相続登記の費用はいくらかかる?税金との関係も
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2022.07.28
戸建てやマンションなど不動産を相続した相続人がしなければならないのが相続登記です。
人生で1度は経験するかもしれない相続登記は、登記の専門家である司法書士に依頼して名義の変更手続きをする方が多いのかもしれません。
この点、相続した不動産を売却する場合でも、その前提の手続きとしても相続登記は必要となります。
とすると、気になるのは、司法書士への報酬や実費ではないでしょうか?
そこで、今回は、相続登記の手続きにかかる費用と相続した不動産を売却した際の税金について、多くの方が疑問や不安を抱かれるところを解説いたします。
目次
相続登記とは?
相続登記とは、相続で受け継いだ不動産がある相続人が、登記簿上に記載されている亡くなられた方(被相続人)の名義から引き継いだ相続人や受遺者の名義に変更するための手続きです。
不動産の所在する管轄の法務局に、登録免許税を納付して申請します。
相続登記は、不動産の名義を自分の名義にすることにより第三者に対抗し、権利を守るための手続きであるため、現時点では、特に申請期限もなければ申請義務もありません。
2024年4月から義務化
相続登記は、2024年(令和6年)4月1日から義務化されます。
義務化の背景には、土地所有者の不明問題があります。
所有者が分からないと不動産は事実上凍結し、取引や再開発、公共事業に支障をきたします。
また、震災の被災地では、区画整理過程で買収予定地の所有者がわからず、復興の大きな妨げとなっていました。
そのため、過去の相続にもさかのぼって適用されます。
施行日又は自己のために相続開始があったことを知り、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日のいずれか遅い日から3年以内に相続登記をする必要があります。
正当な理由がなく相続登記を怠ると10万円以下の過料が科されます。
今後は、相続登記が必須の手続きとなるため、慌ててする事にならないよう司法書士に相談することをお勧め致します。
相続登記にかかる費用をまとめて解説
相続登記にかかる費用は、大きく区分すると「実費」と「司法書士への報酬」の2つです。
相続登記を管轄法務局に申請する際には、原則、相続人が誰かをすべて特定することになります。相続人全員で遺産分割協議をしたことを証するためです。
そのため、戸籍謄本など相続人を特定する必要書類の取得費が発生します。
また、登記を申請する際には、登録免許税の納付が必要です。
実費面で大きな金額が発生するのが以上の2点になります。
そのうえで、登記の専門家である司法書士に相続登記手続きの代行の依頼をする場合は、司法書士への報酬の支払いが必要となります。
相続した不動産の調査費用
亡くなられた方(被相続人)が不動産を所有していた場合は、所有していた不動産をすべて洗い出し、不動産の現状を確認することが遺産分割協議をして相続人へ名義を変更するうえで重要となります。
一部の不動産の存在を把握しないまま、相続登記の手続きを終了し、後日、新たに不動産を所有していたことが判明した際には、すでに合意した遺産分割協議とは別に、再度、当該不動産についての遺産分割協議を相続人全員でやり直し、相続登記をせざるを得ない場合もあります。
また、不動産に担保や被相続人のほかに共有者がいないかの確認も大切です。
権利証(登記識別情報通知)、課税明細書、登記事項証明書や公図により被相続人が所有している不動産の見落としが無いようにしましょう!
