認知症の親のマンション、家は売れない?後見制度の手続き
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2022.11.04
超高齢化社会となり、マンションを所有している親が高齢で、売れないかもしれないのが心配というご相談が増えています。
「認知症になってしまった親の代わりに家・不動産を売却して、介護費用を捻出したい」というお子さん達が、スムーズにマンションを売却するためには、どのような流れで進めるのが最適でしょうか。
目次
認知症の親のマンション売却の意思表示は有効か?
ですので、認知症などの理由から「意思能力」がない人がマンションの売買契約を結んだ場合、契約は無効となります。
しかし、所有者が重度の認知症でも、「成年後見制度」を利用すれば不動産の売却が可能となります。
では、その成年後見制度がどのようなものか確認しておきましょう。
成年後見制度とは
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方(ここでは「本人」といいます。)について、本人の権利を守る援助者(「成年後見人」等)を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。
親が既に認知症の場合は法定後見
成年後見制度には、法定後見と任意後見
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があり、法定後見には後見、保佐、補助の3つの種類があります。
法定後見の後見、保佐、補助について
※1 特定の事項とは、民法13条1項にあげられている、マンション等不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為、借金、訴訟行為、相続の承認や放棄、新築や増改築などの事項をいいます。ただし、日用品の購入など日常生活に関する行為は除かれます。
※2 本人が特定の行為を行う際に,その内容が本人に不利益でないか検討して、問題がない場合に同意(了承)する権限です。保佐人、補助人は、この同意がない本人の行為を取り消すことができます。
※3 民法13条1項にあげられている同意を要する行為に限定されません。 任意後見制度(契約による後見制度)は、本人に判断能力があるうちに、将来判断能力が不十分な状態になることに備え、公正証書を作成して任意後見契約を結び、任意後見受任者を選んでおくものです。本人の判断能力が不十分になったときに、家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。
任意後見制度とはどのようなものですか?
任意後見制度とは、本人があらかじめ公正証書で結んでおいた任意後見契約に従って、本人の判断能力が不十分になったときに、任意後見人が本人を援助する制度です。家庭裁判所が任意後見監督人を選任したときから、その契約の効力が生じます。
成年後見制度(法定後見)の手続きについて
全体の流れ
- 書類を準備する
- 後見人等申立て
- 面接
- 審査
- 審判
- 裁判所に不動産売却の許可を得る
- 不動産会社に査定を依頼し売却活動を始める
必要書類
- 後見・保佐・補助開始申立書
- 親族関係図
- 診断書(成年後見制度用)
- ご本人の主治医の方に作成していただく書類となります。
- 診断書附票
- 本人情報シートのコピー(発行から3か月以内の物)
- ご本人の福祉関係者に作成していただく書類となります。
- 本人の健康状態に関する資料
- 介護保険被保険者証,療育手帳,精神障害者保健福祉手帳,身体障害者手帳などの写しが該当書類となります。
- 愛の手帳のコピー(交付されている場合のみ)
- ご本人の戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)
- ご本人の住民票又は戸籍附票
- ご本人が登記されていないことの証明書(発行から3カ月以内のもの)
- ご本人が、成年後見人等として登記されていないことを証する書面です。東京法務局後見登録課または全国の法務局・地方法務局の本局の戸籍課で発行してもらうことが出来ます。
- 本人の財産に関する資料
- 預貯金などが分かる書類:通帳の写し等
- 不動産関係書類:不動産登記事項証明書等
- 負債が分かる書類:ローン契約書の写し等
- 後見人等候補者の住民票又は戸籍の附票
申請書の記載例
申立先
後見開始の審判を受ける方の住所地の家庭裁判所となります。
申立てに必要な費用
- 申立手数料 収入印紙800円分
- 連絡用の郵便切手(申立先の家庭裁判所に確認)
- 登記手数料 収入印紙2600円分
この他に、裁判所が後見開始の審判をするにあたり、医師の鑑定が必要と判断した場合、この鑑定の費用を申立人が負担することとなります。
後見開始について
成年後見が始まるとどうなりますか?
