兄弟姉妹が遺産相続できる割合とは?トラブル事例も紹介
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2022.07.25
家族(被相続人)が亡くなり、相続が発生すると、一般的には遺言書がある場合には遺言に従って相続手続きをすることになります。遺言書がない場合には、相続人全員での遺産分割協議による合意に従って、相続手続きをすることになります。
遺産相続の手続きの中で、トラブル事例が多いのが、親が亡くなりその子である兄弟姉妹が相続人となる場合と兄弟姉妹の誰かが亡くなり相続人がその兄弟姉妹となる場合です。
相続発生まで、兄弟姉妹の間の仲が良かったからと言って安心できるものではありません。
「争族」となり、兄弟姉妹間で相続紛争へと発展する事例は少なくありません。
そこで、兄弟姉妹間の相続手続きについて、遺産相続できる割合と兄弟姉妹に起こりがちな相続トラブルについて、事例を交えてご紹介したいと思います。
目次
遺産相続、兄弟姉妹でもめることが多いケースとは?
相続人が兄弟姉妹のみとなると、相続トラブルに発展してしまう可能性は高いといえます。
両親が既にいないため、兄弟姉妹間という子どもたちの紛争トラブルに歯止めをかける家族がいないというのが一番の要因です。親を気にすることなく言いたいことを言える環境があるということです。
そこで、どのような場合に揉め事が起こるのか、または起こりやすいのかを列挙してみました。
親の介護をしていた兄弟姉妹がいる
【相続財産が不明確】
親と同居していた兄弟姉妹がいる
【特別受益】
生前贈与を受けていた兄弟姉妹がいる
【第三者の参加】
兄弟姉妹の配偶者が遺産分割協議に口をはさむ
【相続人関係が希薄】
既に亡くなっている兄弟姉妹がいるため甥・姪が相続人となる
【公平な分割】
相続財産が不動産のみ
まずは「相続順位」と「相続割合」を理解しよう
家族や親族が亡くなり、相続が発生すると、誰が相続人となりどれだけの相続財産を相続できるのかを知りたいところです。
兄弟姉妹間での相続の紛争を防止するにしても、これらを知らずには対策ができません。
この点、亡くなられた方(被相続人)の所有していた遺産や借金などの法律上の地位を引き継ぐ者を法定相続人というのですが、法定相続人については、民法で定められています。
さらに、法定相続人が相続できる相続割合を法定相続分というのですが、法定相続分も民法で定められています。
ここでは、民法で定められている「相続順位」と「相続割合」について、図とともに分かりやすくご説明します。
相続順位
●配偶者
被相続人の配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。
配偶者とは、法律上の婚姻関係のあるパートナーです。
そのため、被相続人と長期間の別居状態であってもその配偶者は法定相続人となり、逆に一緒に生活をしていても内縁関係の場合には、配偶者といえず法定相続人となることはできません。
配偶者は、順位付けされた法律上の血族相続人と共同で相続人となります。
●【第1順位の相続人】子どもや孫
被相続人の子どもは、第1順位の相続人です(民法887条1項)。被相続人の配偶者がいる場合には、共同で相続人となります。
相続発生時に、既に被相続人の子どもが死亡している場合、又は相続人の欠格事由(民法891条)や廃除(892条)に該当し相続権を失っている場合は、その子の子、つまり孫がいるときは、その孫がその子に代わり相続(代襲相続)をします(民法887条2項・3項)。
●【第2順位の相続人】両親や祖父母
被相続人の子ども・孫・ひ孫など第1順位となる相続人が誰もいない場合は、被相続人の両親や祖父母が第2順位の相続人となります。被相続人の配偶者と共同で相続人となります。
ただし、親等の異なる者の間では、その近い者が法定相続人となります(民法889条1項1号)。
つまり、両親がいれば両親が、両親のうちその片方だけが生きているのであればその親のみが、両親がともに亡くなっているのであれば祖父母が法定相続人となります。
このように被相続人から近しい直系尊属が法定相続人となります。
●【第3順位の相続人】兄弟姉妹や甥・姪
第1順位の相続人と第2順位の相続人が全ていない場合、つまり子ども・孫といった直系卑属と両親・祖父母といった直系尊属の誰一人も法定相続人とならない場合には、被相続人の兄弟姉妹(きょうだい)が法定相続人となります(889条1項2号)。
被相続人の配偶者がいる場合には、共同で相続人となります。
