相続登記の必要書類を一覧表にまとめて解説!
カテゴリ:マンション売却
投稿日:2022.07.27
土地や建物、マンションなど不動産を所有していた方が亡くなった場合には、亡くなられた方(被相続人)から不動産を所有することになった相続人への名義の変更手続きが必要となります。これを、相続登記といいます。
この点、相続登記は、一般の方には馴染みがないのでわからないという方も少なくないと思います。
これまでは、相続登記をすることは義務ではありませんでしたが、不動産の所有者の不明問題の解決のため令和6年4月1日より義務化されます。
相続登記の放置は、場合によっては過料が科されることもあります。
そこで、相続登記には、戸籍謄本や住民票などさまざまな必要書類を取得し提出が求められるため、遺産分割協議・遺言書・法定相続分など、相続手続きのケースごとに分けて、どのような書類が必要なのかを詳しく解説いたします。
目次
相続登記に必要な書類を一覧で解説
土地や建物、マンションなど不動産を相続した際には、不動産の登記簿上の名義人である被相続人から不動産を取得した者へ、名義変更手続きをすることになります。
これには、遺産分割協議や遺言書、又は家庭裁判所による遺産分割調停や審判による場合と、法定相続分による共有名義にする場合があります。
それぞれの相続手続きによって、名義変更の登記をする際の必要書類が異なります。
以下、遺産分割協議・遺言・法定相続による必要書類の一覧をご紹介します。
被相続人名義で必要な書類
こちらの章では、亡くなられた方(被相続人)に関連する書類をご紹介します。
戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍
相続手続きでは、被相続人が亡くなり相続が発生したこと、さらに相続人が誰であるかの証明が必要となります。
そのために必要な書類が、戸籍謄本(現在戸籍・現戸籍)、除籍謄本(除籍)、改製原戸籍(原戸籍)です。
戸籍は、出生、本籍地の移転(転籍)、法改正、婚姻・離婚などにより新たな戸籍が作られ、一生のうちに複数の戸籍が作られることになります。
そのため、被相続人の出生から死亡するまでの連続した戸籍を被相続人の本籍地のあった市区町村役場で取り寄せをして、相続人を特定することになります。
住民票の除票(または戸籍の附票)
住民票の除票や戸籍の附票(除附票)は、登記簿に記載されている所有者の氏名・住所と、亡くなった被相続人が同一人物であることを証明するための書類です。
登記簿上の住所と被相続人の最後の住所地が異なるときは、前住所地で記録されている住民票の除票や戸籍の除附票を取得して、登記簿上に記載されている住所と繋がるように住所の転遷を証明する必要があります。
住民票の除票は亡くなった人の住所地の市区町村役場にて、戸籍の附票は亡くなった人の本籍地のある市区町村役場で取得できます。
相続人名義で必要な書類
こちらの章では、相続人や不動産の名義人となる相続人に必要な書類をご紹介します。
戸籍謄本
被相続人の出生から死亡するまでの連続した戸籍により、相続人を特定すると、その相続人が相続発生時に生きていたことを証明するために、相続発生後の日付で各相続人の現在戸籍を本籍地のある市区町村役場で取得することになります。
住民票
住民票は、被相続人の不動産を相続する方の現在の住所地を証明するために必要となります。
住所登録をしている市区町村役場で、取得することになります。
取得の際は、個人番号の記載がないようにしましょう。
その他の必要書類
相続登記をする際には、被相続人と相続人に関する書類以外にも、法務局へ添付しなければならない書類があります。
固定資産評価証明書
相続登記を法務局に申請する際には、登録免許税の納付が必要となります。
固定資産評価額をもとに算出するため、法務局への添付書面として固定資産評価証明書、又は課税明細書が必要となります。
固定資産評価証明書は、不動産がある市区町村役場や都税事務所で取得することができます。
注意しなければならないのは、相続が発生した年度の評価額ではなく、実際に相続登記の申請手続きをする最新年度のものが必要となります。
例えば、2023年3月31日迄に相続登記を申請するときは、2022年度の固定資産評価証明書に基づき登録免許税を算出し、法務局へ添付します。また、2023年4月1日以降に相続登記の申請手続きをするときは、2023年度の固定資産評価証明書によることになります。
なお、課税明細書については、毎年4月以降に不動産所在地の役場から郵送されてきています。
相続を原因とする登記申請の登録免許税は、固定資産評価証明書や課税明細書に記載されている固定資産税評価額に0.4%を乗じると概算を算出できます。
相続関係説明図
相続関係説明図とは、被相続人と相続人との関係を記した図です。
この相続関係説明図を申請時に提出することにより、登記完了時に戸籍の原本を返却してもらうことができます。
戸籍をすべてコピーして原本とともに法務局へ添付することでも代用できますが、作業が大変なため、通常は相続関係説明図を作成します。これは、手書きでも問題ありません。
場合によって必要な書類
これまで紹介してきた書類に加えて相続登記の際には、相続の方法によって、さらに書類が必要となります。
法定相続分による相続登記の場合には、基本的にはご紹介した書類を申請書とともに添付し、登録免許税を納付することにより、登記は完成します。
そこで、法定相続分による相続以外の遺産分割協議による場合と遺言書による相続登記の際の書類、さらに、何らかの事由により、必要書類が集められなかった場合について見ていきましょう!
