マンション事故物件、孤独死や自殺の売却価格は?
カテゴリ:マンション売却の手続き・ノウハウ
投稿日:2021.05.21
マンション事故物件の売却や価格に関する下記のような疑問、お悩みなどを解決いたします。
- 事故物件とはどんな物件?
- 孤独死マンションは事故物件?
- 事故を隠して売れる?告知義務とは?
- 分譲マンション室内で自殺、売却は可能?
- 中古マンション事故物件の価格はいくら?売却相場は?
- 個人の買主に売却しても大丈夫?
2021年5月20日、国土交通省は、不動産取引における心理的瑕疵に関する検討会を設置して検討を進めてきた所謂「事故物件」について、詳細は後述しますが、不動産業者が売買、賃貸の契約者に告知すべき対象をまとめた指針、ガイドラインを公表しています。
明確なルールが無く、不動産業者に委ねられていた、事故物件の告知について指針が定められるようです。
これから指針なども決定していくようですが、この記事では現段階で弊社が持つ知見や経験則などを中心にお伝えしていきます。
目次
中古マンションの事故物件とは?
中古マンションの事故物件とは?
自殺は?孤独死は?その他どのようなケースがあるの?詳しく解説していきます。
居住者が自殺したマンション
令和元年の自殺者数は20,169人で、対前年比671人(約3.2%)の減となっています。自殺者数のピークは平成15年の34,427人で、平成22年以降は10年連続減少しています。
弊社の基準では、市場価格に対する減価率は、1>2>3>4の順となります。
- 居住者が室内で自殺
- 居住者がバルコニーから飛び降り自殺
- 居住者がマンション共用部分(屋上、階段等)から飛び降り自殺
- 居住者が建物やマンション敷地の外で自殺
居住者が孤独死したマンション
令和元年の死亡数は137万6000人、出生数が86万4000人で、自然増減数は△51万2000人と推計されています。
孤独死は、年間推計2.7万人。「自宅で死亡し、死後2日以上経過」を「孤立死(孤独死)」と定義した数値です。
減価率については、死後経過の日数や遺体の損傷状況によって個別に判断しています。
正確な集計はしていませんが、弊社が購入する物件のうち10〜15%程度は孤独死物件と思われます。高齢化が進むことで今後更に孤独死は増加して、購入物件に占める割合も高くなるとみています。
殺人事件が起きた中古マンション
殺人事件が起きたというのは、かなりセンセーショナルなことでありマンションであれば建物全体のイメージダウンになります。
殺人事件が起きた部屋ということになれば更に衝撃は強く、弊社では減価率に換算することもかなり困難であると判断しています。
市橋達也の逃走劇がテレビでもたくさん取り上げられたので、皆さまのご記憶にもあると思いますが、部屋で外国籍の英会話教室講師が殺害された市川市福栄マンションの売却相談が何年か前にありました。
弊社に買取できないかという相談でしたが、総合的に判断して買取はお断りをしました。
専有部分(室内)で火災発生の物件
専有部分の火災の減価率は、専有部分で①人が亡くなっているか②自殺か不注意か③室内損傷状況等(ボヤ程度<全焼)により、大きく異なります。
- 火災により専有部分で人が亡くなった(原因自殺)+損傷状況
- 火災により専有部分で人が亡くなった(原因不注意)+損傷状況
- 火災のみで専有部分で人が亡くなっていない+損傷状況
専有部分(室内)が浸水した物件
1階住戸や地下・半地下の部屋で、床下〜床上などの浸水や浸水履歴がある物件を事故物件と判定しています。
加えてエリア、販売価格帯、間取り面積なども考慮して減価率を決定します。
ここ数年豪雨災害などが頻発しています。事故物件になってしまうリスクがどの程度あるのかなどを確認をされたい方には、洪水や津波などの災害リスクを知るツールとしてハザードマップがあります。
分譲マンションの共用部分が浸水