相続発生時に、既に被相続人の兄弟姉妹が死亡している場合、又は相続人の欠格事由(民法891条)に該当し相続権を失っている場合は、その兄弟姉妹の子、つまり甥・姪がいるときは、その甥・姪がその兄弟姉妹に代わり相続(代襲相続)をします(民法889条2項)。
なお、きょうだいの代襲相続は甥姪までとなります。
相続割合
被相続人の兄弟姉妹が相続する場合の相続割合
被相続人に配偶者がいる
被相続人に配偶者がいる場合は、その配偶者は相続欠格事由や廃除原因がない限り、常に法定相続人となり、血族相続人がいる限りその者と共同で相続人となります。
他方、血族相続人においては、被相続人に第1順位の子ども・孫などの直系卑属、第2順位の両親・祖父母などの直系尊属がいない場合、又は相続権がないような場合は、被相続人の兄弟姉妹(きょうだい)が法定相続人となることができます。
法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合の法定相続割合は、配偶者が相続財産の4分の3、兄弟姉妹はみんなで相続財産の4分の1となります。
兄弟姉妹が複数の場合は、その頭数で均等割することになります。
被相続人に配偶者がいない
被相続人の配偶者は常に法定相続人となりますが、未婚や離婚若しくは死亡、又は相続権の喪失により法定相続人となる配偶者がいない場合には、血族相続人のみが法定の順位に従い法定相続人となります。
血族相続人においては、被相続人に第1順位の子ども・孫などの直系卑属、第2順位の両親・祖父母などの直系尊属がいない場合、又は相続権がないような場合は、被相続人の兄弟姉妹(きょうだい)が法定相続人となることができます。
法定相続人が兄弟姉妹のみの場合の法定相続割合は、兄弟姉妹みんなですべての遺産を相続することになります。
兄弟姉妹が複数の場合は、その頭数で均等割することになります。
相続人になる兄弟姉妹に故人がいる
被相続人に配偶者がいる場合は、その配偶者は相続欠格事由や廃除原因がない限り、常に法定相続人となり、血族相続人がいる限りその者と共同で相続人となります。
他方、血族相続人においては、被相続人に第1順位の子ども・孫、第2順位の両親・祖父母がいない場合、又は相続権がないような場合は、被相続人の兄弟姉妹(きょうだい)が法定相続人となることができます。
法定相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合の法定相続割合は、配偶者が相続財産の4分の3、兄弟姉妹はみんなで相続財産の4分の1となります。
相続発生時に、既に被相続人の兄弟姉妹の誰かが死亡している場合、又は相続人の欠格事由(民法891条)に該当し相続権を失っている場合は、その兄弟姉妹の子、つまり甥・姪がいるときは、その甥・姪がその兄弟姉妹に代わり相続(代襲相続)をします(民法889条2項)。
なお、被相続人を基準に子ども・孫・ひ孫・玄孫といった直系卑属の代襲相続の場合と異なり、被相続人の兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までとなります。
被相続人との関係性から、笑う相続人を出さないためと考えられます。
相続人の兄弟姉妹の親から相続する場合の相続割合
被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合のみならず、両親の2次相続が発生した際には、その子である兄弟姉妹のみで相続することになります。
この場合も兄弟姉妹の紛争のストッパーとなる親がいないためトラブルが発生するケースといえます。
そこで、親から子への相続の際の相続割合についても見ていきたいと思います。
兄弟姉妹とその配偶者がいる
被相続人の配偶者は、相続権を喪失していない限り、常に法定相続人です。血族相続人がいる場合は、その者と共同で相続することになります。
血族相続人の最も優先順位が高いのは、被相続人の子や孫といった直系卑属です。
相続発生時に、既に被相続人の子どもが死亡している場合、又は相続人の欠格事由(民法891条)や廃除(892条)に該当し相続権を失っている場合は、その子の子、つまり孫がいるときは、その孫がその子に代わり相続(代襲相続)をします(民法887条2項・3項)。
法定相続人が配偶者と子どもの場合の法定相続割合は、配偶者が相続財産の2分の1、子どもは兄弟姉妹みんなで相続財産の2分の1となります。
第1順位である子が複数いる場合は、頭数で均等割りにします。
配偶者がおらず、兄弟姉妹のみ
2次相続により親が亡くなった場合、子どもが第1順位の法定相続人となります。
子どもが複数いる場合は、頭数で均等割することになります。
兄弟では「遺留分」が認められない?
