マンション売却で消費税はかかる?課税と非課税のケースや計算方法
カテゴリ:マンション買取
投稿日:2024.04.05
マンション売却にあたり、消費税がかかることをご心配の方もいらっしゃるのではないでしょうか。個人の売主様の場合は、お住まいのマンションのご売却であれば、買取でのご売却であっても消費税はかかりません。
しかしながら、賃貸に出しているマンションのご売却であれば、建物に消費税が課税されます。
この記事では、マンション売却の消費税について、課税されるケースや課税されないケース、消費税の計算方法、税金などの費用を抑える方法を解説いたします。
目次
マンション売却における消費税の考え方
マンション売却における消費税の考え方をご理解いただくために、まずは消費税について解説いたします。
消費税は、消費者が負担し事業者が納付しており、負担者(消費者)と納税義務者(事業者)が異なるため、間接税に分類されます。
消費税は普段我々が買物をするときに支払っていますが、買い物時に直接国に納税されているわけではありません。
顧客が事業者(お店等)に支払った消費税は、一旦事業者が預かっているということになっています。
この顧客から預かっている消費税のことを「預かり消費税」と呼びます。
また、顧客から消費税を受け取っている事業者(お店等)も、仕入れ等で他の会社に消費税を支払っています。
事業者が他の会社に支払っている消費税のことを「支払い消費税」と呼びます。
消費税は、事業者が「預かり消費税と支払い消費税の差額」を国に納めている税金です。
生産、流通などの各取引段階で二重三重に課税しない仕組みが採られており、消費税が課税される取引には、併せて地方消費税も課税されます。
では、マンション売却における消費税の考え方について、具体的なポイントを押さえていきましょう。
土地は誰が売っても消費税がかからない(非課税)
「消費税の性格において課税対象とすることがなじまないもの」と、「社会政策的な配慮に基づくもの」との2つの考え方によって、下記の取引については消費税が非課税となっています。
- 1 土地の譲渡、貸付け(一時的なものを除く。)など
- 2 有価証券、支払手段の譲渡など
- 3 利子、保証料、保険料など
- 4 特定の場所で行う郵便切手、印紙などの譲渡
- 5 商品券、プリペイドカードなどの譲渡
- 6 住民票、戸籍抄本等の行政手数料など
- 7 外国為替など
- 8 社会保険医療など
- 9 介護保険サービス・社会福祉事業など
- 10 お産費用など
- 11 埋葬料・火葬料
- 12 一定の身体障害者用物品の譲渡・貸付けなど
- 13 一定の学校の授業料、入学金、入学検定料、施設設備費など
- 14 教科用図書の譲渡
- 15 住宅の貸付け(一時的なものを除く。)
出典:国税庁ホーム|刊行物等|パンフレット・手引|パンフレット「暮らしの税情報」(令和5年度版)|消費税のしくみ
対価を得て行う取引のほとんどは消費税の課税対象
消費税は、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供に課税されるという考え方に基づき、商品の販売や運送、広告など、対価を得て行う取引のほとんどは課税の対象となります。
事業者は法人のみではなく、個人も対象となります。また、個人も個人事業主だけではなく、賃貸経営を行う個人も対象となります。
消費税が課税されるマンションと課税されないマンション
前項でご覧いただきましたマンション売却における消費税の考え方に基づき、さまざまな場合において、消費税が課税されるマンションと課税されないマンションの違いをみてみましょう。
個人が居住用マンションを売却する場合は消費税が課税されない
居住用マンションは、マイホーム以外にセカンドハウスも含まれます。
セカンドハウスとは「週末に居住するため郊外等に取得するもの」や「遠距離通勤者が平日に居住するために職場の近くに取得するもの」等を指します。
出典:国税庁ホーム|刊行物等|パンフレット・手引|パンフレット「暮らしの税情報」(令和5年度版)|消費税のしくみ
個人が投資用(賃貸用)マンションを売却するときは消費税が課税される
法人・個人事業主が事業用マンションを売却するときは消費税が課税される
ただし、後述する免税事業者は、消費税の納税が免除されます。
個人・法人を問わず免税事業者は消費税の納税義務はない
国内で課税対象となる取引を行っている事業者は、原則として消費税の「課税事業者(納税義務者)」となります。
しかしながら、一定の範囲の事業者は、消費税の納税が免除されており、「免税事業者」と呼ばれます。
免税事業者とは、基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者のことです。
基準期間とは、個人事業者は前々年、法人は前々事業年度を指します。
なお、基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合は、その課税期間においては課税事業者となります。
