マンション売却時の税金 -取得費とは-

カテゴリ:マンション売却の税金
投稿日:2020.06.02

譲渡所得=収入金額(取得費+譲渡費用)の取得費についてみていきます。

取得費とは?

売却したマンションの取得(購入)時にかかった以下のような費用です。

土地・建物の取得費

土地の取得費=土地の購入代金

建物の取得費=建物の購入代金(または建築代金)-減価償却費相当額

その他の取得費

・マンション購入時の不動産会社等への仲介手数料

・マンション購入時に作成した売買契約書に貼付した収入印紙代

・マンション購入時(贈与・相続・遺贈による取得を含む)に納めた登録免許税、登記費用

不動産取得税

・借主がいるマンションを購入した際に、借主へ支払った立退き料

所有権などを確保するために要した訴訟費用(相続財産であるマンションを遺産分割するためにかかった訴訟費用は除きます)

設備費・改良費・増改築の費用

・マンションを購入するために借り入れた資金の利子のうち、そのマンションを実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子

・既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金

※事業所得等の必要経費に算入されたものは含まれません

取得費に含まれないもの

火災保険料等

管理費・修繕積立金

引越費用など

建物は減価償却・土地は不要

土地と建物の取得費の計算方法の違いは、減価償却費相当額を購入代金から差し引くかどうかです。

建物は利用や時の経過により老朽化し保有期間が長くなるほど価値が減ってきます。その価値の減少分を減価償却費相当額といい、建物の購入代金から差し引きます。

土地は利用により価値が減るわけではないので、減価償却する必要はありません。

建物の減価償却費相当額の計算方法

非事業用と事業用のマンションで減価償却費の計算方法が異なります。

①非事業用(自宅マンション等)の場合

建物購入代金×0.9×非業務用建物の償却率(※1)× 経過年数(※2)= 減価償却費相当額(※3)

※1 非業務用建物の償却率 →(鉄骨)鉄筋コンクリートの場合は0.015

※2 取得してから売却日までの年数→経過年数の6か月以上の端数は1年とし、6か月未満の端数は切捨て

※3 建物の取得価額の95%を限度とする

【自宅マンションの減価償却費相当額と建物の取得費の計算例】

 

建物の購入代金:2,000万円

償却率:0.015

経過年数:20年

減価償却相当額:2,000万円×0.9×0.015×20年=540万円

建物の取得費:2,000万円-540万円=1,460万円

②事業用のマンションの場合

事業用の場合、減価償却費は必要経費になりますので、適正に計算していることを前提に、取得から売却年までの毎年の減価償却費を合計した額が、減価償却相当額となります(収支内訳書・青色申告決算書の未償却残高を確認しましょう)。

土地と建物の購入代金の分け方

土地と建物を一括して購入した場合であっても建物の購入代金がいくらだったのか、わからなければ、 建物の償却費相当額の計算ができません。まず土地と建物の購入代金を分ける必要があります。以下の3パターンで分け方を確認してみましょう。

①売買契約書に建物と土地の購入代金が記載されている場合

②売買契約書に土地と建物の購入代金の区別がないが、消費税額がわかる場合→ 消費税額から建物の本体の価格を計算する

③売買契約書に土地と建物の購入代金の区別がなく、消費税額も不明の場合→「建物の標準的な建築価額表」から建物の取得価格を計算する

売買契約書に建物と土地の購入代金が記載されている場合

購入時の売買契約書があり、建物と土地の購入代金を区別している場合はその実際の購入代金になります。

売買契約書に土地と建物の購入代金の区別がないが、消費税額がわかる場合

消費税額がわかれば以下の計算式で建物本体価格が逆算できます。

(※土地には消費税は課税されていません)

建物の購入代金=(消費税÷購入時の消費税率)+消費税

 

1989

(H1).4.1

〜1997

(H9).3.31

1997

(H9).4.1

~2014

(H26).3.31

2014

(H26).4.1

~2019

(R1).9.30

2019

(R1).10.1

 