被相続人が遺言書を残されていた場合には、その遺言の内容に従い相続手続きを進めるのが通常です。
遺言は、原則、法定相続分よりも優先されることになります。
遺言書は、法の要式に従い作成された書面による遺言者の意思を尊重し、その者の死後に意思を実現する法的効果を認める法制度だからです。
妻や子どももいないような方の場合、遺言により、自身が亡くなった時には、自宅マンションなど不動産を遺言執行者に売却してもらい換金したうえで懇意にする団体へ寄付する方もいらっしゃいます。
そのため、遺言の内容によっては相続人が相続財産を相続できず、第三者が相続財産のすべてを受け取るようなケースもあります。
そのようなことを想定して民法では、遺留分制度を定めています。
遺留分とは、相続の場合に、法定相続人を保護するために、一定の範囲の法定相続人に対して、相続財産の一定の割合を最低限保障する法制度です。
この点、遺留分制度は、被相続人の財産処分の自由や取引の安全と相続人の生活の安定や相続財産の公平な分配との調整を図ることをその趣旨とします。
そのため、被相続人の兄弟姉妹以外の法定相続人に遺留分が保障されています(民法1042条1項)。
遺留分を侵害された法定相続人は、他の相続人や遺贈・贈与を受けた者に対して、その侵害額に相当する金銭の請求をすることができます(民法1046条)。
例えば、法定相続人が配偶者と子どもの場合、配偶者と子どもの遺留分は、相続財産の4分の1ですが、子どもが2人いる場合は、4分の1に法定相続分を乗じた額となるため子ども2人はそれぞれ8分の1となります。
被相続人が遺言により「遺産はすべて内縁の配偶者に遺贈する」という遺言を残していると、配偶者と子どもは、侵害されている遺留分の金額を内縁配偶者へ請求できます。
このケースで法定相続人が被相続人の兄弟姉妹の場合は、遺留分がないため、内縁配偶者への相続財産に対する主張はできません。
兄弟姉妹で相続する場合の注意点
被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合は、被相続人の子どもや孫、さらに両親や祖父母もいないということになります。
そのため、兄弟姉妹より優先順位の高い、第1順位・第2順位の相続人がいないことを証明しなければなりませんし、被相続人とは直系ではなく傍系血族という関係のため、相続税の税率が割高となっています。
戸籍の収集には手間と時間がかかる
被相続人の兄弟姉妹が法定相続人として相続手続きを進めていくためには、第1順位・第2順位の相続人となるべき者が無く、第3順位の兄弟姉妹が相続人であることを連続した戸籍謄本等を取得することによって手続きの相手である第三者に客観的に証明する必要があります。
では、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合には、どのような戸籍を収集しなければならないのでしょうか?
まずは、被相続人の出生から死亡までの連続した現在戸籍・除籍・改製原戸籍といった戸籍一式を取得して、第1順位である子どもがいないことと代襲相続人となる孫やひ孫等の直系卑属がいないことを証明します。
次に、被相続人の両親の出生から死亡までの連続した戸籍一式と祖父母が既に死亡していることの記載のある除籍謄本を取得することによって、被相続人に第2順位である両親や祖父母といった直系尊属がいないことと兄弟姉妹が誰なのかを証明します。
さらに、法定相続人である兄弟姉妹については、現在戸籍を取得することにより被相続人の死亡時に健在であり、法定相続人であることを証明します。
もっとも、被相続人の相続発生時に既に兄弟姉妹の誰かが亡くなっており、その兄弟姉妹の子、被相続人から見た甥・姪が代襲相続人として法定相続人となる場合には、相続開始前に亡くなっているその兄弟姉妹の出生から死亡までの戸籍一式を取得する必要があります。
このように、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人の場合は、収集する戸籍一式の量が膨大となり、手間暇を要するケースが多く、効率よく取得しないと余分な費用と時間を費やすことも予想されます。
また、判読の難しい古い戸籍においては、相続人を特定するため読み解くスキルも必要となります。
被相続人の兄弟姉妹の相続に関して、戸籍の収集から相続人の特定においては、司法書士などの専門家に依頼することをお勧め致します。
相続税が20%ほど割高になる
被相続人の遺産を誰が相続したかによって、相続税の金額が2割加算される場合があります。
被相続人の配偶者、さらに子どもや両親が法定相続人となる場合には、2割加算はされませんが、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人となる場合には、2割加算されます。
