相続登記には遺産分割協議書が必要?書き方や注意点を解説

カテゴリ:マンション売却と相続
投稿日:2022.07.22

相続登記には遺産分割協議書が必要?書き方や注意点を解説

亡くなられた方(被相続人)が不動産を所有していた場合には、一般的に相続人全員で誰がどの不動産をどのように相続するのか、遺産分割の協議をすることが必要となります。

遺産分割協議の結果、不動産を取得した相続人は、自身の名義に変更するために相続登記の申請を不動産の所在する管轄の法務局にすることになります。

遺産分割協議の結果をもとに相続登記の申請手続きをする際は、相続の発生を原因に相続人全員で協議した結果、どの相続人がどの不動産を相続したのかを証明するため遺産分割協議書を作成し管轄法務局に添付する必要があります。

もっとも、相続登記をする際、すべてのケースで遺産分割協議書が必要となるわけではありません。

ここでは、相続登記の際に遺産分割協議書が必要なケースと不要なケース、さらに遺産分割協議書をどのように記載し用意すべきかを中心に解説を行っていきます。

相続登記をするには、遺産分割協議書が必要?

遺言書により不動産を取得する相続人についての記載がある場合、法定相続分(民法900条)で不動産を相続する場合、さらに法定相続人がひとりの場合には、当該不動産についての遺産分割協議は不要となるため、相続登記をする際に遺産分割協議書も不要です。

しかし、遺言書の記載内容とは異なる相続を相続人全員が望んでいる場合や法定相続分と異なる割合での相続を望んでいる場合には、当該不動産についての遺産分割協議は必要となり、相続登記をする際には遺産分割協議書も必要となります。

遺産分割協議書とは

一般的には、相続人と相続財産を特定し、遺言書がないような場合は、相続人全員で、誰が何をどのように相続するかを遺産分割協議することになります。

民法に、遺産の分割は、遺産に属する物又は権利の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して行うようにと指針が定められています(民法906条)。

本条は、相続人間の形式的な公平のみでなく、実質的な公平を実現することを企図しているため、相続人のうちだれか一人が全ての相続財産を相続するような遺産分割協議も可能です。

相続人同士のトラブルを防ぐ目的も

相続人間での遺産分割協議をし合意形成ができたときは、協議内容を書面化することが必要となります。

この書面を遺産分割協議書といいます。

遺産分割協議書の作成は法律上の義務ではありませんが、金融機関や不動産登記の名義変更の際には必要書類となる書類です。

また、相続人同士での後々の紛争防止機能もあります。

例えば、遺産分割協議をし合意したにもかかわらず、あとから相続人のひとりが「実は納得していなかった。そういうつもりではなかった。もう一回やり直そう!」などど協議内容を反故にすることを言いだした場合、協議時の内容を書面で残していないと、相続人同士で大きな紛争となるリスクがあります。

そのため、相続人全員が署名と捺印をした遺産分割協議書を作成することはとても大切です。実印で捺印するため印鑑証明書も添えて保管しましょう。

相続登記に遺産分割協議書が必要なケース

土地や建物、マンションなどの不動産を相続した場合、相続人名義へ変更をするため相続登記が必要となります。

では、どのような場合に、相続登記の申請手続きで遺産分割協議書が必要となるのでしょうか?

法定相続分以外の相続登記

法定相続人には被相続人との関係に応じて、法定相続人が複数人いる場合の相続分が民法により規定されています(民法900条)。

これを法定相続分といいます。

法定相続割合

法定相続分は、あくまで公平な相続を実現するための目安です。

法定相続分は、遺産分割調停や審判の際に基準として採用されますが、法定相続分とは異なる割合で遺産分割をすることも、相続人全員が合意する限り問題ありません。

法定相続分と異なる遺産分割協議が成立した際には、遺産分割協議書を作成し署名・捺印(実印)のうえ、相続登記の申請手続きの際に添付する必要があります。

不備ある遺言書による相続登記

被相続人が遺言書を残している場合には、遺言に記載されている内容に従って相続の手続きを進めていくことになります。

相続登記をする際も誰がどの不動産を相続するのかを証するために遺言書を添付するため、遺産分割協議書は不要といえます。

もっとも、遺言書の記載内容が全ての遺産を網羅していない場合もあります。

遺言書の記載内容から漏れた遺産については、漏れた遺産を誰がどのように相続するのかを相続人全員による遺産分割協議が必要となります。

また、自筆証書遺言の場合には、要式の不備により遺言書が無効となることもあります(民法960条)。

無効な遺言は効力がないため、遺産分割協議が必要となります。

そのため、被相続人が遺言を残していても、相続財産である不動産の記載漏れや要式の不備により遺言が無効である場合には、相続登記をする際に、遺産分割協議のうえ、遺産分割協議書の添付が必要となります。

相続登記に遺産分割協議書が不要なケース

相続登記を申請する際に、すべてにおいて遺産分割協議書が必要となるわけではありません。

では、どのような場合に、相続登記申請の際に遺産分割協議書が不要となるのでしょうか?

