法定相続人の範囲と相続順位とは?わかりやすく解説

カテゴリ:マンション売却と相続
投稿日:2022.07.12

法定相続人の範囲と相続順位とは?わかりやすく解説

配偶者や親が亡くなると自身が相続人であることは、想像がつくと思います。

では、亡くなられた方(被相続人)に配偶者や子供がいなかったり、身寄りが兄弟姉妹しかいないケース、また、法定相続人が既に死亡しており代襲相続となったり、相続放棄を予定しているケース、さらに、離婚、養子縁組をしているケースなどではいかがでしょうか?

このようなケースでは、民法で規定されている相続人の範囲と順位を正確に把握することで、自身が相続人であるのか、又は気になるあの人が相続人となるのかを確認することができます。

そこで、今回は、ケースごとに遺産を相続することができる法定相続人を特定するべく「相続範囲と相続順位」について、図を活用しながらわかりやすく解説していきます。

相続順位はどのように決まる?

相続手続きでは、亡くなった方を被相続人といいますが、その被相続人の遺産を承継できる権利である相続権のあるものを相続人といいます。

相続人の範囲は、民法により規定されています(民法886条から895条)。

また、相続権を付与される相続人には、被相続人との関係から優先順位が付されています。優先順位の高い者が、相続権ある法定相続人となります。

法定相続分で相続する場合

法定相続分とは、被相続人の財産を同順位の相続人が相続するときに、民法により規定された相続割合のことです(民法900条)。

被相続人が遺言書を残していれば、通常、遺言を作成した被相続人の意思に従って遺産を分配することになります。

他方、遺言書がないと、相続人全員の話し合いによって遺産分割協議が行われます。

遺産分割協議では、どのような割合で分割しようが相続人全員が納得している限り自由です。

法定相続分は、相続税の計算をする際に使用したり、遺産分割協議が整わないときに家庭裁判所での調停・審判となった際の相続人間の公平を図るための基準となります。

そのため、遺言書を作成する際や遺産分割協議をする際にも、法定相続割合を意識すると公平な相続が実現できるといえます。

相続順位によって相続割合が異なる

相続のパターンは7つです。

被相続人に配偶者がいると、その配偶者とともに優先順位の高い者が相続人となります。

相続順位による法定相続割合

子や親、兄弟姉妹が複数あるときは、各相続人の相続分は均等です(民法900条)。

例えば、被相続人の家族が妻と子ども2人、母親の場合には、配偶者である妻は、常に相続人となります。

また第1順位の子どもがいる以上、第2順位の母親は相続人となることはできず、子供2名が配偶者(妻)とともに相続人となります。

このときの相続割合は、配偶者(妻)1/2・直系卑属(子ども)1/2となり、子どもが複数2名あるため、均等に分配し、子どもは各1/4の割合で相続することになります。

相続順位を分かりやすく解説

亡くなった方(被相続人)と親族関係があるからと言って、皆がみんなその相続人となれるわけではありません。

法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者と被相続人の血族でありますが、血族相続人には相続順位が定められています。

ここでは、法で定められている相続順位のルールを見ていきましょう。

配偶者

配偶者

被相続人の配偶者(亡くなった方の妻又は夫)は、常に相続人となります(民法890条)。血族相続人がいる場合は、その者と同順位で共同で相続することになります。

この点、配偶者とは、婚姻届けを提出している法律上の婚姻をしている配偶者に限られます。内縁配偶者・事実婚では、そのパートナーが相続人となることはできません。

なお、別居状態や離婚協議中であっても離婚していない限り相続人となることができます。

第1順位・子や孫

第1順位・子や孫

被相続人の子供が第1順位の法定相続人となります(民法887条1項)。

被相続人が亡くなる際に、配偶者に胎児がいるとその胎児も母体から生きて生まれることを条件に相続人となります(民法886条)。

第2順位・父母や祖父母

第2順位・父母や祖父母

第1順位の法定相続人が全ていない場合に、第2順位の父母や祖父母が相続人となります。

つまり、第1順位の子・孫・曾孫若しくは玄孫などの直系卑属が全ていないことが必要です。

ただし、親等の異なる者の間では、被相続人に近い者が優先的に相続人となります(民法887条1項1号)。

例えば、父母が既に亡くなっているような場合は、存命である祖父若しくは祖母が第2順位の相続人となることができます。父、若しくは母がいる限り、祖父母が相続人となるこはありません。