これは、配偶者、さらに子どもや両親といった被相続人から見た一親等の血族は、被相続人の遺産をもって生活を保護する必要性がありますが、他方、兄弟姉妹が法定相続人となる場合には、偶然の事情により利益を享受した面が大きいと考えられるため、2割加算されるものといえます。
また、世代を飛び越えて相続財産を相続することで、相続税の納税を1度免れるようなことは税制上、見逃すことができません。
兄弟姉妹の遺産相続でよくあるトラブル事例
相続手続きにおけるトラブルのなかで、意外と多いのが兄弟姉妹の間でのトラブルです。
兄弟姉妹が法定相続人となるケースでは、両親が既に他界しているため、それまで仲の良い兄弟姉妹であったとしても、意外と相続トラブルに発展してしまうケースが少なくありません。
ここでは、兄弟姉妹間での相続トラブルについて、いくつか事例をご紹介します。
親の介護をしていた兄弟姉妹がいる
親と同居していたり、近所に住んでいる子どもが、親の生活のサポートや介護の負担を集中して背負うことはよくあることです。
このようなケースで、親の相続が発生した際には、親の生活サポートや介護をしてきた兄弟姉妹が他の兄弟姉妹に代わって親のケアーをしてきたのだから、多くの遺産を取得させてほしいと主張することがあります。
他方、親のケアーをしていない兄弟姉妹からは、親子で同居又は近隣に住んでいる子どもが親の面倒を見るのは当然だと反論し、トラブルとなるケースがあります。
このようなケースでは、寄与分が問題となります。
寄与分とは、共同相続人の中に、被相続人の事業に関する労務の提供、又は財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者があるときは、被相続人が相続開始の時において有していた財産の価額から共同相続人の協議で定めたその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなし、法定相続分や遺言による相続分の指定(民法900条~902条)により算定した相続分に寄与分を加えた額をもってその者の相続分とする法制度です(民法904条の2)。
このように寄与分が認められるためには、親の財産の維持や増加についての特別な寄与が必要となります。
そのため、社会通念から親子関係で行われる生活や介護のサポートでは、寄与分が認められないことも十分あります。
しかし、親のケアーをしてきた兄弟姉妹への労をねぎらう他の兄弟姉妹からの感謝の気持ちが伝わらないと、兄弟姉妹間でトラブルとなってしまい絶縁状態となるケースもあります。
兄弟姉妹間で寄与分について話し合いをし、その結果、協議が整わないときは、家庭裁判所を介して寄与分を定めることになりかねません。
相続手続きの際での寄与分の協議は、慎重さと相互理解が求められます。
想定よりも遺産が少なかった
相続人である兄弟姉妹が思っていたより親の相続財産が少ないと主張し、他の兄弟姉妹が親が高齢であることにつけこみ財産を隠していたり、使い込んでいたのではないか?と疑念を抱いて相続トラブルに発展してしまうケースがあります。
とりわけ、親と同居していたり、借金癖のある兄弟姉妹がいる場合に多く見られます。
このようなケースでは、親がどのような生活をし、どのような財産があったのかが不明確であることが大きな要因となります。
遺産分割協議の際には、親がどのような生活をし、どのような財産があるのかについて、金融機関の通帳の履歴や領収書など相続財産に係るすべての資料を開示し、兄弟姉妹間で共有することが大切です。
不動産などの分割が難しい遺産がある
相続財産に占める不動産の割合は、40%と言われております(国税庁の「令和2年分相続税の申告事績の概要」より)。とりわけ、金融資産の割合が少ないご家庭では遺産総額のうち不動産の価値の占める割合はより高くなります。
この点、土地や建物、マンションといった不動産は物理的に分割できないので、金融資産での調整が困難な場合は、兄弟姉妹間で公平に遺産相続することが難しいケースが出てきます。
このようなケースで兄弟姉妹間で公平に相続することを想定すると、法定相続割合に基づき相続することになります。
しかしながら、不動産そのものを兄弟姉妹間で共有で相続することはトラブルのもととなるため、相続した不動産を売却して換価した現金をもって分割することにより公平な遺産分割を実現することになります(換価分割)。
ただし、相続した不動産で生活している兄弟姉妹がいる場合は、簡単には換価分割を選択することはできません。
この場合は、相続不動産を生活拠点としている兄弟姉妹が不動産を取得する代わりに、不動産の相当額を他の兄弟姉妹に代償金として交付することになります(代償分割)。