遺言書がある

相続登記の対象となる不動産を特定の相続人に相続させる旨の記載がある遺言書が残されている場合は、遺言作成者の死後、遺言で記載したとおりに実現する法的効果があることを法をもって保障されているため、当該不動産については、遺産分割協議は不要となります。

遺言者の死後の遺産の権利関係の手続きは、遺言書をもって行うこととなります。

そのため、相続登記の申請をする際には、遺言書の添付をすることになります。

法定相続分で相続する

遺言書がない場合は、一般的に遺産分割協議を相続人全員ですることになります。

しかし、具体的に誰が何を相続するかを決めるのではなく、法定相続分に従って相続財産を分配することもできます。

この場合は、各相続人の相続割合は法定で規定されているため証明資料としての遺産分割協議書は不要です。

相続登記をする際は、法定相続割合に従って相続人全員による共有で登記を申請することになります。

遺産分割調停を利用する

遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができます(民法902条2項)。

遺産分割協議は、相続人全員の意見が一致しない限り成立しません。

そのため、相続人ひとりの反対によって遺産分割ができなくなるので、家庭裁判所に遺産分割調停の申立てをすることによって遺産分割の方法を決めます(家事事件手続法49条1項)。

もし、遺産分割調停の場で協議が成立すると家庭裁判所の作成の公文書である調停調書に遺産分割の内容が記載されます。

この遺産分割調停調書には確定判決と同じ効力があります(家事事件手続法268条1項)。

そのため、調停調書は、遺産分割協議書の代わりになります。

相続登記の申請の際には、遺産分割調停調書の正本又は謄本(※確定証明書は不要)を添付することになります。

遺産分割の審判を利用

遺産分割調停の場で、協議が整わなければ調停は不成立となります。

調停が不成立となった場合には、家庭裁判所の審判手続きとなります(家事事件手続法272条4項)。

審判手続きでは、裁判官が裁判所へ提出された資料に基づき、どの相続人にどの遺産を承継させるかを判断します。その際には相続人の意思は関係ありません。

審判が下ると家庭裁判所の作成の公文書である審判書に、遺産分割の内容が記載されます。

審判書は、遺産分割協議書の代わりになります。

相続登記の申請をする際には、確定証明書付きの審判書正本を添付します。

相続人が1名のみの場合

法定相続人がひとりの場合には、協議をする相手がいないため遺産分割協議は、原則として不要です。

例外的に必要となるのは、遺言により第三者へ包括遺贈があるような場合です。当該第三者も相続人とみなされるため遺産分割協議が必要となります。

そのため、遺言書もなく、相続人がひとりの場合は、相続登記により被相続人から自身への名義変更手続きをする際には、遺産分割協議書の添付は不要です。

遺産分割協議書の書き方とは

遺産分割協議書は、記載方法について決まった形式や書式はありません。

しかし、相続人全員により合意形成した遺産分割協議の内容を証する書面であるため、相続手続きの際の提出先である法務局や金融機関といった第三者が見ても分かりやすいように記載することが重要です。

ここでは、遺産分割協議書のフォーマットをご紹介し、次の項では作成時の注意点をご紹介します。

フォーマット紹介

遺産分割協議書のサンプル

記入時の注意点

遺産分割協議書には決まった書式はありません。

しかし、誰が何をどのように相続したのか、そのことについて相続人全員が合意していることを証する書面のため、次のことに注意を払い作成しましょう!

協議は相続人全員で行い、全員の署名を記載する

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要となります。

一人でも相続人を欠いた遺産分割協議は無効となります。

そのため、被相続人に認知した子や養子縁組をした子がいないか等、相続人を特定するため戸籍の収集と読み解きはとても大切です。

特定した相続人全員での協議結果をまとめた遺産分割協議書には、全員が協議に参加し合意したことを証するため全員が署名・捺印又は記名・押印をします。

一般的には、遺産分割協議書も証明資料のため、自書できない何らかの理由がない限りは、署名・捺印をお勧め致します。

遺産分割協議書への捺印は実印によるため相続人全員の印鑑証明書も添えて置きましょう!

実印の登録を役所にしていない場合は、相続手続きをするうえで原則として、印鑑登録が必要となります。

相続放棄する場合も遺産分割協議書に記載が必要?

