相続手続きの代行、費用相場とベストな依頼先を解説
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2022.07.26
家族や親族が亡くなり相続が発生すると、役所の手続き、保険会社への保険金の請求、銀行や証券会社での名義変更、不動産登記手続き・相続税の申告、裁判所への申立てなど、それぞれの事情により、さまざまな手続きが必要となります。
相続人が相続手続きに慣れている場合はよいのですが、相続手続きを限られた期限の中で進めることはかなり大変なことです。
相続手続きに四六時中、時間を費やせればよいのですが現実はそうではありません。
亡くなった家族を偲ぶ悲しみの中で、仕事や家事と両立しなければならず、その負担は計り知れません。
膨大な時間と手間を費やす相続手続きでは、要領よく書類を収集・作成して手続きを進めることが求められます。
そのため、手続きへの不安や自信がない相続人は、司法書士・弁護士・税理士・行政書士といった相続に精通した専門家や銀行による相続手続きの代行サービスに依頼する必要があります。
しかし、代行サービスの依頼を検討するうえでは、依頼先ごとの違いや費用相場を理解し適切な依頼先を選別することが大切です。
そこで、ここでは、相続手続きをする上で必ずかかる費用、さらに代行依頼先による違いとその費用相場を解説いたします。
目次
相続手続きって難しい……代行依頼すると費用は?
相続手続き代行とは、読んで字のごとく、相続人に代わって相続手続き全般を代行してくれるサービスです。
主に司法書士や信託銀行などが、商品化しサービスを提供しています。
このようなサービスの場合は、相続財産に一定の比率を乗じて、その金額をサービス費用とする料金体系が多く見受けられます。
相続手続きを代行した方がいいケース
相続手続きには、銀行や証券会社だけの手続きのように相続人ご自身で出来るものもありますが、不動産の名義変更や相続税の申告など複雑なものが多く、期限の制限によるペナルティが課されることもあります。
相続人の中には、仕事や家事、さらに故人を偲ぶプライベートな時間との調整が難しい場合もあるでしょう。
では、どのような方が、相続手続きの代行サービスに依頼をしているのでしょうか?
相続手続きの代行依頼を検討した方が良いケースを見ていきましょう。
相続代行のサービスを依頼した方が良いケースは、次の3つのパターンが考えられます。
- 時間がない、肉体的・精神的につらい
- 賢く・スムーズに相続手続きを進めたい
- 紛争性がある
このようなパターンにあたる方は、相続手続き代行を検討してみてもよいかもしれません。
とりわけ、相続財産に不動産がある・相続税の申告が必要・相続人間でもめているような事情がある場合です。
遺産の内容や相続人の状況によって依頼先はさまざま
相続手続きを丸ごと依頼する主な代行先は次の3つです。
- 司法書士
- 行政書士
- 信託銀行
事案により、紛争性がある時は、迷わずに弁護士に依頼をすべきです。
また、相続税の申告においては、税理士が担当することになります。
次の図では、司法書士・弁護士・税理士・行政書士の相続手続きにおける相談対応を比較しています。
司法書士は、相続人間に紛争性がない限り、多くの相続手続きをカバーしていることが分かります。
他方、信託銀行など金融機関は、司法書士や税理士を手配して手続きの進捗管理をしてくれるため、司法書士同様に多くの相続手続きをカバーしているといえます。
依頼先に関わらず、相続手続きに発生する実費
相続手続きの代行を依頼するにしても報酬のほかに、当然、実費が発生します。
ここでは、相続手続きに発生する実費についてご紹介します。
自分自身で相続手続きをしても発生する費用です。
戸籍謄本や住民票などの費用
相続人を客観的に特定するために、亡くなられた方の出生から死亡までの連続した戸籍等を本籍地のあった各役所で発行してもらいます。
戸籍等は、相続登記や金融機関での名義変更、税務申告の際の添付書面としても必要となります。
戸籍等の発行には、1通あたり300円から750円の費用が発生します。
5通ほど戸籍を収集して相続人を特定できるご家庭もあり、その場合は5,000円もかかりません。
残高証明書や取引証明書
亡くなられた方の相続財産を特定する際に、死亡時点の預貯金がいくらあったかを客観的に明らかにするために、銀行等金融機関に残高証明書を発行してもらいます。
残高証明書は、遺産分割協議の場面や相続税の申告の際の添付書面として必要となります。
残高証明書の発行には、金融機関によっても異なりますが、1通の証明書の発行に1,100円程度の手数料がかかります。
登録免許税
相続した不動産を相続人の名義に変更するには、登録免許税を納付する必要があります。
相続登記をする不動産の固定資産税評価額に4/1000を乗じた額が課税されます。
上の図は、登録免許税の計算方法の詳細です。
毎年4月ごろに役所から送付されてくる課税明細書に記載されている土地や建物の評価額をもとに算出できます。ご自身のお手元にある課税明細書をもとに計算してみてください!
