オーバーローン物件と任意売却|注意点や流れについても解説

カテゴリ:マンション売却
投稿日:2024.09.12

離婚や会社の倒産等により住宅ローンの支払いが困難な場合は、自宅の売却を検討します。しかし、原則としてオーバーローンの状態では不動産売却をすることはできません。そこで、オバーローンとは何か、オーバーローンでも不動産を売却する方法と注意点や流れについて解説します。

オーバーローンとアンダーローン

オーバーローンとアンダーローン

まず、オーバーローンとその対になるアンダーローンについて解説します。

オーバーローンとは

オーバーローンとは住宅ローンの残債が不動産の売却価格を上回っており返済額が不足している状態のことです。ひと昔前は、不動産の価格は下落傾向にあったので不動産を取得すると同時にオーバーローンの状況になり、住宅ローンを一定期間返済することでオーバーローンの状況を脱する事ができました。

アンダーローンとは

アンダーローンとは住宅ローンの残債が不動産の売却価格を下回っており、売却時に手残り分が発生する状態のことです。昨今、不動産価格の上昇により、特に都心部では、不動産を取得して数か月で売却価格が住宅ローンの残債を上回るというケースも見受けられます。

オーバーローンの確認方法

オーバーローンの確認方法/残高証明書
出所:三菱UFJ銀行HP

ご所有物件がオーバーローンか否かは、売却のタイミングに依存します。オーバーローンか否かを確認する方法について解説します。

住宅ローンの残債を調べる

まず、住宅ローンを借り入れした金融機関から毎年届く住宅ローンの残高証明書ローン返済計画書を確認してみましょう。上記画像「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」に記載されている年末残高の欄が年末時点での住宅ローンの残高になります。

残高証明書は毎年送ってくる金融機関もあれば、請求することで送ってくる金融機関もありますのでまずは、電話やメールで問い合わせをしてみるのが良いでしょう。

大手金融機関の問い合わせ先は下記の通りです。

三菱UFJ銀行

TELでの問い合わせ

三井住友銀行

SMBCダイレクトから返済予定表を確認

みずほ銀行

各種問い合わせ方法があり

所有物件の予想売却価格を把握する

所有物件の売却価格を把握するには3つの方法があります。3つの価格を総合的に勘案して所有物件の売却額の水準を把握しましょう。

相場から売却価格を予想する

suumoや郵便ポストに入ってくるチラシを確認してどれくらの価格で自分の所有している土地やマンションが販売されているのか把握しましょう。

注意すべき点は、不動産の価格は色々な要素が総合的に勘案されて価格が決まるため、正確に把握する事は困難です。あくまで幅として捉えることに留めて固執しないようにしてください。

仲介会社に査定依頼をする

仲介会社に売却相談をして不動産査定を依頼します。仲介会社は不動産のプロなので信頼性のある査定額の提示を受ける事ができます。

但し、仲介会社に依頼して契約する場合は、仲介手数料が発生しますので注意が必要です。また、仲介会社はお客さんを抱えている訳ではなく、新規で買主を探すため、売れるまでに時間がかかるケースもあります。

マンション売却相談センターに無料査定依頼をする

マンション売却相談センターは、マンションの買取を専門にしているため、価格査定のスピードと高い買取価格の提示には自信があります。また、直接買取をするため、仲介手数料もかかりません。売り急いでいる方やまずは査定価格を知りたいという方は、マンション売却相談センターに無料査定依頼することをおすすめいたします。

オーバーローンか否かを把握する

住宅ローンの残債と所有物件の売却予想価格を把握したら、どちらが大きい金額が比較して所有物件がオーバーローンの状態なのでアンダーローンの状態なのか判断しましょう。

例1)ローンの残債:5千万円 売却価格:6千万円

住宅ローンの残債<売却価格 

になるため、アンダーローンの状態で諸経費を除き1000万円が手元に残る計算になります。

例2)ローンの残債:5千万円 売却価格:3千万円

住宅ローンの残債>売却価格 

になるため、オーバーローンの状態で諸経費を除き2000万円が不足している状況です。

オーバーローンのおすすめ対処方法

オーバーローンの場合は、原則として不動産を売却する事はできませんが対処方法はあります。具体的には、「収入に余裕がある方向けの対処方法」と「住宅ローンが払えない方向けの対処方法」の2つです。まずは、収入に余裕がある方向けのオーバーローンの対処方法について紹介します。

差額を自己資金で賄う

オーバーローンを解決する一番簡単な方法は、残債の不足分を貯金で賄ったり、親族から借りてくるという方法です。一番簡単な方法ですが、条件が難しい事から誰にでも利用できる方法ではありません。