特定期間とは、個人事業者の場合はその年の前年の1月1日から6月30日までの期間、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間のことをいいます。
なお、特定期間における1,000万円の判定は、課税売上高に代えて、給与等支払額の合計額により判定することもできます。
下記の表は、個人事業者の場合、基準期間や特定期間での課税売上高によって消費税の課税期間にどうなるのかを示したものです。
法人の場合、設立したばかりで基準期間がなく、資本金が1,000万円未満の法人(新規設立法人)は、設立1期目、2期目は納税を免除されます(社会福祉法人を除く)。
免税事業者や新規設立法人が課税取引を行う場合は、消費税は発生しますが納税を免除されますので、消費税分はそのまま収入として良いということになります。
出典:国税庁ホーム|税の情報・手続・用紙|税について調べる|タックスアンサー(よくある税の質問)| No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき
マンション売却時に必ず消費税が課税されるもの
マンション売却時に必ず消費税が課されるものは以下の通りです。
- 不動産会社への仲介手数料
- 司法書士への報酬
- 住宅ローン一括返済手数料
一つずつ解説いたします。
不動産会社への仲介手数料
仲介手数料の上限を求める計算方法
国土交通省で定める仲介業者が宅地建物の売買などをおこなって受け取ることのできる上限は、下記の計算方法の通りです。
売買金額 | 報酬額(仲介手数料) |
200万円以下の部分 | 取引額(売買金額)の5%以内 |
200万円超400万円以下の部分 | 取引額(売買金額)の4%以内 |
400万円超の部分 | 取引額(売買金額)の3%以内 |
売買金額3000万円で売買契約が成立した取引の仲介手数料の上限は、一般的には以下の計算方法の通りとなります。
(3,000万円×3%+6万円)+消費税 = 96万円+9.6万円=105.6万円
取引段階で二重三重にかかることのないよう、マンション売却で消費税が課税される場合の仲介手数料は、売却代金(売買金額)の消費税抜き価格に消費税率をかけて計算します。
土地の売却には消費税がかからないことを前述しましたが、土地の売却で仲介手数料が発生するとどうなるのでしょうか。
土地売買の仲介を不動産会社に依頼して媒介契約を締結した場合には、成約時に不動産会社へ仲介手数料を支払わなければならず、仲介手数料には消費税が課税されますのでご注意ください。
関連記事:マンション売却にかかる費用まとめ。相場、手数料や税金など|マンション売却手数料の計算式
司法書士への報酬
マンションを売却するには抵当権を抹消する必要がありますが、申請手続きが専門的で煩雑なため、司法書士に依頼する場合がほとんどです。
売主は、買主に対して所有権等の移転時期までにその責任と負担において、買主の完全な所有権等の行使を阻害する一切の負担を除去抹消しなければなりません。これは、売買契約書に定められている内容です。
売主が行う必要がある登記の申請手続きは以下の通りです。
- 抵当権の登記抹消申請手続き
- 住所変更登記申請手続き
- 氏名変更登記申請手続き
下記見積書は、弊社がマンションを購入する時の所有権移転登記申請を多数依頼させていただいている「H司法書士事務所」の抵当権抹消登記申請手続きの金額です。
件名 | 件数 | 報酬額 | 登録免許税 |
抵当権抹消登記 | 1 | 20,000 | 2,000 |
調査・閲覧料・測量図・建物図面 | 1,000 | 350 | |
謄本・抄本・印鑑証明書・資格証明書 | 1,000 | 600 | |
申請・受領 | 10,000 | ||
小計 | 32,000・・・① | 2,950・・・② | |
その他諸費用/郵送代及び交通費 | 2,080 | ||
小計 | 2,080・・・③ | ||
合計(①+②+③) | 37,030・・・④ | ||
消費税(①×10/100) | 3,200・・・⑤ | ||
差引請求額(④+⑤) | 40,230 |
登録免許税は、税金(国税)なのでどこの司法書士に登記を依頼しても同じ金額となります。
司法書士に支払う「報酬額」は一律ではありません。上記見積もりにある「報酬額」は、抵当権抹消登記1件で20,000円となっていますが、この金額は司法書士事務所により異なるので、事前に最寄りや親しいところなど、複数の司法書士事務所に確認をしておきましょう。
関連記事:マンション売却の登記費用とは?相場、内訳と計算方法
住宅ローン一括返済手数料
三菱UFJ銀行の場合、下記の表で示されている期限前完済手数料の相場は16,500円〜33,000円ですが、金融機関によって異なるので、住宅ローンを組んでいる銀行へ事前に確認しましょう。
期限前完済手数料(消費税込)
お申込方法 | 改定前 | 改定後 |
---|---|---|
インターネット | 11,000円 | 16,500円 |