未払いの税金や公共料金など
亡くなられた方の未納の税金や公共料金、クレジットカードなどの支払い債務などは、相続人が包括的に承継するため、その支払いをしなくてはなりません。
また、年金受給者の死亡後に振り込まれた年金について、過払い分は、日本年金機構へ返納する必要があります。
送料、交通費
各行政機関や金融機関に手続きをするためにかかる郵送費や交通費なども発生します。
亡くなられた方が、本籍地を転々としていると、本籍をおいた各役所に郵送で戸籍を請求することになるため、意外と郵送費が発生します。
不動産がある場合は登記事項証明書など
亡くなられた方が不動産を所有していた場合には、登記事項証明書を最寄りの法務局で取得します。
登記事項証明書とは、登記記録に記録された事項の全部又は一部を証明した書面です。
相続登記の申請書を作成する場面では、不動産の所有者や担保の有無など不動産の現状を確認し、相続登記が完了した場面では、間違いなく申請とおりに法務局で登記が完了したかを確認するために必要となります。
また、遺産分割協議書に記載する不動産の表示については、登記事項証明書に記載されているとおりに記載することをお勧め致します。どの不動産のことを示しているのかを客観的に明らかにし、相続トラブルを防止するためです。
登記事項証明書は最寄りの法務局の窓口では、1通につき600円で発行されます。
取得する際は、登記記録に記録されている閉鎖事項を除く全部の事項が記載された全部事項証明書を取得することをお勧め致します。
相続手続きの代行依頼先と費用相場
ここでは、相続手続きの専門家である司法書士・行政書士・税理士・弁護士・信託銀行・その他代行業者による依頼できる内容と費用感について解説を致します。
司法書士
司法書士は、相続登記を含めた不動産についた古い抵当権の抹消や法務手続き、さらに裁判所に提出する法的書類を作成する業務を行っています。
そのため、相続財産に不動産が含まれている場合には、不動産の名義変更登記は、司法書士に依頼することになります。
また、多くの司法書士が、相続手続きに必要な書類の収集や遺産分割協議書・各申請書の作成、関係各所への書類の提出、銀行や証券会社の相続手続きまでサポートしてくれます。
さらに、司法書士と弁護士は、信託銀行その他金融機関や行政書士・税理士と比べ「財産管理人」として業務を行うことができるので、遺産の換価、清算、分配、遺言の執行まで行うことができます。
【費用相場】
上の図はあくまでも参考ですが、相続手続きを丸ごと依頼する場合の報酬は、遺産総額に一定の比率を乗じて算出する司法書士事務所が多くみられます。
相続人間に紛争性がない場合は、相続税の申告などは提携先の税理士に外注することになりますが、対応範囲が広いため、信託銀行その他金融機関の相続代行手続きと比べると半額以下という安価な傾向にあるといえます。
行政書士
相続登記は、専ら司法書士のみですが、戸籍取集や車の名義変更を安価に依頼したい場合は、行政書士に依頼すると良いでしょう。
また、司法書士と同じように行政書士も、金融機関の相続手続きなど対応範囲を広くサポートしている事務所が多くみられます。
【費用相場】
遺産に不動産を含まない場合で、戸籍の収集や金融機関の口座解約や名義変更のみを依頼する場合には、費用を抑えることができるため行政書士への依頼はスピーディーに相続手続きが終了するためとても有益です。
税理士
遺産を相続すると相続税の申告が必要なご家族とそうではないご家族がいます。
相続税の基礎控除額以下であると、相続税はそもそも発生しないため、税務署への申告も不要となります。
他方、基礎控除額を超える場合には、相続税の納付が不要でも申告が必要となります。
相続税の申告や納付が必要となると、申告書の作成や書類の提出のため税理士に依頼することになります。
【費用相場】
税理士の相続税申告の報酬は、遺産総額に一定の比率を乗じて計算することが多いです。
かかる報酬に、準確定申告費用を含んでいる税理士事務所もあります。
弁護士
相続人間に紛争性がある場合に、依頼できるのは弁護士だけです。
遺産分割協議ができる状態ではない、遺言書の内容に不満があり遺留分も侵害されているような場合に頼れる専門家といえます。
【費用相場】
現在は廃止されましたが、日本弁護士連合会が定めていた報酬基準を参考にご紹介します。
この基準を参考にしている弁護士事務所も多数あります。
弁護士の報酬は、他の士業と異なり、紛争を解決するための着手金と紛争を解決したことによる報酬金を合わせたものが報酬となります。
着手金・報酬金の計算は、事件の経済的利益の額に一定の比率を乗じて算出されています。
信託銀行