消費税率 0.03 0.05 0.08 0.1

※経過措置が適用されている場合がありますのでご注意下さい。

建物の購入代金が出たら購入代金総額から差し引き土地の購入代金を求めます。 

 →土地の購入代金=購入代金-建物の購入代金

③売買契約書に土地と建物の購入代金の区別がなく、消費税額も不明の場合

「建物の標準的な建築価額表」(クリックでPDFファイルダウンロード)を使用します。

建築年と構造から1㎡あたり建築単価を調べて、マンションの専有面積に乗じて建物のおおよその購入代金を計算します。

計算のために必要な資料

 

「建物の標準的な建築価額表」

 →税務署あるいは国税庁ホームページ(クリックでPDFファイルダウンロードに準備されています

 

・建物の構造・建築年・床面積・購入日

 →登記事項証明書・売買契約書等で確認します。

「建物の標準的な建築価額表」を使用した建物の購入代金の出し方】

 

・売却したマンションは平成元年に建築された鉄筋コンクリート造りのもので同年購入

・土地と建物の合計の購入代金:3,000万円 (消費税は不明)

・マンション専有部分の床面積:50㎡ 

・1㎡あたり建築単価:193.3千円→「建物の標準的な建築価格表」により

 

①建物の購入代金:193.3千円/㎡×50㎡=9,665,000円 

②土地の購入代金:3,000万円-9,665,000=20,335,000円

購入代金が不明な場合は?

収入金額の5%を取得費とします

売ったマンションの購入時の売買契約書がなくて実際の購入代金がわからない場合には、収入金額の5%を取得費とすることができます(「概算取得費」といいます)。また、実際の取得費がわかっている場合でも、その金額が5%相当額を下回る場合には、5%相当額の方を選択できます。

【5%概算取得費の例】

 

マンションの売却による収入金額:3,000万円 (購入代金は不明)

5%相当額:3,000万円×5%=150万円⇒取得費とすることができる

ただし実際の取得費が120万円とわかっている場合でも150万円を選択できる

概算取得費で譲渡所得を計算すると損してしまう場合

収入金額の5%でマンションの取得費を計算するということは、収入金額の95%は譲渡所得に組み込まれるということです。

そのため実際は売却損が出ているにも関わらず課税されてしまう場合も生じます。

このような場合には、売買契約書がなくても実際の購入代金を裏付けるような証拠を集める努力をしてみることも大切でしょう。例えば次のような方法があります。

・購入先や購入時の仲介事業者に購入代金の確認をする

・不動産会社に過去の成約情報から当該マンションの購入代金を調べてもらう

・借入により購入した場合は借入先の金融機関等に売買契約書等が保存されていないか聞く

・初年度、住宅ローン控除を受けた確定申告書に記載されたマンションの取得価額を確認する

・登記事項証明書の抵当権設定の内容の確認する

・過去に自宅の買換の特例等を申告した場合は、税務署へ内容の開示請求をする

・状況を知る身内等に購入当時の状況を聞く

・販売用のパンフレットや分譲価格のわかる資料を探す

・手帳やメモへの覚書はないか探す

・購入代金支払いのための預金通帳の振込金額の記載あるいは振込依頼書等がないか探す

これらの資料を準備し、実際の購入代金についての証拠書類になるか検討してみましょう。

(執筆)税理士 永竿 敬子
税理士 永竿 敬子
【東京税理士会麻布支部 会員番号106656】

地方公務員→公認会計士事務所を経て2006年税理士登録、2011年税理士事務所を神田錦町にて開業。南青山に移転し現在に至る。
税務署での法人決算説明会講師、区役所・東京商工会議所・東京税理士会納税者支援センター、JETRO等で税務相談員、租税教室などを担当。
東京簡易裁判所所属・民事調停委員。筑波大学大学院ビジネス科学研究科企業法学専攻修了

 税制は毎年改正されますので、納税者にとって有利な特例等を適用するための要件も毎年変わることが多々あります。
 マンションの売買は人生の中でも大きなご決断になる場合も多いかと存じます。
 お早目の査定と共にその年の税制の取扱いをチェックしていただき、資金計画等に役立てていただければと思います。