マンション敷地、エントランス、駐車場、機械室など共用部分への浸水が発生した物件。
記憶に新しい武蔵小杉のタワーマンションは、地下の電源系統が浸水により故障して、停電等が発生しています。停電によりエレベーターが停止して住民は非常に不便な生活を強いられたと報道されていました。
武蔵小杉エリアが台風や大雨に弱いことが露呈、風評も含めて流通性が低下して、価格は下落傾向が想定されます。
「武蔵小杉タワーマンション浸水」と検索すると下記のような記事にヒットします。
武蔵小杉の「浸水した高級タワマン」を、売るに売れない30代男性の苦悩(榊 淳司) | 現代ビジネス | 講談社
タワーマンションの災害に対する弱点が強く認識されて、タワーマンション離れ=資産価値の低下の可能性も考えられます。
事故物件は、心理的瑕疵を有する物件
事故物件は、所謂心理的瑕疵を有する物件ということになります。ここでの瑕疵は、欠陥、不具合、欠点という意味になります。
心理的瑕疵は、「何となく気味が悪い」「何となく怖い」というような心理的な抵抗が生じる、抵抗を感じる恐れがあることがら=心理的な欠陥を有することといえます。
事故物件の売却、告知義務などの注意点
事故を隠して売れる?
仲介会社は、宅地建物取引業法第47条(業務に関する禁止事項)の告知義務によって、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を禁じられています。
従って心理的瑕疵、物理的瑕疵などを知り得た場合、必ず重要事項説明書などで説明をします。
仮に仲介会社が自殺などの事実を知り得なかった場合、売主であるあなたが事実を伝えなければ、契約の相手(買主)はその事実を知らずに契約を締結してしまうということになるかもしれません。
事故物件でも売却可能、但し・・・
マンションの事故物件の売却は可能です。但し下記の表の通り、売却には割安感が必要です。
心理的瑕疵の度合いによって価格を安くする必要があります。皆さんもお分かりの通り心理的瑕疵のある物件と無い物件を比較した時、当然無い物件を選びますよね。
瑕疵の度合いや瑕疵の捉え方によっては、瑕疵のある物件は絶対買わないという人も少なからずいます。
誰が事故物件を買うの?
弊社(東京テアトル)は、年間200件超の平均築年数30年超の区分所有マンションを取得して、リフォーム後に一般のエンドユーザーに販売をしています。
前述してきた自殺、孤独死などの事故物件も取得をして、フルリフォーム後に販売をしています。弊社は事故の痕跡をできる限る見えにくくするために、原則全ての内装、全ての設備(水回り等)をリフォームします。
自殺や孤独死があったことは告知をしますが、室内の見た目は全く事故物件とは分からない状態にして販売をします。
このような物件を実際にどのような方がどのようなニーズ、理由で購入しているか、弊社の事例をご紹介をします。
物件所在 | 事故 | 購入理由 | 居住地 | 用途 | ニーズ |
藤沢市 | 自殺 | 割安感 | 藤沢市 | 賃貸用 | 数年居住 |
板橋区 | 自殺 | 割安感 | 埼玉県 | 居住用 | 買い替え |
横浜市 | 自殺 | 割安感 | 横浜市 | 居住用 | 賃貸脱出 |
横浜市 | 火災 | 割安感 | 横浜市 | 居住用 | 賃貸脱出 |
川口市 | 孤独死 | 割安感 | 川口市 | 居住用 | 賃貸脱出 |
千葉市 | 孤独死 | 割安感 | 千葉市 | 居住用 | 実家近い |
座間市 | 孤独死 | 割安感 | 座間市 | 居住用 | 賃貸脱出 |
その他の理由としてあがっているのは下記のような理由です。
- エリアの人気物件(大規模&売主大手デベ)+割安感
- 希望エリア・支払額で購入可能はこの物件だけ(乗り越え派)
- 自殺があったことが気にならない(少数派)
- 孤独死=病死であれば気にならない(現実的冷静判断派)
- 数年住んで将来的には賃貸(投資・利回り重視派)