住み替えローンを利用する

住み替えローンとは、現在住んでいる住宅のローンの残債と新しい住宅を購入するための資金を合算して借り入れできるローンのことです。デメリットとしては、審査が厳しい事と、金利が現在の金利よりも高くなるケースが多い事です。具体例で説明します。

住宅ローンの残債:4000万円① 売却予想価格:3000万円② 新規購入物件:2000万円③

売却後の住宅ローンの残債:4000万円-3000万円=1000万円(④)①-②

住み替え後のローンの残債:2000万円+1000万円=3000万円(⑤)③+④ 

住み替えによりローンの残債は4000万円(①)から3000万円(⑤)に圧縮されます。

住み替えローンには、デメリットもありますので、転居を考えており収入的にも余裕がある方でなければ現実的な利用は難しいかと思われます。

売却を延期する

売却する必要性が低い場合には、一旦売却を延期するのも1つの手段になります。

都心部では、2024年9月現在、不動産価格が年間10%前後値上がりしています。また、月々の住宅ローンの支払いを続けていくことで残債も減っていきますので価格の上昇+住宅ローンの返済により、自信が考えているよりも早くアンダーローンになる可能性はあります。

ここまでが、「収入に余裕がある方向けの対処方法」になります。しかし、住宅ローンを払うことが厳しくて、住宅ローンから解放されたいから持ち家を売却したいと考えていても、オーバーローンだと不動産を売却する事はできないのでしょうか?その解決策について紹介します。

住宅ローンが払えない時は任意売却

住宅ローンの支払いが厳しくオーバーローン物件場合は、任意売却をおすすめします。まず、任意売却の説明とメリット・デメリットについて解説します。

任意売却とは

任意売却とは、下記の2つの要件を同時に満たしているときに成立する売却方法です。

  • 債務が支払えず滞納が続いている状況
  • 金融機関等の債権者の同意を得る

任意売却のメリット

不動産を売却した場合は、原則として住宅ローンを一括で全額返済しなければならず、一括返済できない場合は債権者の許可は下りません。しかし、任意売却は、事前に債権者と交渉・同意を得ることで「特別に」住宅ローンの残債の不足分が残った状態で不動産を売却する事が可能な売却方法です。

任意売却のデリット

任意売却のデメリットは下記の2つです。

ローンを組めない

任意売却になると住宅ローンを滞納している状況となり、金融機関の所謂ブラックリストに掲載されます。ブラックリストに載ると一定期間クレジットカード作成できなくなったり、新たにローンを組めないというデメリットがあります。なお、このような制限を受ける期間は、一般的にはブラックリストに掲載後7年程度になります。

自己破産の可能性

任意売却が成立しなかった場合は、競売からの自己破産で色々な方に迷惑をかけてしまう可能性があります。詳しくは下記の記事を参照してください。

任意売却と競売の違いは?競売と任意売却はどちらが得でおすすめなの?

住宅ローンが払うのが厳しいという理由で、任意売却成立要件である「住宅ローンの滞納」をわざと行うのはおすすめできませんので、弁護士や任意売却専門の不動産会社とよく相談をして、安易な行動は控えるようにしてください。

オーバーローン物件を任意売却する時の6つの注意点

オーバーローン物件の住宅ローンを既に滞納しており、任意売却を検討している場合は、6つの注意点に留意する必要があります。

  • 任意売却できないケースもある
  • 任意売却物件の調査・内覧に協力
  • 任意売却専門会社と残債の返済を相談
  • 通常売却と違い任意売却は売りにくい
  • 任意売却の専門業者を選ぶ
  • リースバックは注意が必要
  • 迅速な相談が重要

任意売却できないケースもある

任意売却は必ず成立する訳ではなく債権者の同意を得られなければ成立しません。また、任意売却ができないケースとして債権者の同意が得られない以外にも下記の理由で任意売却ができないケースもあります。

  • 連帯保証人の同意が得られない
  • 共有名義人・相続人の同意が得られない
  • 任意売却の買い手がつかない・売れない

各ケースの詳細については、任意売却できないケースとは?買い手がつかない原因と対処方法を参照ください。

任意売却物件の調査・内覧に協力

任意売却は通常の不動産と同様に不動産会社が価格査定に室内を調査したり、売却活動において買主が内覧に来たりします。その際に、仕事が忙しかったり中を見られたくないからといって非協力的になると売れる物件も売れなくなります。色々事情はあるかもしれませんが、調査・内覧には積極的に協力してお住まいになっていた時の良かった点等をアピールして不動産価値を高めましょう。

任意売却専門会社と残債の返済を相談

任意売却は、住宅ローンの残債を減額するわけではありません。売却後の返済計画については、債権者と直接交渉をして決定します。

債務者としては、「本当に」無理がない返済額を要求したいと思いますが、債権者も少しでも回収しようとしてギリギリの返済額を請求してきます。ここで妥協をしてしまうと任意売却は成立しても生活は楽になりませんのでギリギリの交渉をしなければなりません。