課税明細書や名寄せには課税されていない不動産や共有の不動産が記載されていないこともあるので注意が必要です。
相続登記にかかる税金「登録免許税」
相続登記を管轄の法務局に申請する際に、「登録免許税」という税金が課されます。
相続登記を申請する者が、自分で算出した登録免許税を申請するときに通常、納付します。
計算方法
4月以降に役所から郵送されてくる課税明細書や固定資産評価証明書に記載されている固定資産評価額に0.4%を乗じるとざっくりと登録免許税を算出できます。
複数の不動産がある場合は、申請ごとにすべての不動産の評価額を合算して0.4%を乗じると算出することができます。
詳細は下記の図を参照ください。
マンションの場合には、通常、敷地権や集会所や駐車場などがあるため登録免許税の算出には注意が必要となります。
固定資産評価額の確認方法
固定資産評価額を知るには不動産のある市区町村役場で固定資産評価証明書を取得し確認することもできますが、毎年4月以降に役所から郵送されてくる課税明細書を確認してみてください。
以下の図は、横浜市の課税明細書のサンプルです。緑色で囲まれているのが固定資産評価額となります。
必要書類を揃えるための費用
必要書類とは
相続登記を申請する際には、遺産分割協議・遺言・家庭裁判所の介在とケースにもよりますが、基本的には相続人を特定する作業が必要となります。
相続人を特定するには、亡くなられた方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍を収集することになります。
そのため、転籍を繰り返している被相続人の場合や相続人の人数が多い場合、若しくは兄弟姉妹相続の場合は、収集する戸籍の通数も多くなるため郵送費も含め費用が膨らむ傾向にあります。
通常、一般的なご家族の相続登記の必要書類をそろえるための費用は、約5千円~3万円位になる傾向があります。
司法書士に代行を依頼する場合の手数料
相続登記を司法書士に依頼する場合は、司法書士への報酬が必要になります。
司法書士からの見積書や請求書には実費と報酬があるのを理解しましょう!
見積金額や請求金額を見て高いなと思うこともあるかもしれませんが、その金額の中には、国に支払う登録免許税という税金や実費も含まれています。
司法書士の報酬よりも実費の方が高くなることも少なくありません。
費用相場
司法書士に相続登記を依頼する際に、注意しなければならないのはどこまで依頼するかで費用が変わることです。
ネット上では、6万円位が相場との記載をよく見かけます。
しかし、それは、相続登記申請のみの金額といえます。
相続登記を申請するためには、次のことが通常、必要となります。
・相続人特定のための戸籍・その他住民票等の収集
・相続関係説明図の作成
・不動産の調査
・遺産分割協議書の作成
・申請書の作成
司法書士の場合は、法律上、財産管理の権限もあるため、遺言執行も含め、相続手続きの大部分を依頼する方が多い傾向にあります。
一方、費用を少しでも下げて節約したい場合は、ご自身で書類収集をしたり、不動産に限った遺産分割協議書にすると、その分支払う報酬を安くできる可能があります。
司法書士手数料が高額になるケース
司法書士の相続登記手数料は、相続人や不動産の事情により加算されることもあります。
また、どこまでの手続きを依頼するかでも異なります。
では、どのようなケースで手数料が変わってくるのでしょうか?
「人による加算」がある時
法定相続人の人数が多い場合、代襲相続が発生している場合、兄弟姉妹相続の場合、相続人が外国人の場合には、料金が加算されるケースが多いといえます。
このような場合、司法書士がそれぞれの相続人とコンタクトを取り、郵送でのやり取り、各書類の収集や作成と、一般的なケースと対比した労力に対する手数料の加算といえます。
「不動産による加算」がある時
人による加算と同様に、不動産が多かったり、管轄の異なる不動産を所有していたりすると、手数料が加算される傾向にあります。
書類収集や作成も依頼する時
司法書士に、戸籍の収集を依頼するとその分の費用が加算されます。
相続人の人数にもよりますが3万円~5万円位が費用相場といえます。
戸籍収集を依頼すると、基本的には、登記用の相続関係説明図の作成も請け負ってくれます。
また、被相続人が遺言を残していない場合は、遺産分割協議が必要となるため、遺産分割協議書の作成を依頼するとその分の費用が加算されます。
遺産分割協議書の作成を依頼すると、対象となる遺産の総額にもよりますが、5万円~8万円位が相場といえます。
相続登記の手続きにかかる費用シミュレーション
ここでは、一般的なご家庭で、遺産すべての遺産分割協議のサポートを経て、不動産評価額3,000万円の相続登記をするケースでの司法書士費用と実費はどの程度かシミュレーションをしてみます。
司法書士報酬が小計①146,000円、右側の小計②127,026円は、登録免許税等自分で登記をしても生じる実費です。
司法書士に依頼した場合の「報酬+実費」の合計金額は、287,626円となります。
所有権移転の登記の際には登録免許税120,000円の納付が必要となります。
不動産評価額3,000万円×0.4%=120,000円
登録免許税は、相続登記の申請とともに司法書士が代わりに納付することになります。
相続関係説明図は、戸籍収集と相関図の作成報酬30,000円と戸籍等取得費・郵送費実費5,000円です。
遺産分割協議書の作成費用は、不動産のみを記載し他の遺産について記載しない場合は、2万円~3万円位が相場といえます。総財産の遺産分割協議書の作成は5万円~というところが少なくないです。
司法書士報酬の「日当・交通費・郵送費」に関しては、そもそも取らないところもあれば、相続登記費用に組み入れるところもあります。
相続登記にかかる費用を安くする方法は?