この制度を利用すると、家庭裁判所が選任した成年後見人が、本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人または成年後見人が、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。
ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、取消しの対象になりません。
成年後見人はどのような仕事をするのですか?
成年後見人の主な職務は本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、財産を適正に管理し、必要な代理行為を行うことです。
成年後見人は、申立てのきっかけとなったこと(保険金の受取等)だけをすればよいものではなく、後見が終了するまで、行った職務の内容(後見事務)を定期的に又は随時に家庭裁判所に報告しなければなりません。家庭裁判所に対する報告は、本人の判断能力が回復して後見が取り消されたり、本人が死亡するまで続きます。
後見人は、本人の財産は、あくまで「他人の財産」であるという意識を持って管理します。後見人に不正な行為、著しい不行跡があれば、家庭裁判所は後見人解任の審判をすることがあります。後見人が不正な行為によって本人に損害を与えた場合には、その損害を賠償しなければなりませんし、背任罪、業務上横領罪等の刑事責任を問われることもあります。
保佐開始について
保佐が始まるとどうなりますか?
この制度を利用すると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。
保佐人の同意を得ないでした行為については、本人または保佐人が後から取り消すことができます。ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。
また、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えたりすることもできます。保佐が開始されると、資格などの制限があります。
保佐人はどのような仕事をするのですか?
保佐人の主な職務は、本人の意思を尊重し、かつ、本人の心身の状態や生活状況に配慮しながら、本人が重要な財産行為を行う際に適切に同意を与えたり、本人が保佐人の同意を得ないで重要な財産行為をした場合にこれを取り消したりすることです。代理権付与の申立てが認められれば、その認められた範囲内で代理権を行使することができます。
保佐人は、申立てのきっかけとなったこと(保険金の受取等)だけをすればよいものではなく、保佐が終了するまで、行った職務の内容(保佐事務)を定期的に又は随時に家庭裁判所に報告しなければなりません。家庭裁判所に対する報告は、本人の判断能力が回復して保佐が取り消されたり、本人が死亡するまで続きます。
保佐人による本人の財産管理は、後見人の場合と同様、善良な管理がなされることとなります。
補助開始について
補助が始まるとどうなりますか?
補助開始の申立ては、その申立てと一緒に必ず同意権や代理権を補助人に与える申立てをしなければなりません。補助開始の審判をし、補助人に同意権又は代理権を与えるには、本人の同意が必要です。
補助人はどのような仕事をするのですか?
補助人は同意権付与の申立てが認められれば、その認められた範囲の行為(重要な財産行為の一部に限る)について、本人がその行為を行う際に同意を与えたり、本人が補助人の同意を得ないでその行為をした場合にこれを取り消したりすることができます。代理権付与の申立てが認められれば、その認められた範囲内で代理権を行使することができます。
補助人は、補助が終了するまで、行った職務の内容(補助事務)を定期的に家庭裁判所に報告しなければなりません。家庭裁判所に対する報告は,本人の判断能力が回復して補助が取り消されたり、本人が死亡するまで続きます。
補助人による本人の財産管理は、後見人及び保佐人の場合と同様、善良な管理がなされることとなります。
法定後見で認知症の親のマンションを売却する場合
本人の状態を見て、後見、保佐、補助のどれに該当するか明らかでない場合は?
申立ての段階では、診断書を参考にして、該当する類型の申立てをすることで差し支えありません。
鑑定において、申立ての類型と異なる結果が出た場合には、家庭裁判所から申立ての趣旨変更という手続をお願いすることになります。
成年後見人等には、必ず候補者が選任されるのですか?