事故物件の売却方法
【仲介会社の「仲介」で売却】
普通の物件と同じように仲介会社に依頼をして、買主を探してもらう売却方法。成約時に、仲介会社へ仲介手数料(成約価格×3%+6万円+消費税)を支払います。
事故物件の場合、割安な価格にしても普通の物件に比べて流通性が低く、成約までに時間がかかる傾向にあります。
普通の売却物件を多く抱える大手仲介会社などでは、時間のかかることを嫌いあまり積極的に販売活動をしてくれないこともあるようなので注意です。
【不動産会社の「直接買取」で売却】
不動産会社(マンション買取業者)に直接売却する=買い取ってもらう売却方法。仲介会社が間に入らないので、仲介手数料(成約価格×3%+6万円+消費税)は不要です。
仲介会社の仲介で売却、不動産会社の買取で売却、それぞれメリットデメリットがあります。詳しくは下記『関連記事:直接買取と仲介のメリットデメリット』からご確認ください。
マンションの事故物件の価格、売却相場
事故物件の価格=市場価格との価格差
事故物件を売却する時、割安な価格設定が必要なことは既に説明をしてきました。ここでは、どの程度割安にする必要があるのかをご説明します。
自殺は◯%ダウン、火災は◯%ダウンというような決まり、方程式はありません。
弊社に鑑定士がいますが、鑑定評価にも自殺減価率、火災減価率は無いとのことです。
下記のような物件の内容、条件によって減価率=値下り率は変動します。
- 物件所在エリア
- 駅距離
- 価格帯
- 面積、間取り
- 規模・総戸数
- 分譲不動産会社(分譲時売主)
事故物件の価格まとめ
- 自殺:市場価格の25%〜40%ダウン
- 孤独死:市場価格の5%〜10%ダウン
販売価格900万円の△5%(△45万円)と販売価格1億円の△5%(△500万円)では、同じパーセントでも値下り金額が大きく異なるので、販売価格帯によってパーセントは上下するとお考えください。
市場価格には、幅があります。市場価格を算出する根拠となる、成約登録されている成約事例の売却事情は様々であり、「売り急ぎ」の物件が多く含まれれば算出市場価格は低くなります。
逆に成約事例が少なく、その中に「高くても買いたい」という特殊な事情・ニーズを持った買主の事例が入っていた場合、算出市場価格は高くなります。
市場価格に上下幅がありますので、減価率をかけた事故物件の価格にも幅あることをご理解ください。
事故物件の売買に関するトラブル事例
一般財団法人 不動産適正取引推進機構 | RETIO判例検索システムを利用して裁判判例を調べてみました。
自殺があった物件に瑕疵担保責任が認められた事例
H1.9.7 | 横浜地裁 | 家族との居住目的で購入したマンションにおいて六年前に縊首自殺があつたことは瑕疵であるとして、買主の売主に対する売買契約の解除及び違約金条項に基づく損害賠償請求が認められた事例 |
自殺が心理的瑕疵として認められ買主の契約解除と損害賠償請求を認める判決
エレベーター設置工事中の転落事故を原因とする買主の契約解除及び手付金の返還請求を棄却した事例
H24.4.17 | 東京地裁 | 買主が、契約締結後に工事中のマンションにおいてエレベーター設置工事中に転落死亡事故が発生したことから、売主は債務の本旨に従った履行をすることが不可能になったなどとして、債務不履行責任等に基づく契約解除と手付金の返還を求めた事案において、事故によって売主の債務の履行が不能になったと解することはできない等として請求を棄却した事例 |
- 購入したマンションの部屋ではなく共用部分で発生した事故
- 発生現場が購入した部屋とはフロアを異にしている
以上から債務の履行が不可能になったとはいえないなど買主の請求を棄却
出典:不動産適正取引推進機構 | RETIO判例検索システム
ご紹介したような争い事にならないよう事故物件の売却には注意が必要です。
事故物件の告知、病死は不要、自殺は?