第3順位・兄弟姉妹

第3順位・兄弟姉妹

被相続人の子や孫、若しくは父母や祖父母といった第一順位・第二順位にあたる法定相続人がいない場合には、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります(民法889条1項2号)。

被相続人の相続開始時に兄弟姉妹の誰かが既に死亡その他相続権を失っているような場合には、その子である甥・姪が代わりに相続(代襲相続)することができます。

ただし、第一順位の子・孫・曾孫・玄孫と違って、兄弟姉妹の場合には、その子である甥姪までしか代襲できません(民法889条2項)。

どこまでが相続人になる?

本来、相続人となるはずであったものが、被相続人より先に亡くなっているようなケースもあります。

このようなケースでは、誰が相続人となるのでしょうか?

「代襲相続」というケースも

代襲相続

被相続人の子が、相続開始以前に死亡していたとき、又は相続人の欠格事由に該当し、若しくは被相続人の廃除によって相続権を失っているような場合には、その者の子(孫又はひ孫など)がその者の相続人たる地位を引き継いで相続人(代襲相続人)となります。

これを代襲相続といいます。

被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合も同じです(民法889条1項2号)。

もっとも、兄弟姉妹での相続の際の代襲相続は、甥姪までとなります(民法889条2項)。

【パターン別】相続順位シミュレーション

被相続人が独身

被相続人が独身

被相続人が独身の場合は、常に相続人となる配偶者がいないことになります。

そのため、相続人となり得る相続権を有するのは、その子や孫などの第1順位の直系卑属、直系卑属が誰もいない場合には親や祖父母といった第2順位の直系尊属、直系尊属が誰もいなければ、第3順位の兄弟姉妹といえます。

第3順位の兄弟姉妹や甥姪もいないような場合には、法定相続人がいないことになり、遺産は国庫に帰属することになります。

このような場合には、自身がお世話になった方に遺産の一部を遺贈したり、団体に寄付するための遺言の作成や死後事務委任契約の検討をするのもひとつです。

子供がいない

子供がいない

被相続人に子供など第一順位の直系卑属がいない場合は、常に相続人となる配偶者と第2順位若しくは第3順位の相続人と相続することになります。

配偶者が存しなければ、優先順位が勝る血族相続人で共同で相続することになります。

子供しかいない

子供しかいない

子どもしかいない場合は、常に相続人となる配偶者がいないため、子供は第1順位であるため、子供だけで相続財産を均等に相続することになります。

相続人のうち1名が相続放棄

相続人のうち1名が相続放棄

被相続人の死亡の事実を知り、かつそれによって具体的に自分が相続人となったことを知った時から3か月以内であれば家庭裁判所への申述により相続を放棄することができます(民法915条)。

相続放棄によりその相続に関しては相続人は初めから相続人とならなかったものとみなされます(民法939条)

つまり、相続放棄がなされると、相続人は被相続人の死亡時である相続発生時にさかのぼって相続しなかったのと同様の地位となります。

そのため、相続放棄者において代襲相続もなく、相続放棄をした相続人を除く同順位の相続人と相続することになります。

被相続人に離婚した元配偶者がいる

被相続人に離婚した元配偶者がいる場合

被相続人に離婚した元配偶者いる場合は、離婚した元配偶者は相続人となることはできません。相続における配偶者とは、法律上の婚姻をした配偶者を指します。

そのため、離婚が成立している場合には、相続権は認められません。

他方、婚姻関係が破綻しているような場合、例えば、別居状態が長年続いていたり、離婚調停中であっても、法律上の婚姻が成立しているため相続権は認められます。

被相続人に内縁の配偶者がいる

被相続人に内縁の配偶者がいる場合

被相続人に内縁関係者がいる場合には、その内縁関係者は相続人となることはできません。相続における配偶者とは、前述のとおり、法律上の婚姻をした配偶者を指します。

そのため、事実婚・内縁関係のような場合には、そのパートナーに相続権は認められません。

他方、婚姻関係が破綻しているような場合、例えば、別居状態が長年続いていたり、離婚調停中であっても、その配偶者は法律上の婚姻が成立しているため、相続権が認められて相続人となります。