家庭裁判所では、申立書に記載された成年後見人等候補者が適任であるかどうかを審理します。その結果、候補者が選任されない場合があります。
なお、成年後見人等にだれが選任されたかについて、不服の申立てはできません。また、次の人は成年後見人等になることができません。
(欠格事由)
- 未成年者
- 成年後見人等を解任された人
- 破産者で復権していない人
- 本人に対して訴訟をしたことがある人、その配偶者又は親子
- 行方不明である人
後見人が決まったら、まず何をするのでしょうか?
本人の資産、収入、負債としてどのようなものがあるかなどを調査し、1か月以内に財産目録を作成して提出するほか、本人のために、年間の支出予定を立てた上で、年間収支予定表を作成して提出していただくことになります。
後見制度(法定後見)のデメリットとは?
- 裁判所への報告義務
- 本人死亡まで続く
- 依頼者が後見人等になれない場合がある
- 親族後見人の場合、監督人がつく場合がある
- 専門職に頼むと費用がかかる
- 選挙権剥奪や印鑑登録が抹消されてしまう等、権利が制限される
このように、後見制度を利用するデメリットについても認識しておく必要があります。
では具体的にどのような場面で、成年後見制度が活用なされるのか以下の活用例でご確認下さい。
認知症の親のマンションを売却した事例
- 本人(父)の状況:アルツハイマー病
- 申立人:子
- 成年後見人:申立人
- 概要:
父である本人は5年程前から物忘れがひどくなり、勤務先の直属の部下を見ても誰かわからなくなるなど、次第に社会生活を送ることができなくなりました。母に先立たれてから、一気に気力が弱ってしまった様子で、日常生活においても、親戚などの判別がつかなくなり、その症状は重くなる一方で、認知症が進行しつつあります。
ある日、本人から子へ、介護施設に入って身の回りを誰かがしてくれるほうが楽なので、施設へ入る手続きをしてほしいと相談されましたが、本人が希望する介護施設へ入所するにあたり、まとまった金額の金銭の準備が必要となることがわかりました。そこで、本人所有のマンションに本人は住まなくなるので、売却して費用を捻出しようという話になりました。
家庭裁判所の審理を経て、本人について保佐が開始され、本人の財産管理や身上監護を事実上担ってきた子が保佐人に選任され、マンション売却のための不動産会社との媒介契約、買主との売買契約及び決済などを、保佐人である子が、本人を煩わせることなく、すべてスムーズに行うことができました。
このケースでは、本人は判断能力が少し残っており、後見ではなく保佐の制度を利用しましたが、必要なタイミングで迅速がマンション売却が実現できたため、本人も子も安心されていました。
認知症になった親のマンションの売却のまとめ
「認知症になった親のマンションの売却」についてご理解いただけたでしょうか?
記事の要点を確認してみましょう!
親が認知症、マンションなどの不動産の売却はできる?
所有者が重度の認知症でも、「成年後見制度」を利用すれば不動産の売却が可能となります。
「成年後見制度」についてはこちらをご覧ください。
成年後見制度(法定後見)の手続きや必要書類は?
全体の流れは以下通りです。
- 書類を準備する
- 後見人等申立て
- 面接
- 審査
- 審判
- 裁判所に不動産売却の許可を得る
- 不動産会社に査定を依頼し売却活動を始める
「成年後見制度」利用に必要な書類や申請書の記入例、費用などについてはこちらをご覧ください。
成年後見制度とは、どんな制度?
成年後見制度とは、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分でない方について、本人の権利を守る援助者を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度です。
成年後見制度には、法定後見制度と任意後見制度の2種類があります。法定後見制度と任意後見制度の詳細については、こちらをご覧ください。
先々売却が必要になった時の認知症リスク対策は?
認知症などの発症前であれば、「任意後見制度」があります。
「任意後見制度」と「法定後見制度」の詳細はこちらをご覧ください。
マンション売却のご相談はこちら
東京テアトル【マンション売却相談センター】
☎0120-900-881