問題は、その兄弟姉妹が代償金を準備できない場合は、公平な遺産分割の実現が難しいため兄弟姉妹間でトラブルとなります。
兄弟姉妹の配偶者が介入する
親と同居していた兄弟姉妹が、親の生活サポートや介護の負担を集中して背負ってくれたことから、他の兄弟姉妹がその労をねぎらい感謝の気持ちとして、遺産のすべて又は大部分を分配したいということがあります。
このようなケースで、法定相続人でもない兄弟姉妹の配偶者が、法定相続分の分配を求めて口出しするケースがあります。
このようなケースは「相続あるある」の代表格といえます。
部外者が遺産分割の協議に口出しすると、まとまるものもまとまらず、兄弟姉妹間にしこりを残すこととなります。
遺産分割協議は、相続の専門家を交えることはよくありますが、部外者は協議に可及的に参加させるべきではないといえます。
隠し子が現れる
相続手続きでトラブルを招かない前提として行う手続きが、相続財産の特定と相続人の特定です。
相続人を特定するべく戸籍等を収集する過程で家族の知らないところで親が認知した子や昔出産した子がいることが判明することがあります。
このようなケースでは、兄弟姉妹が知らない者でも、片親の異なる半血兄弟として法定相続人となります。
この者を含めずに行った遺産分割協議は無効となるため、トラブルを予防するためにも相続財産を開示し半血兄弟を含めて相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。
絶縁状態だった兄弟姉妹が現れる
親が亡くなり相続が発生すると、法定相続人となる兄弟姉妹間の一部の関係が絶縁状態となっている場合もよく見かけます。
とりわけギャンブル等で借金を負っている兄弟姉妹がいるケースです。
このようなケースでは、兄弟姉妹にとってトラブルメーカーである兄弟姉妹が、親御さんが亡くなった時に兄弟姉妹の前に現れて、相続財産の分配を請求してくることが少なくありません。
絶縁状態となる契機が、両親や兄弟姉妹から借金をし返済ができていないことによる場合には、特別受益や借金との相殺により相続手続きを進めていくことになります。
特別受益とは、借金返済等のために特定の相続人が被相続人から金銭の贈与を受けた特別な利益です。
このような特別な利益を被相続人から受けた相続人は、公平な相続を実現すべく、法定相続分からその贈与等を受けた価格を控除した残額をその贈与等を受けた相続人の相続分となることがあります(民法903条1項)。
兄弟姉妹間の相続トラブルを防ぐためには
裁判所「司法統計年報」によると、遺産分割調停のうち約75%ぐらいの紛争が、相続財産5000万円以下ということです。そのうち30%が1000万円以下の相続財産で紛争が生じています。
相続人間、とりわけ兄弟姉妹間で「争族」とならないためにも、ご家族や親族での相続に対する生前対策が必要といえます。
遺言書を作成してもらう
兄弟姉妹間が法定相続人となる相続手続きに備えて、生前に財産と推定相続人を把握し、遺言書を作成して誰に何をどのように渡すのかを決めておくことをお勧め致します。
要式と内容に不備のないことが前提ですが、遺言書があると、相続人である兄弟姉妹間で遺産分割協議をする必要がなくなるため、兄弟姉妹間でのトラブルの予防となります。
遺言作成者が親の場合は、子どもたちである兄弟姉妹の遺留分に注意しなければいけません。
ただし、遺言書の作成者が兄弟姉妹である場合は、被相続人が兄弟姉妹であるため遺留分制度の適用が無く、遺留分を気にする必要はありません。
もっとも、財産にマンション等不動産があるような場合には、遺言執行者や予備的遺言や清算型遺贈等に留意して遺言書を作成しましょう。
相続手続きにおける兄弟姉妹間での紛争を防止するためにも、専門家に一度相談することをお勧め致します。
生前に財産内容と分割・管理方法を明確にする
遺言書を作成しないまでも、家族会議・親族会議をすることもひとつの対策といえます。
事前に財産関係を把握し、その内容を理解するとともに、分割・管理方法を明確にすることは有効といえます。
まとめ
これまで、兄弟姉妹間の相続手続きについて、遺産相続できる割合と兄弟姉妹に起こりがちな相続トラブルについて、事例を交えてご紹介してきました。
それらを事前に知ることによって、兄弟姉妹での無用な相続トラブルを防止する一助になると幸いです。
遺産の相続の際には、法定相続人の順位や法定相続割合、さらに遺産分割協議についての基本的な知識が必要です。
また、兄弟姉妹での無用な相続トラブルを防止するためには、事前の対策がとても大切です。
マンション等不動産が相続財産にある場合には、物理的に分割できないため、とりわけ対策が必要です。
兄弟姉妹で遺産相続トラブルになりそうで不安や不満を抱いておられるなら、相続に強い不動産会社や専門家に相談してみましょう。