前述しましたが2021年5月20日に国土交通省は、入居者らが死亡した事故物件について、不動産業者が売買、賃貸の契約者に告知すべき対象をまとめた指針案を公表しています。
指針案による告知対象
賃貸 | 売買 | 共用部 | |
殺人,自殺,火災で死亡 | 告知/過去3年以内 | 告知 | 対象 |
原因不明の死 | 告知/過去3年以内 | 告知 | 対象 |
老衰,病死など自然死 | 不要 | 不要 | ━ |
転倒,誤嚥など不慮の事故死 | 不要 | 不要 | ━ |
告知の必要がないとした事象
病気や老衰の自然死、入浴中の転倒や食事中の誤嚥といった不慮の事故死は、原則告げる必要はないとしています。
これは、単身高齢者の賃貸への受け容れに影響することを配慮しての判断のようです。
隣接住戸や前面道路、搬送先病院での死亡なども告知の必要無しの方向になるようです。
事故物件で告知が必要な事象、対象は?
自然死、不慮の事故死であっても、死後、長期間発見されず特殊清掃が行われた場合は告知が必要。
殺人や自殺、火災やガス漏れなどによる死亡や原因不明の死は告知が必要、但し賃貸物件は3年経過すれば不要。
対象は住宅(マンションや一戸建て)で、居室のほかベランダや廊下など日常的に使う共用部分を含め、入居者以外が死亡するケースも対象。
参考記事:「宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン」(案)に関するパブリックコメント(意見公募)を開始します │国土交通省
参考記事:宅地建物取引業者による人の死に関する心理的瑕疵の取扱いに関するガイドライン(案)│国土交通省
マンション事故物件の売却のまとめ
中古マンションの事故物件、どんなケースが該当?
弊社の定義では、室内の自殺、室内の火災などがあった物件を事故物件と定義しています。
その他の事故物件に該当するケースについてはこちらをご覧ください。
マンションの事故物件の価格は?
心理的瑕疵により流通性が低くなった事故物件は、市場価格と比べ割安な価格になります。
どの程度割安になるかなど詳しくはこちらをご覧ください。
孤独死や自殺などの事故物件は売却できる?
事故物件でも売却は可能です。売却後のトラブルを避けるためにも事故の内容を正しく買主に告知するようにしましょう。
告知義務など事故物件の売却についての詳しくはこちらをご覧ください。
事故物件の売買に関するトラブル事例(裁判判例)
中古マンションの所謂事故物件の売買に関するトラブル事例をご紹介いたします。
自殺があった物件の瑕疵担保責任、共有部分での転落事故に対する損害賠償請求を争った裁判の判例の詳しくはこちらをご覧ください。
最後に
事故物件、特に心理的瑕疵にあたる物件の売主さんは、大切な親族を亡くして心を痛めている方が多くいらっしゃると思います。
息子さんを亡くされた相続人である80代のお父様とお取り引きをさせていただいたことがあります。自分の父親と同じようなご年齢で、淡々と契約をされていましたが、心中を察すると辛いものがありました。
買い替えや資産処分など前向きでプラスの売却理由の売主さまが多数ではありますが、中には様々な後ろ向きでマイナスのご事情を抱えた売主さまもいっらしゃります。
会社情報で社長の太田も申し上げておりますが、「信頼できる相談相手、お客様の心のパートナー」を私たちは目指しています。大切な資産である“マンションの売却”は普通の物件でも分からないことだらけで大変なのに、事故物件(訳あり物件)となれば更に分からないことだらけだと思います。
マンション売却でお悩みであれば、是非ご安心して東京テアトルの「マンション売却相談センター」へご相談ください。
社長の太田が言っております、我々相談員も同じ気持ちです。
「どんな些細な相談でもお気軽にお問い合わせいただけることを心よりお待ちしております。」
東京テアトル(株) マンション売却相談センター ☎️0120−900−881
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