しかし、任意売却の交渉は不慣れだと思いますので任意売却専門業者や弁護士の出番となります。彼らは、債権者との直接交渉はできませんが、相談やアドバイスはしてくれますので、しっかり打ち合わせを行って債権者との交渉に臨みましょう。

通常売却と違い任意売却は売りにくい

任意売却は通常の不動産取引と同様の販売方法によりお客さんを集客します。しかし、買主が見つかり契約する際には、通常売却とは違い下記6つの特約を不動産売買契約書に盛り込む必要があります。買主によっては、これらの特約を嫌がる場合もあることから、通常売却と違い任意売却は売りづらいので注意が必要です。

  • 契約不適合責任の免責特約
  • 債権者の同意を条件とする特約
  • 公簿売買に関する特約
  • 境界を非明示とする特約
  • 動産撤去は買主負担とする特約
  • 手付金ゼロ契約(必ずではない)

任意売却の専門業者を選ぶ

オーバーローンの場合は、債権者の同意を得ることが最大の難関になります。住宅ローンの残債から売却代金を差し引いた残りの債権は、債権回収が困難な無担保債権になるためです。

債権者の同意を得るために、不動産会社は任売物件の査定書を提出して売却価格の妥当性について債権者に理解してもらう必要があります。しかし、債権者の理解を得られるような査定書の作成及びその後の交渉は、任意売却に不慣れな不動産会社にとって難しい作業です。そのため、任意売却の専門業者の豊富な知識と経験が必要になります。

リースバックは注意が必要

インターネットを見ていると任意売却物件をリースバックしませんかというサイトが見受けられます。リースバックとは、第三者に所有資産を売却すると同時に賃借する取引方法です。不動産業者がリースバックを行う場合は、利益追求のために安く買い取って高い賃料で受け入れる仕組みのため、親族等の知り合いが貸主となるリースバック以外は注意が必要です。

迅速な相談が重要

オーバーローンの場合は、先延ばしにするほど、滞納額と遅延損害金が大きくなり債権者の同意を得る事が難しくなります。任意売却を決断した場合は、迅速に任意売却の専門家である不動産会社や弁護士等に相談することをおすすめいたします。

オーバーローン物件を任意売却する流れ

オーバーローン物件を任意売却する流れについては下記の通りです。

  1. 相談・不動産会社の選定
  2. 調査・査定
  3. 金融機関と交渉と販売活動
  4. 売買契約
  5. 引っ越し・引き渡し
  6. 残ったローンの支払い

1.相談・不動産会社の選定

インターネットや紹介により任意売却の専門業者を探してみてください。

年末年始やゴールデンウィークをはじめ、年中無休で問い合わせ可能な会社もあります。

2.調査・査定

選定された不動産会社は、ご自宅を査定の上、周辺相場を調べて資産価値を算定します。その上で、できるだけ有利な条件で任意売却を進めるためにはどうすればよいか、金融機関への対応はどのような手続きをすれば良いのかを案内してくれます。

3.金融機関と交渉と販売活動

不動産会社は調査と査定結果を踏まえて金融機関との交渉を開始します。また、不動産の販売活動も同時に始めていきます。

4.売買契約

購入希望者が決まったら、不動産売買契約を交わします。売主・買主はもちろん、すべての関係者の同意を得て引き渡し日を迎えます。

5.引っ越し・引き渡し

引っ越しをして、引き渡し日に備えます。

引き渡し日は、買主から受け取った売買代金から諸費用を控除して残りを債権者に支払い住宅ローン債務を精算します。

6.残ったローンの支払い

オーバーローン物件の任意売却は、引き渡し日以降も、事前に債権者と交渉して決めた金額を毎月支払って住宅ローン残債の完済を目指します。

なお、アンダーローン物件の任意売却は、物件を売却すればローンの支払いから解放されます。

まとめ

任意売却とオーバーローンについて解説してきました。

オーバーローン物件は、原則不動産売却をすることはできませんが対処方法はあります。

対処方法の1つである任意売却は、デメリットや注意点もあるので安易に選択することはおすすめできません。住宅ローンの返済に困窮している場合にのみ利用すべき売却方法です。困った場合は、任意売却専門の不動産会社や弁護士に相談してみてください。


(著者
今井 俊輔【不動産鑑定士宅地建物取引士

2006年東京テアトル株式会社に入社。不動産鑑定により培った「理論」と不動産取引実務の「経験」に基づき、一棟オフィスビルをはじめ多岐にわたる不動産物件の売買に携わる。現在は管理職として区分所有マンション担当若手社員の育成にも力を注ぐ。

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