信託銀行やメガバンク・地銀による相続手続き代行サービスは、依頼者へ司法書士や税理士を手配し、手続きの進捗管理をすることに重きがあります。
金融機関は経済的基盤が士業を圧倒しているため、5億や10億と遺産がかなり高額な相続人に適しているといえます。
そのため、金融機関のアドバイスを受けながら資産運用をする相続人でない限り、依頼するメリットは少ないかもしれません。
【費用相場】
信託銀行やメガバンク・地銀も相続手続きの代行を取り扱っていますが、報酬が大変に高額に設定されているのが特徴です。
金融機関の人員数や立地の問題に加えて、相続した不動産の名義変更や相続税などの手続きは、別途、外注のため司法書士や税理士の報酬が必要となり、非常に高額となる傾向にあります。
代行業者
士業でもない・金融機関でもない法人が、相続手続きの代行を行っている場合があります。
このような場合は、法人から士業に外注している場合が多く、信託銀行などその他金融機関と同様に依頼人の窓口となり、司法書士や税理士を手配し進捗確認をすることにより相続手続きをサポートすることになります。
また、「○○相続サポートセンター」や「○○相続遺言手続きセンター」などの屋号の場合には、運営元が司法書士など士業であり、税理士や弁護士と提携している場合もあります。
【費用相場】
士業でない法人が運営している場合は、金融機関等同様の費用設定がされていることもあります。
また、「○○相続サポートセンター」や「○○相続遺言手続きセンター」のように士業が運営元の場合は、ご紹介した各士業の報酬設定がされています。
相続手続きの代行を依頼する際の注意点
ここまでは、相続手続きの代行業務の依頼先やその報酬の相場感についてご紹介してきました。
それでも、やはりどこに相続手続きの代行を依頼すればよいのか悩むところだと思います。
なかには、代行に依頼せずに時間的余裕があるため、ご自分で手続きをすることを考えている方もいらっしゃると思います。
相続財産に不動産が含まれない場合の相続手続きでは、亡くなられた方の相続人を特定するため、戸籍を収集し読み解くことがポイントとなります。相続人の特定さえできれば、あとは金融機関での手続きなので自身で行うことも難しくありません。
では、相続手続きの代行を依頼する場合には、どのような事に気を付ければよいのでしょうか?
この点、相続財産の内容や処分に注目して、依頼先を決めることをお勧め致します。
相続税の申告は税理士、相続人間に紛争性解決は弁護士というように各士業には、独占して行える業務があります。
司法書士の場合は、不動産の登記を独占業務としているため、遺産に不動産が含まれており、相続手続き全般を依頼したい場合には、司法書士に依頼すると、通常、提携している税理士がいるため、相続税の申告まで含めて一つの窓口で相続手続きが完了するというメリットがあります。
信託銀行その他金融機関も、窓口ひとつで司法書士・税理士を手配し、相続手続き全体の進捗管理をしてくれます。
しかし、代行報酬が士業の倍以上と、とても高額となる傾向にあります。
そのため、亡くなられた方(被相続人)や相続人が、金融機関と元々お付き合いがあり信頼関係が構築されているような場合で、遺産が高額なうえ、資産有用の相談も今後していくようなケースでない限り、依頼をすることはお勧めできません。
他方、遺産に不動産が含まれず、手許現金や銀行口座の解約手続きのみの相続手続きの場合は、行政書士がお勧めです。
行政書士は、遺産分割協議書の作成だけ、戸籍の収集だけ、自動車の名義変更だけといった単発での相続手続きの代行も依頼できるうえに、他の士業に比べて依頼の報酬が安価になる傾向があります。
まとめ
相続人の中には、相続手続きを専門家に依頼せずに、ご自身でなさる方もいらっしゃいます。
相続手続きの内容がとてもシンプルな場合は、ご自身でなされることも十分に可能です。
しかし、手続きを任された相続人に労力を費やせる十分な時間と精神的ゆとりがある場合は良いのですが、戸籍収集の途中で挫折し専門家に依頼するケースも見受けられます。
家族や親族を失った悲しみの中で、仕事や家事を両立しながら相続手続きを進めることは大変なことです。
そのため、相続手続きの代行を検討することはとても有益なことといえます。
主な依頼先としては、司法書士・行政書士・信託銀行など金融機関となります。
代行サービスの依頼を検討するうえでは、ご紹介した依頼先ごとの違いや費用相場を参考にして頂き、ご家族に合った依頼先を選別してください。
無料の相続相談の対応をしているところも多いため、相談することによりどのような手続きが必要なのかを知ることができ、気持ちが楽になることもあります。