相続人の中には「私は相続を放棄して、相続財産は子供たちに全て相続させます。」とおっしゃる方がいます。

このような場合のほとんどが、相続放棄をしていません。

相続放棄とは、プラス財産もマイナス財産も一切の相続財産を承継しない旨の家庭裁判所に対する意思表示です。管轄の家庭裁判所への申述が必要となります。

被相続人に借金があるような場合でない限り、相続放棄をされる方は珍しいといえます。

相続財産を承継しないほとんどの相続人の方は、家庭裁判所に申述せずに、特定の相続人が一切の財産を承継しない旨の合意をしているだけといえます。

これを相続分の放棄といいます。

あくまでも相続人間で債務も含め一切の財産を承継しない合意をしただけですので、相続人であることに変わりありません。

家庭裁判所へ申述し相続放棄をした場合は、初めから相続人ではなかったことになるため、遺産分割協議には参加する必要はありません。

そのため、相続放棄をした相続人は、遺産分割協議書への署名・捺印も不要です。

この点、相続放棄をした相続人は、戸籍上は相続人と読めてしまいます。

そこで、相続登記を申請する際には、相続放棄をしたことを証する「相続放棄証明書」を家庭裁判所から発行してもらい添付することになります。

なお、相続放棄の手続きが完了すると、家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」という書類が送られてきます。

これは、単に「相続放棄の手続きが終了しましたよ」という通知です。

法務局の相続登記手続きでは、相続放棄証明書を使用しましょう!

また、相続分の放棄をした場合は、相続人たる地位に変動はないため、遺産分割協議書への署名・捺印が必要となります。

不動産の表示は登記簿謄本に書かれているとおりに

遺産分割協議書への相続財産の記載については、誤解や不明瞭な点を生じさせないように具体的に記載しましょう!

土地・建物やマンションなどの記載は、登記事項証明書(登記簿謄本)のとおりに記載することをお勧め致します。

登記事項証明書交付申請書

最寄りの法務局の窓口で登記事項証明書の交付申請書に所在・地番・家屋番号等の必要事項を記載して申請すると1通600円で取得できます。

取得した登記事項証明書を参照し、次のとおり遺産分割協議書に記載します。

遺産分割協議書に記載する不動産の表示

不動産の表示については、必ずしも登記事項証明書(登記簿謄本)に記載されている内容と同じように記載する必要はありませんが、相続登記をする不動産を遺産分割協議書から特定できない場合は、相続登記による名義変更は、法務局により申請を却下されてしまいます。

再度、遺産分割協議書を作成し、すべての相続人から署名・捺印を貰うことになりかねません。誰が見ても不動産が特定できるように記載しましょう!

遺産分割協議書と遺産分割協議証明書の違い

相続登記の手続きや金融機関の口座の解約手続きなどでは、遺産分割協議書の提出が求められます。

遠方に住んでいる相続人がいるなどの理由で相続人が一堂に会することができない場合は、遺産分割協議書を郵送で各相続人に回し、順番に署名と捺印をしていくことになります。

しかし、すべての相続人から署名・捺印を頂くには、相続人の人数や状況によりますが、かなりの時間を要します。途中で停滞してしまうことも想定されます。

そこで、速やかに相続手続きを進めたい場合には、遺産分割協議書ではなく遺産分割協議証明書の作成がお勧めです。

ここでは、遺産分割協議書と同様の効果のある遺産分割協議証明書についてご説明します。

相続人1人につき1部ずつ作成する

遺産分割協議証明書

遺産分割協議書では、1枚の書面に相続人全員の署名・捺印が必要となります。

他方、遺産分割協議証明書は、相続人ごとに書面を作成し署名・捺印をします。

そのため、遺産分割協議証明書は、相続人の人数分を作成して一つにまとめることで遺産分割協議書と同様の効果があります。

なお、遺産分割協議証明書では、遺産分割協議書と同様に、成立した合意内容をすべて記載するのが一般的かと思います。

署名・捺印する相続人が相続する相続財産についてのみの内容を記載することもあるのですが、相続登記をする際の添付書面としては、相続人全員の財産を記載する書式が求められます。

遺産分割協議証明書は、相続人が遠方に住んでいる場合や相続人が多数存在する場合に、各相続人の都合を気にせず速やかに遺産分割に係る書類をそろえることができるのが大きなメリットです。

まとめ

ここまで、相続登記をする際に遺産分割協議書をどのように用意すればよいのかについて解説してきました。

また、相続登記をする際に遺産分割協議書が必ずしも必要ではないことに加えて、相続人が遠方にいる場合や相続人が多数である場合は、遺産分割協議証明書の活用についてもご紹介をしました。

相続財産がご自宅ぐらいですというご家族は、自身で相続登記に挑戦してみるのもよいかもしれません。

ただし、相続登記も令和6年4月1日からは義務化されます。くれぐれも相続登記の放置は避けましょう!

相続した不動産の売却や相続財産の分割を工夫をしたい相続人の皆さんは、相続に強い不動産会社や専門家に相談することをお勧め致します。

遺産分割協議の内容によっては大きく税金が異なる場合もあります。

また、遺産分割協議書の記載の仕方によっては贈与とみなされるリスクもあります。


司法書士 岡山 司(執筆)
司法書士 岡山 司

人生設計や人生の節目をサポートする会員制の「ひだまり俱楽部」を運営。

相続・税務・保険・不動産・FPと「暮らしの安心・安全」を提案し解決するアドバイザー。

近年は、お部屋の整理収納や妊婦さん・高齢者・離婚のカウンセリングなど暮らしにおけるカスタマーサービスの充実を図っております。

認知症対策として注目される「民事信託」をはじめ、多数の「相続・遺言」セミナーの講師として活躍中!