談者の中には、途中で資金が行き詰まり、退去を余儀なくされるケースもあります。重要なことは、平素からのマネーリテラシーです。日頃から、お金、特に親子間では、嫌がらずお金の話をしておくことが、結果として、最善の得策だと思います。この機会に、ぜひ、親子間でお金の話をしてみてはいかがでしょうか?

老人ホームの費用が払えない

ここでは介護保険制度と要介護高齢者のお金の話について解説をしていきます。

介護や老人ホームにはお金がかかる

介護の沙汰は金次第。これは私の昔からの主張です。お金がある人は、何も心配することはありません。

理由は、介護における心配事の多くは、お金で解決ができるからです。

問題は、お金がない人です。厳密に言うと、お金が全くなければ、これまた「生活保護」という制度を利用することができるので、何とかなるし、あきらめもつきます。

老人ホーム費用を年金で払えない人

がしかし“アンダー生保”と呼ばれる領域に属する高齢者は、極めて深刻な立場に陥ると考えなければなりません。ちなみに、“アンダー生保”とは、読んで字のごとく、生活保護者よりもさらにお金のない人のことを言います。

待ってくれよ!お金がないから生活保護なのでは?と思う方もいると思いますが、以下の理由で生活保護者よりも“アンダー生保”に属する高齢者の方が、実際の生活は苦しいということになるのです。

“アンダー生保”とは、中途半端に年金や預貯金がある為、生活保護の対象者にぎりぎりなれない人のことを言います。例えば、Aさんの場合、生活保護費がなんだかんだで、総額月額13万5千円だったとしましょう。

 一方 Bさんは、預貯金などはありませんでしたが、月額15万円の年金があります。結果、生活保護受給者にはなれませんでした。

ここで問題です。AさんとBさんとでは、どちらが、お金を自分の為に有益に使うことができるでしょうか。

そんなのBさんに決まっているじゃないか?と思う方もいると思いますが、本当にそうでしょうか?答えは生活保護のAさんです。

理由は、Aさんの方が、可処分所得は多いからです。生活保護者の場合、税金(消費税負担はある)などの負担もなく、実際の医療費や介護費用も原則無料です。

しかし、Bさんの場合、これらの負担が出てきます。したがって、Bさんの場合、月額15万円の年金収入から、税金や保険料をはじめ医療費などの必要費用を支払った残りが、自由に使えるお金ということになるのです。

老人ホームや高齢者住宅の貧困ビジネス

参考までに、高齢者介護業界の「お金」の現実について、少し触れておきます。介護保険制度がある為、いわゆる『貧困ビジネス』というスキームが存在しています。

老人ホームや高齢者住宅の運営企業の一部には、要介護認定を受けている生活保護高齢者をターゲットにしている企業が存在します。もっと、正確に言うと、ただの要介護認定ではなく、要介護3以上の重症な要介護認定を受けている高齢者を大歓迎しています。

老人ホーム+生活保護+介護保険

理由は、次の通りです。生活保護者は、家賃など生活に必要なお金は行政より支給されます。つまり、家賃のとりっぱぐれはありません。

また、介護保険制度を利用して介護保険サービスを受けた場合も、自己負担額がない為、全額、国から事業者に対し支払いが行われます。つまり、こちらもとりっぱぐれがありません。

さらに、治療に要した医療費なども、自己負担がない為、生きる為に必要な出費を抑えることができます。

ざっくりと計算をしてみましょう。家賃や水光熱費など、もろもろの生活費総額が13万円、要介護3で行使できる介護保険支給限度額が30万円だったとしましょう。ホーム側の月額収入は合計43万円です。つまり、要介護3の生活保護受給高齢者を受け入れることで、ホーム側は月額43万円の売上が立ちます。

この金額をどうとらえるかですが、老人ホームのような集団生活が基本の介護施設の場合、多くの要介護高齢者に対し、一定数の介護職員で対応する為、一人当たりの介護コストは、1対1のそれよりも低く抑えることが可能です。

したがって、多くの売上を望まなければ、老人ホームにとっても要介護3以上の生活保護受給高齢者は“おいしい”お客さんということになるのです。当然ですが、要介護認定を持たない自立の高齢者や要支援などの介護状態が軽度の高齢者の場合、介護保険を行使できる金額が0円または低い金額になります。さらに、毎月の家賃などの支払いについても管理ができない為、支払いの確約ができません。