テレビ窓口 | 11,000円 | 22,000円 |
窓口 | 22,000円 | 33,000円 |
マンション売却における費用や税金を抑える方法
マンション売却で費用や税金を抑える方法はあるのでしょうか?2つの場合でのそれぞれの特例について解説いたします。
譲渡益が出た際の特例
マンションを売った場合、売却金額そのものに課税されるのではありません。
マンションの取得に要した費用(取得費)や、手数料など売るためにかかった費用(譲渡費用)を差し引きし、利益が出れば課税されます。
この利益のことを「譲渡所得(譲渡による所得)」といいます。
譲渡所得には所得税(国税)と住民税(地方税)が課税されます。平成25年から令和19年までは各年分の基準所得税額の2.1%を所得税と併せて申告・納付する復興特別所得税(国税)も課税されます。これらが譲渡所得税です。
譲渡所得も所得の一種なので、所得税と住民税の対象となります。「総合課税」である給与所得や事業所得と異なり、譲渡所得は左記の所得とは切り離して計算する「分離課税」です。
上記の税率をまとめると、以下の表の通りになります。
期間による区分 | 所得税 | 復興特別所得税 | 住民税 | 合計 |
短期譲渡 | 30% | 0.63% | 9% | 39.63% |
長期譲渡 | 15% | 0.315% | 5% | 20.315% |
譲渡所得金額に上記短期譲渡か長期譲渡いずれかの税率をかけて税額を計算します。
マンションを売却して譲渡所得が生じた場合、原則課税されますが、居住用財産(マイホーム)であるといった一定の条件を満たすと特例や控除が受けられます。
この特例や控除によって、税金を節税することができます。
- 居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例
- 10年超所有の軽減税率の特例
- 特定居住用財産の買換え特例
3つの特例について解説いたします。
1.居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除の特例
この控除は所有期間の長短には関係なく受けることができます。
下記式のように、収入金額から特別控除をすることで課税譲渡所得金額が減り、税額も減額となります。
●課税譲渡所得金額の算出式
収入金額 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額 = 課税譲渡所得金額
2.10年超所有の軽減税率の特例
●税率(所得税+住民税)
課税長期譲渡所得金額(=A) | 税率 | 税額 |
6000万円以下 | 14.21%(所得税10.21%+住民税4%) | A×14.21% |
6000万円超 | 20.315%(所得税15.315%+住民税5%) | (A-6000万円)×20.315%+852.6万円 |
※上記表の所得税には復興特別所得税を含みます。
3.特定居住用財産の買換え特例
売却した時点では、譲渡所得に課税されず、買い換えた居住用財産を将来売却するときに繰り延べられます。
購入1000万円 | 売却5000万円 | 買換え7000万円取得 | 売却8000万円 |
実際の譲渡益1000万円 | |||
持出額2000万円 | 2000万円 | ||
譲渡益4000万円(特例課税繰り延べ) | 4000万円 | 課税繰延べ益4000万円 | |
1000万円 | 1000万円 | 1000万円 | 1000万円 |
1000=購入金額 | 5000-1000=譲渡益 | 5000+2000=取得 | 1000+2000+4000+1000=売却金額 |
※簡潔にするために、減価償却や譲渡費用(手数料、印紙等)などは考慮していません。
上記の通り、売却5000万円の譲渡益4000万円への課税は繰延べされます。
将来8000万円で売却した場合に、売却価格8000万円と取得金額7000万円の差額である1000万円の譲渡益(実際の譲渡益)に課税されるのではなく、実際の譲渡益1000万円に課税が繰延べられていた4000万円の譲渡益(課税繰延べ益)を加えた5000万円が、譲渡益として課税されます。
譲渡損失が出た際の特例
マンションを売却して譲渡損失が生じた場合、一定の条件を満たすと控除を受けられます。
この控除によって、税金を節税することができます。
- 居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算、繰越控除
- 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算、繰越控除
2つの特例について解説いたします。
1.居住用財産の買換え等の譲渡損失の損益通算、繰越控除
損益通算
繰越控除
2.特定居住用財産の譲渡損失の損益通算、繰越控除
特例の概要
この特例は、新たなマイホーム(買換資産)を取得しない場合でも、適用することができます。
譲渡損失の損益通算限度額