法定相続分以外で名義変更する場合
ここでは、遺産分割協議、又は遺言書による相続登記の際に、別途必要な書類を見ていきましょう。
【遺産分割協議書】
被相続人が遺言書を残していないことを相続人が確認すると、通常は誰が何をどのように相続するかを相続人全員で協議し合意することになります。
その協議内容に従い、相続登記を含め相続手続きを進めていくことになります。
遺産分割協議による相続登記の際には、これまでご紹介した書類に加えて、遺産分割協議書と相続人全員の印鑑証明書が必要となります。
【印鑑証明書】
遺産分割協議書は、協議内容に対する相続人全員の合意が必要となります。
そのため、相続放棄などにより相続権がない相続人を除いたすべての相続人が遺産分割協議書に署名・捺印をし、捺印は実印によりすることになります。
実印登録をした役所により印鑑証明書を取得し、法務局に添付することで真意に協議内容に合意した旨の意思確認となります。
なお、印鑑証明書に3か月の期間制限はありませんが、新しいものを添付することが望ましいといえます。また、印鑑証明書は、マイナンバーカードにより、最寄りのコンビニエンスストアで取得することもできます。
【遺言書】
亡くなった方が所有する不動産を特定の相続人に相続させる旨の遺言書を残している場合には、遺言作成者の死後、遺言で記載したとおりに実現する法的効果があるため、その不動産については、遺産分割協議は不要となります。
遺言作成者の死後の遺産の権利関係の手続きは、遺言書をもって行うこととなります。
そのため、相続登記の申請をする際には、遺言書の添付が必要となります。
この点、自筆証書遺言、かつ法務局への保管制度を活用していない場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要となります。また、遺言書は無効でないことが大前提です。
無効な遺言の場合は、相続人全員での遺産分割協議が必要となります。
また、遺言書の記載が相続人に「相続させる」とある場合は、法定相続分や遺産分割協議の場合と異なり、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍は不要となります。遺言者である被相続人が亡くなったことの記載のある戸籍謄本(除籍)のみで足ります。
必要書類が揃わない場合
市区町村役場での住民票の除票の保管期限は5年と決まっています。
そのため、保管期限が切れたものは、破棄され取得することができない場合があります。
そうすると、登記簿上の所有者と被相続人の同一性を住所・氏名によって証明できないことになります。相続登記の申請を受けた法務局としても同一性を証明できない以上は、登記を進めることはできません。
そこで、次のような書類によって手続きを進めることになります。
【不在籍証明書、不在住証明書】
住民票の除票や戸籍の除附票により、登記簿上に記載されている所有者と被相続人が同一であることを証明できない場合に、不在籍証明書・不在住証明書を各市区町村役場で取得することになります。
これ等の書類により、登記簿上に記載されている住所・本籍には被相続人と同一の氏名の者はいない、そうすると、登記簿上に記載されている被相続人と同一氏名の所有者と被相続人は、おそらく同一人物といえますよね!という証明です。
登記済権利証があれば、別途取得しなくてもよいという法務局もありますが、添付を求められることも少なくありません。
【登記済権利証】
相続登記の手続きでは、原則、登記済権利証を使用することはありません。
そのため、不動産の売買や贈与と異なり登記済権利証を紛失していても、登記手続きをすることはできます。
しかし、被相続人の住民票の除票や戸籍の除附票を取得できず、登記簿に記載されている所有者と被相続人の同一性を証明できない場合には、その代用する書類として、登記済権利証の提出を法務局から求められることがあります。
【上申書】
住民票の除票や戸籍の除附票により、被相続人の登記簿上に記載されている住所から最後の住所地への変遷を証明できない場合や、戸籍謄本により相続関係を証明できない場合に、申請者が作成します。
上申書には、被相続人の住所の変遷を証明できない理由や戸籍により相続人を特定できない理由と、登記簿上の名義人と亡くなった人が同一人で間違いないことや、自分たち以外に相続人はいないことを相続人全員で保証する旨を記載し、相続人全員が署名・実印による捺印をします。