したがって、老人ホーム側にとっては、介護保険報酬が見込めない、“アンダー生保”に属する高齢者は、入居対象者にはならないのです。なお、“アンダー生保”と言われる高齢者の場合であっても、重度の要介護認定を受け、介護保険における区分支給限度額が多い高齢者は、前記の理由で、魅力的な高齢者に変身するということは言うまでもありません。

つまり、介護保険制度とは、要介護状態に合わせて金銭の行使が可能になる為、老人ホーム側にとっては、極めて重要な経営指標になっているということを頭の片隅に置いておく必要があります。

老人ホームの費用の話をする場合、この部分については、あまり多くを触れることはないようですが、老人ホームに興味を持ち、老人ホームへ入居を考えている方は、このような仕組みがあるということは、理解をしておく必要があると思います。

ちなみに、この制度があることで、様々な弊害や犯罪まがいのことが発生しています。大した介護支援もせず、国費だけを搾取している悪質な老人ホーム事業者(多くは類似施設といって老人ホームではありません)も存在しています。

老人ホーム費用が払えない人のセーフティネット

しかし、この仕組みがあることで、貧困高齢者が救われていることも事実です。業界関係者の一部には「必要悪」だと言っている方もいます。

私も「必要悪」だと判断できる側面は多分にあると思っています。お金を十分に持たない要介護高齢者は、どこまでが自己責任なのでしょうか?この質問に対する明確な回答はありません。

立場によって考え方は当然、違うと思いますが、要介護高齢者の行く末に対し、国が100%面倒をみるような社会保障制度を作るか、それとも、100%自己責任だから、若いうちからしっかりと準備をしておけ!という考え方で行くのか、明確にすることが政治の責任だと思っています。

老人ホームに入居前の高齢期で重要なこと

お金以上に重要なものがある

少しだけ、お金以外の話をしておきたいと思います。これまで、お金の重要性を説いてきましたが、実は、高齢期にはお金以上に重要なものがあります。それは、社会とのつながりです。

皆さんには、気軽に本音で話ができるパートナーや友人はいますか?自分のことを理解してくれている人はいますか?もちろん、たくさんいる必要はありません。数人でいいのです。これは、高齢期では、お金以上に重要なことだと思います。

さらに、夢中になれる趣味や生きている甲斐があることを感じられることやものはありますか?ある人が言っていました。高齢期に必要なものは、教育と教養だと。間違えました。教育ではなく「今日、行く」、教養ではなく「今日用」でした。つまり、朝起きて、「今日も行くところがある」とか、「今日も何か用がある」ということは、何事にも代えがたいことなのです。もちろん、昨今の社会事情を考えれば、何歳になっても仕事があるということは、素晴らしいことだと思います。

お金があれば、何でも買える世の中です。しかし、心の平穏やみなぎる活力はお金では買えません。お金の話を考えながら、どうぞ、このことも考えてみて欲しいと思います。

老人ホームはいくらかかる?月々の費用や入居金などをプロが解説まとめ

老人ホームにかかる費用などを解説をしてきましたが、一つだけ注意点があります。

実際の老人ホームは、同じような場所、同じ専有面積でも、職員配置数が違うと価格、かかる費用が大幅に変わります。実際の入居金や月額利用料金などは、入居を検討される施設にご確認ください。

それでは解説してきた老人ホームの月々の費用や入居金などのまとめをしていきます。

老人ホーム費用の相場は?

首都圏の老人ホームの利用料や毎月の諸費用を含めた最低線の金額相場は月額15万円、諸費用を含めると約18万円が毎月かかります。

老人ホーム費用の相場、老人ホームを探す前の心構えの詳細はこちらをご覧ください。

老人ホームの費用はいくら?

都内の老人ホームの費用平均的な月額利用料金は下記の通りです。

  • 入居金プラン:230,000円/月
  • 入居金0円プラン:380,000円/月

老人ホームの月額利用料金など費用の詳しくはこちらをご覧ください。

老人ホームの入居金は返還される?

老人ホームの入居金の返還や返還方法は、老人ホームによって様々です。

標準的な老人ホームの入居金の返還について計算例をご紹介します。詳しくはこちらをご覧ください。

老人ホームの部屋や食事の費用について教えて?

費用が高い老人ホームは、部屋が個室になります。逆に費用の安い老人ホームは4人部屋になります。

1ヶ月の食事代も高い老人ホームは70,000円程度、安い老人ホームでも40,000円程度です。

老人ホームにかかる費用は、ホテルや旅館と同じ理屈で料金が設定されています。詳しくはこちらをご覧ください。