相続登記が義務化されることから、相続した不動産を放置することは好ましくありません。
ただ、少しでも安く登記手続きを進めたいと思うものです。
相続登記は、司法書士に依頼せずに自分で申請することも可能です。
自分で相続登記をすることも可能
相続登記にかかる費用は、司法書士の報酬と登録免許税や戸籍収集などの実費です。
司法書士に依頼しなければ、実費のみで手続きを行えます。
とりわけ、相続した不動産の売却を検討している方は、相続登記の添付書面である遺産分割協議書の記載内容によっては、流通税にも大きな違いが生じることがあります。
相続登記費用と税金の関係
被相続人がアパートやマンションの賃貸経営をしており、その不動産賃貸業を相続人が引き継いだ場合に、相続人が不動産所得の確定申告の際、相続登記費用を必要経費に算入できるのでしょうか?
また、ときには、相続した不動産を売却する場合もあります。相続した不動産を売却する前提として相続登記が必要となります。かかる相続登記費用も譲渡所得税の算出の際に取得費用として控除できるのでしょうか?
そこで、賃貸事業を相続したケースと相続したマンションなど不動産を売却したケースでの相続登記費用と所得税の関係について見てみましょう。
不動産賃貸事業を相続した場合
相続した不動産の賃貸事業の所得を申告するケースを見てみましょう。
被相続人が所有していたマンションやアパートの貸し付けや、借地権の設定から生じる所得を不動産所得といいます。
相続により被相続人の賃貸事業を承継した相続人は、以後、相続人が不動産所得にかかる税務申告を行うこととなります。
課税対象となる不動産所得は、不動産の総収入金額から必要経費を控除した金額となります。
主な経費としては、実際に支出した管理費、共益費、修繕費、固定資産税、都市計画税、損害保険料、借入金の利息、建物の減価償却費、広告宣伝費などがあげられます。
では、不動産賃貸業を引き継いだ相続人の不動産所得を申告するにあたっては、相続登記にかかった費用を必要経費に算入することはできるのでしょうか?
必要経費にできるものは、不動産収入を得るために直接必要な費用です。賃貸事業主の生活費や個人的な趣味のための費用のような明らかな家事上の経費は含まれません。
そのため、事業主が死亡して相続人が賃貸事業を引き継いだ場合は、その賃貸物件の相続登記に要した司法書士費用や登録免許税は、必要経費に算入できることとされています。
相続した不動産を売却した場合
相続したマンションなど不動産を売却し、利益がでたため譲渡所得税の申告が必要なケースを見てみましょう。
この点、譲渡所得とは、不動産や株式・ゴルフ会員権などの資産を売却・譲渡することによって得た利益(所得)です。
譲渡収入金額より控除できる取得費に含まれる項目として、土地・建物やマンションを購入したときに納付した登録免許税・登記費用・不動産取得税などが一般的です。
さらに、贈与や相続・遺贈による取得にかかる費用も含むことができます。
そのため、登録免許税や司法書士報酬など相続登記にかかった費用は、譲渡収入金額より控除することができます。
まとめ
不動産の相続登記は、戸籍・遺産分割協議書・申請書の準備が整うと、管轄の法務局に申請をすればよいだけです。
しかし、戸籍の収集も相続人の構成によっては難易度が高い場合もあります。
遺産分割協議も誰が何をどのように相続するのかで相続税も異なります。
また、記載の仕方によっては、贈与税が発生するリスクもあります。
さらに、相続したマンションなどの不動産の売却を検討している場合には、遺産分割協議書の記載方法は要注意です。
相続登記の費用は自分でやれば、司法書士報酬がかからない分、当然に安くすみますが、慣れない手続きに対する時間と労力、加えて税務上の配慮を考えると司法書士に依頼するのも経済的に有意義といえます。