被相続人に養子がいる

養子は、養子縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得します(民法809条)。

つまり、養子縁組によって養親の血族との間にも親族関係が発生し、養親と養子との間には互いに相続権があることになります(民法887条・889条)。

この点、注意すべきことは、養子縁組にかかる代襲相続についてです。

代襲相続とは、被相続人よりその子が先に亡くなっている場合に、その子、つまり孫が代わりに相続することを言います。

養子縁組後に生まれた養子の子は、養親とも法定上の血族関係が生じることに問題がないため代襲相続ができます。

他方、養子縁組前から存する養子の子、つまり養子の連れ子は、養親との間には法定血族関係が生じません。

そのため、法定血族関係がない以上は、代襲相続もあり得ません。

養子縁組の効力の発生が養子縁組の成立時点であり、出生時にさかのぼらないことから、養親の相続権を取得する資格も養子縁組の成立時点となるためです。

相続人同士とのトラブルを防ぐには

相続対策としては、誰に何をどのように引き継がせるのかといった分割対策、相続税等の節税対策・納税対策、さらに人生100年時代を乗り切る認知症対策が必要となります。

とりわけ、相続が発生した際の相続人間での相続トラブルを防止するためには、家族構成や家族関係にもよりますが、相続人間の公平を考慮した遺言書の作成、または家族信託の締結が必要といえます。

遺産分割協議書を作成する

遺言書の作成や家族信託の締結による相続対策をしていないご家族の場合には、相続手続きにおいて、相続人全員によって、誰が何をどのように相続するのかを合意する遺産分割協議が必要となります。

この点、遺産分割協議は、遺産の種類や性質、各相続人の年齢・職業・心身の状況や生活状況その他一切の事情を総合考慮し進めていくべきですが(民法906条)、すべての相続人が合意さえすれば協議内容は自由です(民法907条1項)。

しかし、相続人にはそれぞれの事情があります。

そのため、遺産分割協議がまとまらないこともあります。

そのような場合には、家庭裁判所での調停や審判においては、法で定められた相続人の順位によって定められた法定相続割合を基準に手続きが進められていることが参考になります。

遺産分割協議が難航している際には、法定相続割合を基準に協議を進めるのも公平な相続を実現する手段のひとつといえます。

遺産分割協議成立後には、それを証するため遺産分割協議書を作成し、相続人全員が署名・捺印をしましょう!

まとめ

遺言者は、各相続人の相続分や誰がどの遺産を承継するかを遺言書を作成することによりその意思によって実現することができます(民法902条)。

しかし、平成29年度の法務省調査によると75歳以上の方で自筆証書遺言や公正証書遺言を作成したことがない人が88.6%というデーターがあります。

多くのご家庭で、相続対策や認知症対策がとられていないことが伺えます。

このようなご家庭を想定し、これまで見てきたように誰が相続人になるのかの相続人の範囲であったり親族間の優先順位や同順位の相続人間の相続分について、法定されています。

相続人の範囲・相続順位や法定相続割合は、あくまでも公平な相続を実現するための法で定められた基準に過ぎません。

ご家族に合った相続を実現し、家族間の紛争を防止するとともに人生100時代を乗り切るためには、専門家を交えるなりしてご家族皆さんで対策をとることを検討しましょう。


司法書士 岡山 司(執筆
司法書士 岡山 司

人生設計や人生の節目をサポートする会員制の「ひだまり俱楽部」を運営。

相続・税務・保険・不動産・FPと「暮らしの安心・安全」を提案し解決するアドバイザー。

近年は、お部屋の整理収納や妊婦さん・高齢者・離婚のカウンセリングなど暮らしにおけるカスタマーサービスの充実を図っております。

認知症対策として注目される「民事信託」をはじめ、多数の「相続・遺言」セミナーの講師として活躍中!