自宅マンションの売買契約日の前日における住宅ローンの残高から売却価格を差し引いた残りの金額が、損益通算の限度額となります。
2000万円(売却価格)- 6000万円(購入価格)= △4000万円(譲渡損失金額)
3000万円(ローン残高)- 2000万円(売却価格)= 1000万円(損益通算限度額)
⇒1000万円(特定居住用財産の譲渡損失の金額)= 損益通算できる金額
※簡潔にするために、減価償却などは考慮していません。
上記の特例には、記載以外の適用要件があります。詳しくは弊社提携専門家をご紹介致しますので、お気軽にお問い合わせください。
お問い合わせ先:マンション売却相談センター ☎️0120−900−881
▼税金などの費用についてくわしくはコチラ
マンション売却にかかる税金はいくら?種類と計算方法
土地価格と建物価格に案分する方法
ここでは事業主に向けて、マンションを売却する際に建物価格と土地価格の内訳が不明の場合の消費税額計算方法を解説いたします。
消費税は建物のみに課税されるので、売買代金(不動産価格)の建物価格と土地価格の内訳が不明の場合には、それぞれに区分をする必要があります。
国税庁では、以下3つの案分方法を挙げています。
- 譲渡時における土地および建物のそれぞれの時価の比率による按分
- 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
- 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分
3つのうち、「固定資産税評価額を基に案分する方法」は、土地の固定資産税評価額は固定資産税納税通知書と登記簿謄本に記載された敷地権割合によって計算できるため、最も多く用いられています。
出典:国税庁ホーム|税の情報・手続・用紙 税について調べる|タックスアンサー(よくある税の質問)|No.6301 課税標準
簡易課税と原則課税の選択
ここではさらに事業主に向けて、マンションを売却する際に原則課税と簡易課税を選択して消費税額を計算する方法を解説いたします。
原則課税を利用した場合の消費税額計算方法
原則課税とは、消費税の説明で前述した通り、預かり消費税から支払い消費税を差し引いて消費税の納税額を計算する方式です。
簡易課税を利用した場合の消費税額計算方法
簡易課税とは、預かった消費税に一定率を乗じて消費税の納税額を計算する方式です。
基準期間の課税売上が5,000万円以下の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで簡易課税事業者として簡易課税を選択できます。
簡易課税事業者の消費税の納税額は以下の式で計算します。
みなし仕入れ率は本業の業種によって異なり、以下の表の通りです。
事業区分 | みなし仕入率 | 該当する事業 |
---|---|---|
第1種事業 | 90% | 卸売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで他の事業者に対して販売する事業)をいいます。 |
第2種事業 | 80% | 小売業(他の者から購入した商品をその性質、形状を変更しないで販売する事業で第1種事業以外のもの)、農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業)をいいます。 |
第3種事業 | 70% | 農業・林業・漁業(飲食料品の譲渡に係る事業を除く)、鉱業、建設業、製造業(製造小売業を含みます。)、電気業、ガス業、熱供給業および水道業をいい、第1種事業、第2種事業に該当するものおよび加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を除きます。 |
第4種事業 | 60% | 第1種事業、第2種事業、第3種事業、第5種事業および第6種事業以外の事業をいい、具体的には、飲食店業などです。 なお、第3種事業から除かれる加工賃その他これに類する料金を対価とする役務の提供を行う事業も第4種事業となります。 |
第5種事業 | 50% | 運輸通信業、金融・保険業 、サービス業(飲食店業に該当する事業を除きます。)をいい、第1種事業から第3種事業までの事業に該当する事業を除きます。 |
第6種事業 | 40% | 不動産業 |
課税売上が3,000万円、消費税率は10%、みなし仕入れ率が40%の場合の消費税額は以下の通りです。
= (3,000万円 × 10%) ー (300万円 × 40%)= 180万円
この記事のまとめ
マンション売却で消費税がかかるケースやかからないケース、計算方法について解説いたしました。
基本的に、個人で居住用のマンションを売却する場合には、消費税はかかりません。
しかしながら、売却の際にかかる仲介手数料や司法書士への報酬などには消費税がかかります。
また、個人であっても賃貸中のマンションを売却する際は消費税がかかります。
消費税がマンション売却のどのような場合にかかるのかを把握していただき、円滑なマンション売却にお役立ていただければ幸いです。