相続登記を代行依頼する場合
相続手続きには、たくさんの専門家がいますが、相続登記の代行を依頼することができるのは、司法書士と弁護士のみです。
とりわけ、司法書士に依頼することをお勧めします。
なぜなら、司法書士は登記申請業務のスペシャリストとして、相続登記においても精通しており、正確かつスピーディーに手続きを進めることができます。
また、司法書士に依頼した場合には、戸籍収集・遺産分割協議書の作成・金融機関の口座解約手続きまで、相続手続きを丸ごと依頼できる司法書士事務所も多くあります。
【委任状】
司法書士に相続登記を依頼する際には、相続した不動産を遺産分割又は遺言により相続した相続人に対して、委任状への署名・捺印を求められます。
当然、不動産を所有する相続人の依頼なく相続登記の代行を行うことができないためです。
司法書士への委任事項を明確にすることでトラブルの防止にもなります。
委任状は、法務局への添付書類ともなります。
【本人確認書類】
委任状と異なり、管轄法務局への添付書類ではありませんが、相続登記をする依頼人に対して身分証の提示を司法書士により求められます。
依頼人の本人確認のためです。
運転免許証、運転経歴書、マイナンバーカード、パスポート、国民健康手帳、国民健康保険、健康保険被保険者証、後期高齢者医療被保険者証、介護保険被保険者証などの準備が1点又は2点が必要となります。
自分で相続登記をする場合
相続登記は、必ずしも司法書士や弁護士に依頼しなければならないものではありません。
もちろん、ご自分で相続登記の申請手続きをすることもできます。
法務局では、予約を取る必要はありますが、登記相談に応じて頂けます。
だだし、相続登記を自分でしようとすると時間も労力もかなり費やします。
また、法務局への申請書類や添付書類に不備がある場合には、不備があるたびに何度も申請手続きの補正をしなくてはなりません。
相続登記申請書
相続登記の申請書の書式については、決まったものはありません。
分かりやすく記載すべき事項を記載することが大切です。
A4用紙に手書きやパソコンで作成することが可能です。
申請書に合綴した用紙に登録免許税分の収入印紙を貼付して、登録免許税を納付できます。
相続登記の必要書類に関するよくある質問
相続登記の書類に関して、よくある質問を2点ほど取り上げました。
気になるところを確認してみてください。
原本は返却される?
相続登記の際に法務局に添付する書類は、原本を提出します。
もちろん、原本還付の手続きをすることによって、原本は返却してもらえます。
相続登記後に相続税の申告やその他の相続手続きがある場合には、法務局に添付した書類は相続登記終了後に書類を還付してもらうよう手続きをすることが好ましいといえます。
返却してもらいたい添付書類のコピーを取り、コピーの余白部分に「原本と相違ありません」と記載し、申請人が署名捺印します。
コピーした書類が複数枚あるときには、1枚目に上記処理を行い残りの書類のつづり目ごとに割印(契印)します。登記申請書にコピーを合綴(ホチキス留め)し、原本も併せて提出します。
なお、相続関係説明図を添付すると、戸籍謄本、除籍謄本、改正原戸籍はコピーをとらずに、原本の返却を受けられます。
さらに、法務局から発行される法定相続証明情報一覧図を提出した場合には、原本の提出自体が不要となります。
必要書類に有効期限はある?
相続登記の際に法務局に添付する書類は、3か月などの有効期限は設けられていません。
そのため、印鑑証明書も期限を気にする必要はありません。
ただし、相続人の戸籍謄本(現在戸籍)に関しては、相続発生時に被相続人の相続人であることを証明するため、被相続人が死亡した後に取得した戸籍を添付します。
まとめ
相続登記の必要書類について、一覧表にまとめて解説してまいりました。
相続登記の必要書類について、ご理解いただけましたでしょうか?
法定相続分による相続・遺産分割協議による相続・遺言による相続のパターンごとに法務局へ添付する書類は異なります。
市区町村で取得する書類も様々であり、自分で作成しなければならない書類もあります。
自分で書類を収集・作成し、法務局へ申請をする過程にはいくつものハードルがあることがお分かりいただけたのではないでしょうか!
相続登記は難しいな!と感じた方は、司法書士に依頼することも検討しましょう。
マンションなどの相続した不動産の売却を検討している方は、相続に強い不動産会社に相談してみるのもよいかもしれません。